意外と知らない「Googleマップの渋滞情報の精度が高い理由」
Googleマップで、渋滞情報を事前に調べてからドライブに行く方は少なくないでしょう。Googleマップでは渋滞している区間が赤く表示され、情報はリアルタイムで更新されていきます。

一方「なぜGoogleマップは高精度の渋滞情報を提供できているのか」は意外と知らない方も少なくないのでは? 実は海外では大量のスマホを利用し、意図的にGoogleマップ上に渋滞を発生させた事例もあり、渋滞情報の測定方法は興味深いものです。
さらに2024年10月以降、GoogleマップにはGemini AIが統合され、従来の渋滞情報提供システムが大幅に進化しています。本記事では、最新のAI技術を含めた渋滞情報システムの全貌を解説します。
アーティストが99台のiPhoneで「意図的に渋滞を発生」させることに成功
Googleマップを使い、2020年、ドイツのアーティストであるサイモン・ヴェッカー氏があるパフォーマンスをして話題になりました。
それは99台のiPhoneを手押し車に載せて巡回するというもの。99台のiPhoneを赤い手押し車に積み、ベルリンの閑散とした道を歩き回りました。
その結果、Googleマップは99台のiPhoneが一箇所に集まって移動していることを「渋滞」と判断し、他のユーザーに迂回ルートを提案。つまり、大量のスマホが一箇所に集まってゆっくりと進んでいたため、Google側が「渋滞」だと誤認識してしまった結果です。
結果、Googleマップ上で意図的に渋滞を発生させることに成功しました。このパフォーマンスによって、Googleマップの渋滞情報は少なからず「各ユーザーのスマホの位置情報」に根ざしていることが明らかにもなりました。
Googleマップの渋滞情報の精度が高い理由
先述した通り、Googleの渋滞情報は意図的に作り出すことができますが、逆を言えば、Googleの位置情報収集が正確だからこそ成功したパフォーマンスだったとも言えます。
Googleでは、「プローブ情報」によって利用者のスマホから匿名で位置情報や移動速度を収集し、道路上の車両の動きを正確に把握しています。
加えて過去の交通データも活用されています。たとえば、東京都内の環状七号線を走る車の速度データを見てみると、朝の通勤時間帯では時速50km、夕方の帰宅ラッシュ時には時速15kmから20kmに減少する傾向があります。
つまりGoogleマップでの検索が朝に行われるのか、夕方に行われるのかによって渋滞の発生確率や到着予定時刻は大きく変わります。Googleマップは過去の交通データを用いて、特定の時間帯や曜日における交通パターンを予測し、より正確な渋滞情報を提供することを試みています。
Gemini搭載で変わる渋滞予測
冒頭でも触れたとおり、Googleマップには2024年11月にGoogleのAIアシスタントである「Gemini」が搭載されました。これにより、ナビゲーション機能や情報提供が強化されています。

たとえば、: 「昼に友人と遊べる場所」といった漠然とした質問に対し、Geminiがおすすめの場所を提案してくれる機能のほか、ナビ中に「どの車線に入るべきか」をより明確に表示する機能、また、冠水、視界不良、未舗装といった道路状況をユーザーが報告できるようになりました。
つまり、結果的に渋滞を回避するための選択肢が増え、よりスムーズな移動が可能になったと言えるでしょう。
本当に渋滞情報は正確なの?首都高の公式情報と比較してみた
Googleマップの渋滞情報には前述の通り、「プローブ情報」や過去の交通データが用いられています。
一方で冒頭でご紹介したサイモン氏のパフォーマンスから分かる通り、渋滞情報は意図的に発生させることもできます。このように書くと「あれ、一見Googleマップは正確なようだけど実はそうでもない?」という疑問も湧くのではないでしょうか。
そこでGoogleマップの渋滞情報は本当に信頼できるのか、公式情報と比較してみました。

日本道路交通情報センターから提供されるリアルタイムの交通情報とGoogleマップの渋滞情報を、2025年8月7日16時50分頃に比較してみました。
なお比較対象としたのは、東京渋谷区周辺の渋滞情報です。
実際の渋滞情報を比較すると、公式で渋滞情報が出ている箇所はGoogleマップでも赤くなっており、情報はほぼ一致していることが分かりました。渋滞を確実に回避できる水準の精度を備えていると言えるでしょう。
継続的な精度向上の取り組み
なお、Googleの公式発表によると、GoogleマップのETA(到着予定時刻)予測は97%以上の精度を実現しています。この高い精度は以下の技術革新により支えられています。
・DeepMind AI統合
・リアルタイム更新
・機械学習による最適化
Simon Weckert氏の2020年のパフォーマンスが示したように、システムには一定の脆弱性も存在しますが、継続的な技術改良により、その精度と信頼性は年々向上しています。
2025年以降も、生成AIのさらなる進化により、より個人に最適化された交通情報提供が期待されており、渋滞情報もさらに精度の高いものになるでしょう。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)※画像は一部編集部で加工しています
記事提供元:スマホライフPLUS
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