「魚の生臭さ」の基準は国によって様々 原因となる物質自体が異なる?

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海水魚の魚臭さの原因は? 魚はとても美味しい食材ですが、魚がどうしても苦手という人は少なくありません。そしてその原因は得てして「魚臭さ」にあるようです。 我々が嫌う「魚臭さ」にはいくつか要因があります …
イチオシスト
魚といえば「生臭い」というイメージがありますが、その中身には国ごとの違いがあるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)


海水魚の魚臭さの原因は?
魚はとても美味しい食材ですが、魚がどうしても苦手という人は少なくありません。そしてその原因は得てして「魚臭さ」にあるようです。
我々が嫌う「魚臭さ」にはいくつか要因がありますが、代表的なものは「トリメチルアミン」と「ジメチルスルフィド」ではないかと思います。
海水魚たち(提供:PhotoAC)
前者はいわゆる「生臭さ」や「魚が腐ったような匂い」と表現されるもので、後者は「磯臭さ」と表現されるものです。これらの香りが混ざりあった結果、海水魚の不快な匂いが完成します。
前者はアルカリ性の物質なので酢や柑橘などで消すことができ、後者はニンニクや玉ねぎといった同系統のより強い香りでカバーすることである程度気にならなくできます。そのため海水魚の調理にはこれらがよく使われます。
淡水魚の魚臭さの原因は?
さて、上記の「魚臭さ」の成分は、実は海水魚に限定したものとなっています。淡水魚と海水魚は体の作りが全く異なっており、淡水魚はトリメチルアミンの前駆物質であるトリメチルアミンオキサイドを排出することはないので、海水魚らしい生臭みを持つことはありません。またジメチルスルフィドも海藻や海洋プランクトンが生み出す物質であり、淡水魚に保有されることはありません。
フナの佃煮(提供:PhotoAC)
しかし、淡水魚もまた独特の臭みを持っています。この最大の要因は「ゲオスミン(ジオスミン)」という物質です。
ゲオスミンは淡水・汽水中に生息する藍藻類という植物プランクトンが生成する物質で、植物連鎖の過程で淡水魚の体内に取り込まれます。これが淡水魚独特の「泥臭さ」と呼ばれる匂いをもたらしており、魚臭さとして認識されているのです。
「臭い魚」の定義は様々
このように、魚臭さは「海水魚」と「淡水魚」で全く違う物質を原因として発生しています。そのため一口に「魚臭い」と表現していても、その内実は全く違う可能性もあります。
臭い?それともいい香り?(提供:PhotoAC)
例えば我が国では現在は海水魚が主に消費されており、トリメチルアミン臭が強い熟成魚や、ジメチルスルフィド臭が強いイシダイのような磯魚も高級魚として食べられています。一方でラオスやカンボジアのような東南アジアの国では、国土を流れる大河で採れる淡水魚が主に消費されており、ゲオスミンを多く含む魚も好んで食べられています。
日本人がラオスに行ったり、ラオス人が日本に来たりしてそれぞれの魚料理を食べたら両者とも「臭い」とショックを覚えてしまう可能性はあるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
記事提供元:TSURINEWS
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