近い未来に株式分割で高騰しそうな「オーバー10万円銘柄」を探せ!
東証は上場企業に対して2022年から、最低投資額を50万円未満に抑えることを努力義務として求めていた
上場企業の中には、株式購入のために最低50万円以上必要な企業も多々あり、個人投資家にとってはハードルが高い。そんな企業に対し、東証が「最低投資額を引き下げろ!」と要請。これをきっかけに高騰しそうな企業を探してみました!
■銘柄選びのポイントは4つ去る4月24日、東京証券取引所は上場企業に対し、最低投資額を10万円程度に引き下げるよう要請すると発表した。具体的には、上場企業に対して1株を分割し、発行済みの株式を増やす「株式分割」を求め、1株当たりの価格を引き下げていく形。経済ジャーナリストの和島英樹氏に、その背景を解説してもらった。
「現在、日本の上場企業約4000社のうち、10万円未満で投資できない銘柄が2500社ほどあります。例えば、ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングの株価はおよそ4万9000円。つまり、最小単位である100株の購入には500万円弱の資金が必要です」
ところが、2024年に始まった新NISAは上場企業の意識を大きく変えたという。
「かつては大口の機関投資家だけが株を持ってくれればよいと考える上場企業は少なくありませんでした。小口の個人投資家のために、株主総会の場所取りや資料配布をするのはムダだという考え方ですね。
それが新NISAをきっかけに個人の存在感が著しく増した結果、株主になってもらってファンを増やす契機にしたいと考える企業が激増しているんです」
一般に、株式分割が行なわれると株価は上昇する傾向にある。例えば2分割すれば最低投資額は半分になるわけで、投資家が買いやすくなるからだ。であれば、近い将来株式分割をしそうな10万円以上の株を先回りして買うのはどうか? 証券アナリストの宇野沢茂樹氏に聞いた。
「いいと思いますが、クリアすべき関門がふたつあります。ひとつは、株式分割を行なう可能性が高い銘柄を見抜くこと。もうひとつが、分割をきっかけに株価上昇が見込める優良銘柄を見抜くことです」
要は、株式分割の話題性にすがるイマイチな銘柄を買ってはダメということ。あくまでも大事なのは中身だと宇野沢氏は強調する。
「私が考えるポイントは4つです。まず、現在の最低投資額が50万円以上であること。分割した際のインパクトが大きくなります。次に、直近2年間で株式分割をしていないこと。満を持しての分割を投資家は歓迎します。
そして、個人向けビジネスであること。ファンを増やすメリットがある企業こそ、株式分割のモチベーションが大きいからです。最後に、配当や自社株買いなどの株主還元に積極的であること。これらは長期投資を促す施策なので、個人投資家を呼び込む意欲が強い企業だと考えられるからです」
■35年連続増配の60万円超銘柄4ポイントをクリアした、ピカピカの分割期待銘柄を宇野沢氏に聞いていこう。
「まずは王道中の王道、任天堂です。Nintendo Switch 2の予約が絶好調なのに加えて、『マリオ』『ポケモン』といった世界的に著名なキャラクター群が長期安定収益を生み出します。映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の大ヒットで、ゲーム以外の領域に新たな収益源をつくり出せることを証明したのも大きいですね」
同社は22年10月を最後に、株式分割を行なっていない。そろそろ機は熟したと宇野沢氏はみている。
「もうひとつ、個人投資家にうってつけの銘柄が花王です。シャンプーの『メリット』、洗濯洗剤の『アタック』、洗顔料の『ビオレ』など、売上高100億円超のブランドを多数保有しており、その商品力と信頼性はバツグンです」
そして何より、同社は35年連続の歴史を誇る、国内ナンバーワンの増配銘柄。仮に分割期待が外れたとしても、持ち続けて損はないだろう。
和島氏も宇野沢氏と同じく、株式分割実績と個人投資家獲得という観点から、分割期待銘柄を挙げてくれた。
「今まで機関投資家が大株主だったが、個人投資家に安定株主になってもらいたいと考えている企業があると思います。その代表格が信越化学工業。半導体の基板に用いられるシリコーンウエハー製造のトップ企業で、世界的な存在です。
そのため海外投資家の保有比率が半分に迫っており、彼らの動向によって株価が振り回されることに。そこで同社は23年に株式分割を行ない、今後は個人投資家に株主になってもらいたいと公式に発表したのです」
一昨年の分割を経ても、株価はいまだ4500円前後で推移。再分割の余地があり、業績・財務体質も極めて堅実だ。
「半導体関連だと、洗浄装置で世界断トツのSCREEN HD(スクリーン・ホールディングス)も良いでしょう。株価は高値の2万円をつけてから、今では半分に暴落。ただ業績は増収増益続きで、複数のアナリストがこの先は厳しいという予想を何度出しても、結局は会社予想どおりの高収益を上げ続けています」
株価の割安さを判定できるPER(株価を1株当たり利益で割った指標で、低いほど割安)は約11倍で、過去10年でも低い水準。一昨年の分割から2年がたち、いつ再分割による巻き返しがあっても不思議ではない。
これまで分割期待銘柄を紹介してきたが、100株買おうと思うとそのほとんどが50万円以上必要で、気軽に購入できるとは言えない。ただ、証券会社によっては1株単位で購入できるところもあるので、数株から取引をスタートしてもいいだろう。
また、おまけとして、すでに10万円以下になっているお買い得な銘柄も併せて両氏に聞いた。宇野沢氏は、以前から高配当で注目されているNTTに注目。傘下のNTTデータの完全子会社化、今夏NTTへの社名変更と話題豊富で、勢いに乗っている。
和島氏は、高機能繊維が航空機の機体から下着まで幅広い需要のある東レを推薦してくれた。PBR(株価を1株当たり純資産で割った指標)が0・85倍と低いので、株価上昇を狙った株主還元の強化にも期待できそうだ。
両氏のオススメ銘柄を表にまとめたので参照してほしい。優良企業ぞろいなので、仕込んだ後はどっしり構えて、分割を気長に待とう。
取材・文/日野秀規
記事提供元:週プレNEWS
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