プロ野球「MLB挑戦組&国内FA組」実力ガチ査定!! "セの主砲コンビ""西武の右腕コンビ""打てる二塁手""三拍子そろった外野手"はどこまで活躍できる!?
イチオシスト

村上宗隆(25歳)内野手《ヤクルト》
このオフに新天地を求める有力選手たちの現時点での実力、今後の活躍期待度などを全力診断!
※選手の所属先は2025年シーズン終了時のものです。
* * *
【MLB適性は村上と岡本、どちらが上なのか?】今年も活況のプロ野球移籍市場。注目選手たちの「リアル評価」と「適切な進路」について、現役投手を指導するピッチングデザイナーで、『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏に解説いただこう。
まずはポスティングでの海外挑戦組。MLB公式サイトが掲載した「今オフの移籍市場ランク上位30人」で日本人トップの8位に入ったのが村上宗隆(ヤクルト)だ。
「今季はコンディション不良で56試合出場でしたが、22本塁打を記録。ミートポイントをやや体に近づけて打つ、三冠王を獲得した3年前のような打ち方を取り戻し、2試合に1本近いペースで本塁打を量産するなど爆発力を見せました。来年26歳と若いことも市場価値を高めています」
ただ、懸念点もあるという。
「ひとつは守備力。MLBでサードを任せるには不安があり、打撃結果が求められる外野やファーストでポジション争いをする可能性が高いのは心配です。
そして、もうひとつは変化球の空振り率の高さと速球への弱さ。日本以上に強度のあるMLBの投手たちの速球や変化球に対応できるか。課題は多いけど、伸びしろもある、と言えます」

岡本和真(29歳)内野手《巨人》
その村上よりも「MLBに対応できそう」と評価するのは岡本和真(巨人)だ。
「前回WBC決勝のアメリカ戦で特大アーチを放つなど、すでにパワーで通用することは証明済みです。一部では、『打球速度がMLBで戦うには遅い』と指摘する声もあるようですが、今季は肘の故障で『あえてフルスイングしすぎない』打撃スタイルだったからです。
むしろ、ケガから復帰した後はその打撃スタイルで打率.327の数字を残すなど『打撃の幅』をアピールできたと言えます」
岡本の評価を高めるのは打撃だけではない。
「サードの守備も柔らかく、ファーストでも外野でもしっかり守れる。複数ポジションをこなせるポリバレント性は大きな利点で、特に大谷翔平がDHを占有しているためほかの野手の守備負担が大きいドジャース向きです。
来年30歳という年齢から村上よりも小規模な契約になるかもしれませんが、むしろ、その点もチームにとっては『使いやすさ』につながります」

今井達也(27歳)投手《西武》
投手では今井達也(西武)に対して現地での評判が高い。
「低めのアングルから投げるライジングシュートと必殺のスラッター、今季から導入したチェンジアップが武器。3年連続2桁勝利のルイス・カスティーヨ(マリナーズ)や、通算250セーブ超のエドウィン・ディアス(メッツ)と似た投球スタイルの投手として評価されそうです。千賀滉大(メッツ)の5年100億円を超える『6年250億円』規模の大型契約の可能性もありそうです。
ドジャースやカブスのほか、好不調の波が激しい千賀に代わる存在としてメッツが興味を示すかもしれません」
同学年の山本由伸(ドジャース)の活躍に刺激を受けたと公言する今井が、山本同様に結果を出すためにはどうすればいいのか?
「今季はファウル攻めをする相手にいら立ちを見せましたが、そのような相手をいなす投球術も必要です。ただ、力感の調整が自在で、ピンチでのギアチェンジができるのは昔からの大きな特徴です」

