“伝説の『59』”からは「目標は高く」 A・ソレンスタムがジュニア選手に伝えた“成功哲学”
米女子ツアー通算72勝を誇るアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)が設立したANNIKA Foundation主催の女子ジュニアゴルフトーナメント「アニカ・インビテーショナル・アジア PRESENTED BY サーティワン アイスクリーム」が、15日から17日までの3日間にわたり、静岡県裾野市のファイブハンドレッドクラブで開催される。2009年から世界大会が、また11年からアジアでも行われている同大会の舞台が日本になるのは、今年が初めてとなる。
今大会には、20人の海外選手のほか、日本ゴルフ協会(JGA)ナショナルチームメンバーの長澤愛羅(ルネサンス高3年)や新地真美夏(共立女子第二高3年)ら日本勢も50人以上が出場。注目選手は「全員よ」とソレンスタムはほほ笑む。
「現役時代は年に1回、日本を訪れていた」という“女帝”は、日本のゴルフ熱を、直接、肌で感じてきた海外選手でもある。「日本のゴルフに対する情熱や女子ゴルフへの応援姿勢は、私たちの取り組みに一致する。次世代の若い女性を応援したい」。その国での大会開催は、ソレンスタムにとっては悲願のひとつだった。
今季は、自身も長年主戦場にしてきた米ツアーで、日本勢が活躍を続けている。4月の「シェブロン選手権」を制した西郷真央、8月の「AIG女子オープン」(全英)で勝った山下美夢有のメジャー2勝をはじめ、竹田麗央、明愛&千怜の岩井姉妹と、日本選手だけで5勝を挙げている。最後は惜敗したものの、勝みなみが初優勝をかけ5ホールのプレーオフを行った、先週の「ビュイックLPGA上海」も記憶に新しい。
この結果にはソレンスタムも感心。「日本選手が米国で活躍するのは素晴らしいできごと。現役のときはコバヤシ(小林浩美、現日本女子プロゴルフ協会会長)やアイ(宮里藍)らと戦っていたし、日本選手を尊敬している。(ツアー)ランクトップ10のなかに日本選手が4人入っている現状は、日本にとってよろこばしいことだと思う」。さらに同じフロリダ州に住む畑岡奈紗とは、“ご近所”ということもあり、練習などもともにする関係。自然と親近感も湧いてくる。
そして大会開幕前日の14日には、会場でソレンスタムがジュニア選手に自身の経験談も織り交ぜながら“哲学”を伝える「アニカ・ゴルフクリニック」も行われた。未来のプロゴルファー候補生たちに、座学で語りかける。
例えば、成功の秘訣として「私はプレッシャーのなかでゴルフをするのが好き。それは選手を磨くために必要なこと。そのときにネガティブなことを考えてはいけない。いい結果を考えれば、いいショットが打てると気づいた」という考えを伝授する。また、かつて自身が達成した女子選手唯一の“60切り”(59)からは、「私は(パー72ですべてバーディで回ると達成する)『54』で回れると信じていた。そのおかげで『59』で回れた。目標は高く設定してください」という想いを伝えた。
今大会の参加者は13~18歳の選手たち。ソレンスタムがツアーの第一線から退いたのは2008年とあって、このレジェンドの全盛期のプレーをしっかりと見たことがある選手は皆無と言ってもいい。ただ、その名前はもちろん聞いたことがある。選手たちも真剣にその一言一言に耳を傾ける。
参加者の長澤も、「(ソレンスタムの)動画を見て、球を見ずにスイングするのがすごいと思った」と、最近、そのプレー姿を見たばかり。それでも「学ぶことばかりでした。先のイメージを作ったほうがいいとおっしゃっていて、私はあまり先のことまで考えてなかった。でも考え方が変わりました」と感銘を受けた。
また新地は「将来、海外でプレーしたい」という気持ちも強いため、アドバイスが染み込んだようだ。今大会には米国の大学から“スカウト”も兼ねて、コーチが派遣されている。「まずはプロテストに受かることが目標ですが、アメリカの大学も興味がある。アメリカの情報も聞けてよかったです」。大会に出場すること自体が刺激にもなっている。その会ではジュニア選手たちからの質問にも、丁寧に、かつ熱心に答えるソレンスタムの姿は印象的だった。
海外との距離も年々近づく日本ゴルフ界の土壌に、さらなる栄養を与える大会だ。ここで上位3位タイまでに入ると、来年、米フロリダ州で行われる世界最高峰のジュニアトーナメント「ヒルトン・グランドバケーションズ・アニカ・インビテーショナル・プレゼンテッド・バイ・ロレックス」への出場権が与えられる。長澤と新地も「行きたい」と口を揃える、大きなモチベーションになっている。
「長期的な目標は(日本で)毎年、大会が開催できたらと思っている。いつか日本のジュニアに、出たい試合のひとつに挙げてもらえるように頑張るわ。アイもジュニアの試合を行っているし、将来的にコラボできれば」。そんな意欲もソレンスタムは示す。「ゴルフと人生は似ている。私もゴルフを通じて養った忍耐力、集中力が引退後も役立っている。今週、この大会に出るジュニアたちもゴルフを通じてスキルを養って欲しい」。日本ゴルフ界のさらなる飛躍へ、かつて頂点を極めた名手が一肌脱ぐ。(文・間宮輝憲)
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