USBメモリを使うのは時代遅れ?紛失リスクが高いのに物理ストレージを使い続ける意味とは?
データを保存する手段として、オンラインストレージサービスを使っている人は多いでしょう。一方で物理ストレージである「USBメモリ」を使う機会も、まだ完全になくなったとは言えないでしょう。物理的なアイテムのため紛失リスクがありますが、一方で手軽さや即時性が求められるデータ移動の手段として選ばれているのが現状。
とはいえ「紛失リスク」がある時点で、すでにUSBメモリのような物理ストレージは時代遅れの産物とも言えるのではないでしょうか。紛失リスクが高い物理ストレージを使い続ける意味はあるのでしょうか。今回はUSBメモリを使う意味は2025年現在でもあると言えるのか、詳しく見ていきましょう。

深刻視されるUSBメモリの「紛失リスク」

USBメモリ(USBフラッシュドライブ)は、その手軽さから、多くの人が一度は仕事や私生活でデータ交換や持ち運びに利用した経験があるでしょう。PCのUSBポートに差し込むだけで簡単にデータを読み書きでき、非常に便利です。
一方、USBメモリを含む物理ストレージは、常に紛失・盗難による情報漏洩リスクにさらされています。小さなUSBメモリは、ポケットやカバンのなかでいつの間にか紛失していたり、置き忘れたりする可能性があります。
たとえば2025年5月には鹿児島・薩摩川内市の中学校職員が生徒の個人情報が入ったUSBメモリを自宅に持ち帰るなどしていたところ、紛失。また、同月には秋田大学医学部附属病院でも、過去の患者情報や病院職員の氏名などが保存されていたUSBメモリが紛失したことが発表されています。
こうした情報漏洩は個人情報保護法などを基にした行政からの指導、命令、罰金の対象になるケースも。また海外事業を推進する企業の内部情報の漏洩などが起きた場合には、GDPR(EU一般データ保護規則)を基に多額のコストをかけて社内での対応が必要になる場合もあるかもしれません。
不正利用やウイルス感染のリスクも非常に高い
USBメモリは内部関係者によるデータの不正持ち出しにも利用されてしまうことがあります。またウイルスに感染したPCで使用したUSBメモリを別のPCに接続することで、マルウェアを拡散させる媒体になる可能性もあるでしょう。
つまり、物理ストレージとしての手軽さに対して、個人情報流出やウイルス感染への対策が進む昨今では、USBメモリは「デメリット」の方が大きな物理媒体になりつつあります。それにもかかわらずUSBメモリを手放せない人が多いのはなぜなのでしょうか。
それでも「USBメモリ」を手放せない理由とは?

物理的なデータの受け渡しが必要な場面がまだある

USBメモリは、データをネットワークを介さずに手渡したい場合や、一時的に大容量データをオフラインで移動させたい場合に役立ちます。
たとえば筆者は「編集前の映像データ」を複数人でやり取りする際に、いまでもごくたまにUSBメモリを使うことがあります。編集前の映像データをクラウドサービスなどにアップロードすることに心理的な抵抗感があることに加え、そのファイルが非常に重い場合、相手方の回線が細いとダウンロードに時間がかかると想像されるためです。
確かに、安さや小ささではmicroSDでも十分ですし、速度や容量を重視するならばポータブルSSDの方が良い場面もあります。物理媒体が重要な場面がまだないわけではないのも事実ですが「USBメモリ」を「使うときがある」だけで「USBメモリでなくてはいけない」必然性は薄れてきています。
起動メディアとしての役割
USBメモリはOSのクリーンインストールやシステムのリカバリー、特定の診断ツールを実行するための起動ドライブとして利用されることがあります。
USBメモリは年代を問わず直感的に操作できる
小容量のUSBメモリであれば、購入費用は非常に安価。数百円から数千円程度で手軽に入手できます。さらにソフトのインストールやアカウント設定なしに、PCに接続するだけで直感的に使用できます。
そのため、相手方のITリテラシーやセキュリティ環境によっては、クラウドサービスを介してデータをやり取りするよりも「USBメモリを手渡す」方が手っ取り早いケースも多いです。
実は、物理ストレージの市場需要は堅調に推移

このようにUSBメモリ単体を見るとニッチな市場になりつつあるかもしれませんが、データストレージ市場全体で見ると、物理ストレージの需要は依然としてあります。
実際、Fortune Business Insightsが2025年5月に公表したレポートでも世界のデータストレージ市場が今後拡大することが予想されており、予測期間中のCAGRは17.2%とされています。
この成長にはクラウドストレージの拡大が大きく関係していますが、一方、データセンター内では膨大な数のHDDやSSDが物理ストレージとして稼働していることも無視できません。
つまり、一般ユーザーが「ストレージとしてUSBメモリを選ばない」というケースが増えてきているだけで、物理ストレージが社会インフラとして、また特定のニーズに応えるソリューションとして、依然として重要な役割を担っていると言えるでしょう。
物理ストレージを使い続ける際に行うべきセキュリティ対策とは
USBメモリを安全に利用するためには、いくつかのセキュリティ対策が不可欠です。
まず、ハードウェア暗号化機能やパスワードロック機能を搭載したUSBメモリを選びましょう。またUSBメモリや外付けドライブは、使用しないときは施錠可能なキャビネットや金庫に保管することをおすすめします。
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記事提供元:スマホライフPLUS
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