狂言師・野村万作が到達した芸の境地に、犬童一心監督が迫る「六つの顔」
芸歴90年を超える人間国宝の狂言師・野村万作。彼が磨き上げてきた狂言『川上』を舞台裏とともに捉えつつ、芸の境地に迫ったドキュメンタリー「六つの顔」が、8月22日(金)よりシネスイッチ銀座、テアトル新宿、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開される。ビジュアルと予告編が解禁され、作中に登場する野村万作、野村萬斎、野村裕基、ならびに監督を務めた犬童一心(「ジョゼと虎と魚たち」「のぼうの城」)のコメントが到着した。
アニメーションを『頭山』の山村浩二、ナレーションをオダギリジョー、監修を野村万作と野村萬斎が担当。今なお高みを目指す万作のインタビュー、そして次世代の狂言師と共に舞台に立つ姿を、『川上』の舞台となる奈良の川上村・金剛寺の荘厳な風景を交えて映し出す。
〈コメント〉
野村万作(出演・監修)
狂言『川上』は、盲目の夫とその妻の物語。狂言は単なる笑いだけの芸能ではないと若い頃から考えていた私が、25歳の初演以来繰返し、大切に取り組んできた演目です。
芸歴90年を超えた私がいま演じる『川上』を、現在はもとより未来の観客にも観て頂きたいという思いでこのたびの映画化を思い立ちました。狂言の笑いの質は美しい「型」によって支えられています。狂言は美しくあらねばならない、と長年思ってきましたので、犬童一心監督の狂言への愛によって、映画のスクリーンがとても美しいものに仕上がったことを有難く思っております。ぜひ劇場でご鑑賞いただければ幸甚に存じます。
野村萬斎(出演・監修)
『川上』という狂言屈指の名曲を、映画の手法で映像に収めると同時に、父・野村万作という狂言師の人生にも踏み込んだ映画が完成しました。父と、『川上』の盲目の男の生き様に、何かオーバーラップするものを感じて頂けるのではないでしょうか。古典芸能・狂言を伝える一家に育った我々は、「いま」という瞬間を、点ではなく、伝統という線の中で生きています。ただ、それは我々ばかりのことではありません。この映画を通して、人間誰しも広く歴史を受継ぐ存在であり、より良い未来のために生きていく、その中でかつ自分個人の生を全うする、という大きな生き様を感じ取って頂ければ幸いです。
野村裕基(出演)
祖父・万作は今や数少ない、日本が戦争をしていた時代の記憶をきちんと持っている人で、その後ずっと狂言師として活動し、94歳になろうとする今も現役で舞台に立ち、さらに芸を高めようとしています。映画『六つの顔』を通して、自分と同じ若い世代の方にも、様々な人の様々な人生の中の一つとして、こんな人もいるのだな、と祖父の生き様をご覧いただけたらと思います。激動の時代を生き抜いてきた人の生き様に、昔を踏まえた上で、今をどのように生きるべきか、という解が込められた映画だと感じました。
犬童一心(監督・脚本)
萬斎さん主演『のぼうの城』を監督した縁で能楽堂に誘われ、気づけばそこは最も好きな場所の一つとなり15年通い続けている。そしてその間最も繰り返し見て、楽しみ、考えさせられた人が「野村万作」だった。そのどんなに不埒で笑いに満ちた物語でも、常に美しく、一歩引きながらも観客の目線と気持ちを掴み続けるそのあり方、すでに93歳ながら伝わってくるふつふつとした生命力、その謎、核を映像を通して感じてもらえたらと思った。
『川上』へのこだわりについてうかがったとき、今演じるのであれば「仏の教えに、夫婦の愛が克った」そこを伝えたいとおっしゃった。人間を信じることが今こそ必要だという大きなテーマを抱えて挑戦しようとされているのだ。93歳にしてまだまだ続く芸と世界への希求にとても感動した。17歳から作り続けてきた映画、今回万作先生から私の映画を監督してもらえないかという提案は、最高の名誉、ご褒美だった。
「六つの顔」
出演:野村万作、野村萬斎、野村裕基、三藤なつ葉、深田博治、高野和憲
ナレーション:オダギリジョー
監督・脚本:犬童一心
題字・アニメーション:山村浩二 音楽:上野耕路
監修:野村万作、野村萬斎
製作:万作の会
企画・制作:野村葉子、小俣美登里、清水薫、小山田智美
プロデューサー:丸山靖博、林季彦
撮影:蔦井孝洋 照明:疋田ヨシタケ 編集:辻󠄀田恵美 サウンドデザイン:志満順一 音響効果:勝亦さくら
制作プロダクション:ROBOT 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
2025年/日本/DCP/カラー・モノクロ/4:3/5.1ch/82分/G
© 2025 万作の会
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/six-face/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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