プロ2年目・高野愛姫が逆転初V 90分の“夕練”でつかんだ自信と9バーディ
<ヨネックスレディス 最終日◇8日◇ヨネックスカントリークラブ(新潟県)◇6339ヤード・パー72>
4打差の6位から出たプロ2年目、20歳の高野愛姫(たかの・あいひ)が9バーディ・1ボギーの「64」をマーク。トータル15アンダーまで伸ばし、2位に4打差をつけて初優勝を遂げた。
これまで自己ベスト11位の高野は、「トップ10入り」を目標に最終日をスタート。3番で1.5メートルを決めると、4番で3メートル、5番では2メートルを沈めて首位に肉薄する。8番で6~7メートルのバーディパットを流し込むと、11番まで4連続バーディを奪うなど一気に首位に立ち、後続との差を突き放した。
「今までで一番パットが入りました」。長短9個のバーディパットが決まり、自身でも驚くほどの内容だった。しかし、これは偶然ではない。圧巻のバーディラッシュは、地道な練習に裏付けされていた。
今季はQTランキング23位でレギュラーツアーに参戦。初戦の「ダイキンオーキッドレディス」は首位タイで予選を突破したが、自身初めて最終組で回った3日目に「78」とスコアを崩した。「(当時は)自信が持てず、最終組にいるべき人間ではないと思いながらプレーをしていました」と“プロの壁”にぶち当たった。
「プロになっていつかは自信がつくかなと思っていましたが、なかなか持てなくて…」。高野が求めたのは、根拠のある自信だった。「コースでは朝から夕方までちゃんと練習して、トレーニングは苦手だけど頑張った。少しでも『これをやってきたから』と思えるものを作らないといけなかった」。トレーニングはまだ少ないと苦笑するが、ボールを打つ練習は真剣に、長時間かけて取り組むようになった。
1カ月半前からパッティングの練習量を増やし、ラウンド後は短くても60分、長いときは90分もの時間を費やした。練習日だけでなく、本戦のラウンド後もこのルーティンは変わらない。以前は練習器具を使って真っすぐ打ち出すことを意識していたが、今週のテーマは“実戦”だった。
「今週は狙ったところにちゃんと打ち出す練習をしました」。まずは3メートルほどの曲がるラインで、カップ横にティペグを立ててそこを狙う。フック、スライスのラインに対し、ひたすら転がす。30分ほどかけて感覚を養った後は、あらゆる傾斜を利用し、1球ごとにラインを読んで打ち出しの練習を続けた。
練習は嘘をつかなかった。「長時間、いろんなラインを見ていると記憶に残ります。翌日のラウンドでは、練習と似たようなラインがあったりするので、『あんな感じだったな』とイメージが出やすくなります」。今週はライン読みがうまくハマり、最終日は「全部入った」と面白いように決まった。
やると決めたことを続ける力は、学生時代に培われた。強豪・埼玉栄高校のゴルフ部で腕を磨き、全国大会で個人戦3位、団体戦優勝に貢献した。しかし、3年時に受けたプロテストは不合格。「大学の試合で結果を出したら、プロテストを受けていい」という条件で日本大学に進学した。1年時に「関東女子学生」で優勝すると、同年のプロテストを受験して見事に合格した。
昨年の夏に日大は中退したが、「日大に行っていなかったら、プロテストに受かっていなかった」と自身を成長させてくれたという。「毎日、1時間20分ほど朝練をやるのですが、走るメニューが多かった」。走るのが苦手な高野にとって苦痛だったが、この経験が今につながった。
下半身強化による飛距離アップやスイングの安定感はもちろんだが、最大の収穫は「完全にメンタル」と言い切る。「あのきついトレーニングをやったから大丈夫、と思えるようになりました」。プロテストは合格率約3%の狭き門を、“大丈夫”というメンタルで乗り越えた。
次の目標は「毎週トップ10に入れるような選手になって、国内メジャーで勝ちたい。究極の目標は、1シーズンで常に3、4勝できる選手」と夢は膨らむ。大学時代は“朝練”でメンタルを鍛え、最近は“夕練”で自信を深めた。根拠のある自信でつかんだ初優勝は、20歳をひと回りもふた回りも成長させてくれるはずだ。(文・小高拓)
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