「トイレは一日30回」直腸ガンで3度手術した谷昭範、“勝利への渇望”がリハビリの励みに
<スターツシニア 事前情報◇12日◇スターツ笠間ゴルフ倶楽部(茨城県)◇7038ヤード・パー72>
昨年10月に50歳の誕生日を迎え、今季からシニアツアーに参戦している谷昭範。「ノジマチャンピオンカップ箱根」では単独3位に入り、3戦を終えた時点で賞金ランキングは8位と、上々のシーズンスタートを切っている。実は体は万全な状態ではなく、ガンと闘っていた。
レギュラー時代は2010年と2011年にシードを獲得しているが、優勝には届かなかった。下部ツアーでは05年に2勝を挙げ、10年にはハワイのローカルトーナメント「パールオープン」で優勝している。レギュラーツアーの出場権を失っても下部ツアーやアジアンツアーで精力的にプレーしてきた。
そんな谷に直腸ガンが見つかったのは5年前。「手術を3回していてゴルフがほとんどできない状態だった」と振り返る。最後の手術は昨年7月。「筋力はガタ落ちして、一日にトイレに何十回も行くから、集中してトレーニングすることもできない。術後は9ホール回るのが精一杯。18ホール回って筋肉痛にならない体にようやくなったかなくらい」と現状を説明する。
以前はお腹に人工肛門をつけていたが、スイングの邪魔になるため外した。「(便を)貯めるところがないのでストレートなんです。スプーン一杯分でも貯まったら、普通の人の我慢できないくらいの状態になる。最初の頃は一日100回以上トイレに行っていたんですけど、今は落ち着いて20、30回」。ゴルフ場にトイレは数カ所しかない。練習ラウンドではトイレの場所も確認し、「試合になったら食べないとか、食事をコントロールしている」。
日常生活もままならない状態だが、勝利への渇望がリハビリの励みとなっている。「試合に出られること、あるいは勝ちたいと思うことが、気力となって頑張ってこられたと思っています。それがなかったら人工肛門でいい」。だから、賞金ランキング8位という現状に満足していない。「常にチャンピオンになりたいと思っていますし、終わったことは次、次で、上を目指してやるしかないというマインドでやっています」。
また、複数の会社の経営者という顔も持つ谷は、もともと1年の半分は海外で過ごしてきた。現在は家族とともにマレーシアで生活しており、プレーの場も日本だけに限定していない。
「先月は全米シニアの予選を受けに行きました。来月は全英シニアの予選も受けに行きたい。年末のチャンピオンズのQTも受けに行きます。どこが目標とかはあまりなくて、アメリカもアジアンツアーも(日本の)レギュラーツアーも含めて、自分の体の回復とともにやりたい」。5月19日に米テキサス州のゴルフクレストCCで行われた全米シニアオープンの予選会では本戦出場に2打届かなかったが、全英シニアオープン、米シニアツアー参戦と、もう視線は未来にある。
「結局、練習があまりできない体なので、体作りからステップを踏まないと。球をめちゃくちゃ打つと今度は関節にきて、次の日がもたない。試合に出ながらリハビリ感覚で歩けていいなというのもあります」。そう語る顔に悲壮感はなく、爽やかな笑顔が印象的だった。ただ勝利を目指して…きょう「スターツシニア」の初日を迎える。
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