髙橋光成(28歳)投手《西武》
今井と同じ西武の髙橋光成もポスティングでのMLB挑戦を目指している。昨季の0勝11敗から今季は8勝9敗と盛り返したと言えるが、防御率3.04は規定投球回到達者でワースト2位だった。
「過去にMLBで結果を残せなかった上沢直之(ソフトバンク)と比べても、移籍直前シーズンの数字は厳しいものがあります。その要因のひとつはストレートの質が悪く、三振が奪えないこと。
フォークの質は高いものの、力勝負だけではダメだと理解しなければいけない。マイナー契約からのメジャー昇格は非常にハードルが高いので、小笠原慎之介(ナショナルズ)のようにメジャー契約を勝ち取ってほしいです」
ポスティング移籍以外でも、2年連続パ・リーグ最多勝の有原航平(ソフトバンク)がメジャー再挑戦の意向、と報じられている。2020年オフにポスティングでレンジャーズに移籍したが、2年間でわずか3勝と苦戦した。
「当時はコロナ禍で、チームやメジャーに順応する上で不確定要素も多く、本人としてもやり直したい気持ちが強いのでしょう。フォークに関してはソフトバンク移籍後、劇的に改善しているので、その新たな武器がどれだけ通じるか。誰よりも有原本人がその難しさと可能性を噛み締めているのだと思います」
ただ、有原は海外FA権を持たず、ソフトバンクもポスティング移籍は認めない意向。選択肢はポスティング移籍を容認する球団へのトレードか、自由契約しかない。
「MLBでは1年限定でのトレード移籍も珍しくありません。日本でも今後はそういったケースがあってもいい。先発の枚数が足りていない巨人などは、1年限定での在籍を認める可能性もあります」

則本昂大(34歳)投手《楽天》
そして、海外FA権を行使してメジャー移籍を目指すのが来月35歳を迎える則本昂大(楽天)だ。抑え2年目の今季は3勝4敗16セーブを記録。昨オフに足首の手術を受けた影響か、32セーブで最多セーブとなった昨季から大きく数字を落としてしまった。
「17年に8試合連続2桁奪三振の日本記録を樹立しましたが、当時と比べて球のキレは落ちています。ただ、『メジャーに憧れはない』と明言していた選手がこうやって海外FAを宣言したのは、現役生活も終盤に差しかかってやり残したことがある、という思いが芽生えたからでは。
昨年、MLB移籍を目指して広島から海外FA権を行使し、最終的にオリックス入りした九里亜蓮と同様に、国内移籍もにらんだオフになるでしょう」
【国内FAの目玉は"打てる二塁手"】このオフ、「国内FA組」の目玉になるはずだった近本光司(阪神)は熟考の末、FA権を行使せず残留を表明した。
「もはやFAでの巨人移籍がステータスの時代ではありません。黄金期を迎えつつある阪神という球団、にぎわいを見せる関西という土地柄的にも、今の環境が最適解のはず。昨年の大山悠輔と同じく残留を決断するのももっともです」
ただ、近本もすでに31歳。外野手にとっては正念場であり、真価の問われる年齢でもあるという。
「4年10億円の大型契約で日本ハムから巨人にFA移籍した陽 岱鋼も目立った成績を残せなかったですが、走力を売りにしていた外野手が30代になって足腰が弱くなり、活躍できなくなった事例は多いです。
ただ、近本の場合は天然芝の甲子園でプレーしており、自己研鑽も惜しまないため、ダメージの蓄積が少ない可能性もあります」

辰己涼介(28歳)外野手《楽天》
同じ外野手では、辰己涼介(楽天)が国内FA権を行使した。ポスティングでのメジャー移籍を希望したものの楽天球団が認めず、新たな道を模索したと言えそうだ。
ただ、成績面を見ると、最多安打のタイトルを獲得した昨季から一転、今季は月間打率1割台を2度も記録するなど低迷。来季は29歳、「外野手30歳の壁」が早くも訪れたのか!?
「試合中に目をこするしぐさを何度か見ました。足腰よりも前に目の衰えが来ていないかが気がかりです。守備力も高く、いい選手であるのは間違いないですが、将来的にメジャーを目指すのであれば、打球速度がもう一段階上がらないと厳しいかもしれません」
そして、昨年の日本シリーズMVP、〝ハマのガッツマン〟ことDeNAの桑原将志が海外FA権を行使した。
「若い頃は課題の多い選手でしたが、30代で成熟。足が速いわけではないものの外野守備はうまく打撃もいい。年齢を感じさせない気合いと根性とクールな頭脳を併せ持っています。ただ、来季は33歳という年齢がネックになるかも」

