箱根の穴場的温泉宿! 源泉掛け流しと旬の料理、静かな空間で癒やされる 「箱根・大平台温泉 玉の湯」 【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】

休日の箱根に足を運ぶと、インバウンドの影響も相まって温泉街は大変なにぎわいを見せています。まるで、渋谷や原宿に来たかのような混雑ぶり。それでも、初夏の気持ちの良い季節に箱根に行きたいと思うのは、私だけではないはずです。
箱根温泉郷は「箱根十七湯」ともいわれるように、大小さまざまな温泉地の集合体です。箱根湯本温泉や強羅温泉といった有名温泉地はどこも混み合っていますが、数軒の宿が点在するような静かな温泉地もあり、そこなら意外と静かに過ごせることも。今回はそんな箱根温泉郷の「穴場」的な温泉地である、「大平台温泉 玉の湯」をご紹介します。

大平台温泉は、箱根登山鉄道「大平台駅」近くにある温泉地。こちらの駅は、箱根の玄関口・箱根湯本駅から2駅目に当たり、スイッチバックが有名な無人駅です。国道1号のすぐ脇に温泉街があるため、車やバスでのアクセスも便利です。
箱根十七湯の一つに数えられる大平台温泉は、箱根エリアの温泉地の中では比較的歴史が浅く、開湯は戦後の1951年です。温泉街は、住宅街と一体になっていてとても閑静。そんな温泉街を数分歩いたところに、今回ご紹介する「玉の湯」はたたずんでいます。
創業は60年以上前。当時の銅ぶき屋根を残す木造2階建ての純和風でレトロな外観です。館内も決して新しくはないですが、手入れが行き届き清潔に保たれています。木の柱や板床は丁寧に磨かれているためか、ツヤツヤと光沢があり気持ちの良い空間でした。


お風呂は、男女別内湯と貸切風呂の計3か所。内湯は岩風呂と檜(ひのき)風呂の2か所で、それぞれ趣きが異なり、日ごとに男女が入れ替わります(宿泊すればどちらのお風呂も楽しめます)。貸切風呂は、空いていれば予約なしで利用できるスタイル。2人入ればいっぱいの湯船が一つのみで、こじんまりしていますが、他のお客さんを気にせずゆっくり温泉を楽しむことができます。



泉質は、アルカリ性単純温泉。51度で湧く源泉を、加水・加温・循環・消毒を一切せずに、どの湯船も「完全掛け流し」で提供されています。そのため、お湯の鮮度は抜群。フレッシュな源泉特有のかぐわしい香りが鼻孔をくすぐり、深呼吸したくなります。肌触りはツルツルスベスベで美容液のよう。しばらく温泉に身を沈めていると、全身が包み込まれるような夢心地の浴感を味わうことができます。
夕食は、海鮮など地元産の食材を使った手作り料理。この日は、名物の大エビフライ、マグロ・カンパチ・メダイの刺身、ローストビーフ、ニジマスのホイル焼き、揚げ野菜、サザエのつぼ焼き、デザートのキウイなど粒ぞろいのメニューが食卓を彩りました。
手作り料理と銘打っているように、大エビフライ用のタルタルソースも女将(おかみ)さんのお手製。タマネギの代わりに、細かく刻まれたウメが入っていて、カリカリの食感がおいしくさっぱりとした味わいでした。また、ホイル焼きにされたニジマスは、午前中に近くの川でご主人が釣ってきたもの。箱根で天然もののニジマスをいただけるなんて、うれしいですね。もちろん、とてもおいしかったです。



今回ご紹介した「玉の湯」には、1880年築の蔵を改装した「カフェ蔵茶」もあります。宿泊の場合は朝の時間帯に特別料金で、ご主人が豆から挽(ひ)いてくれるコーヒーをいただくことができます。蔵の中は外部から隔絶され、とても静か。そこで過ごすコーヒータイムは、時間が止まったような不思議な感覚になれました。


常に混雑しているイメージの箱根温泉郷。大平台温泉エリアは、そんな箱根の中でも比較的落ち着いて過ごせる温泉地です。
ゴールデンウィークが終わり7月の夏休みまでの期間は、温泉旅行の閑散期ともいわれる季節。新緑が気持ちよく、虫の心配も少ないこの季節にぜひ訪れてほしい温泉の一つです。
【大平台温泉 玉の湯】
住所 神奈川県足柄下郡箱根町大平台596
電話番号 0460-82-3101
【泉質】
アルカリ性単純温泉(低張性 アルカリ性 高温泉)など/泉温51.7度/pH:9.1/湧出状況:動力/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆完全掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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