松本 剛(32歳)外野手《日本ハム》
さらに、3年前の首位打者、日本ハムの松本 剛も国内FA権を行使。8月に32歳になった今季は打率1割台に苦しみ、66試合の出場に終わった。
「就任1年目に首位打者に輝き、低迷期にチームを支えた功労者なだけに、新庄剛志監督も目をかけていた印象です。ただ、足の故障も多く、力が衰えてきているのは明らか。全盛期なら巨人にフィットしたと思いますが......」

石井一成(31歳)内野手《日本ハム》
同じく日本ハムの内野手、石井一成も国内FA権を行使。今季は1~9番の全打順を経験した〝強打の二塁手〟だ。
「FA選手は『名前や過去の実績』よりも、『今の実力』で評価すべき。その点で、今年のFAで最も注目すべき野手です。内野のどこにでもハマる守備はもちろん、打撃も評価すべき選手で、今の飛ばないボールでも飛ばす力がある。しかも、今季推定年俸4000万円で補償のいらないCランクである点も魅力です」
いち早く西武が獲得の意思を示したが、ほかにも移籍先候補はあるのか?
「野手の手薄な西武は当然欲しいでしょうし、岡本の抜ける巨人も狙っていい。吉川尚輝や泉口友汰らにも刺激を与える存在になれます。また、今年のドラフトで弟の石井 巧が指名されたヤクルトに入るのも面白いですね。早稲田大学出身なので神宮球場とも縁があります」
捕手ではDeNAの伊藤 光が海外FA権を行使。石井と同じく補償のいらないCランク選手だ。
「DeNAは山本祐大、松尾汐恩、戸柱恭孝と1軍で起用可能な捕手がそろっており、伊藤の豊富な経験やリード面の知見を生かす場が限られてきたことが決断の背景にあるでしょう。特に捕手層が薄い楽天や、ベテラン捕手が多い阪神などは有力な移籍候補と言えるかもしれません」
投手では、35歳の松葉貴大(中日)が「宣言残留」もにらみつつ、海外FA権を行使した。推定年俸は5000万円で補償の必要がないCランク。今季は7勝11敗と負け越したものの、防御率2.72はキャリアハイの成績だ。
「35歳にして全盛期とも言えるだけに、他球団の評価を知りたいという希望もあるのでしょう。変化球をひと通り投げることができ、飛ばないボールとセ・リーグ野球に適した大竹耕太郎(阪神)と同じタイプ。
ただ、広いバンテリンドームを生かしていたのも確か。来季はラッキーゾーンができて狭くなるとはいえ、阪神への移籍以外では残留が一番いい選択のように思えます」

東浜 巨(35歳)投手《ソフトバンク》
パ・リーグでは、来年36歳の東浜 巨(ソフトバンク)が国内FA権を行使した。
「今季は中継ぎも経験。再び先発を目指したいとなれば、ソフトバンクにいても登板機会が限られるため、FAを決断したのでしょう。先発が足りない巨人やヤクルト、西武が興味を示しそうです」
NPBの選手ではないが、今オフ新天地を求める目玉の選手といえば、10年ぶりの日本球界復帰を表明した前田健太(ヤンキース傘下3A)。今季はタイガースでスタートしたものの7試合で0勝、防御率7点台で戦力外に。その後もメジャー復帰はならなかった。
「全盛期よりも球速は3キロほど低下。今季は少し球速を戻したものの、キレや強度は戻らず。『スイーパー成分のあるスライダー』が武器でしたが、MLBのスイーパーブームに対応しようとしすぎた結果、フォームに狂いが生じてしまった。ひと通りの球種は持っているし、経験もあるので、球速を取り戻せるか。
黒田博樹が日本復帰後も2桁勝利できたのは強度のある球を投げられたから。年齢を重ねても勝てる投手の条件です」
人生の岐路に立つ男たちのさまざまな選択――。オフの動向を静かに見守りたい。
文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
