私有地侵入に検察への虚偽報告まで‥‥。大阪府警「伝統の強引捜査」の功罪
イチオシスト

刑事ドラマのような強引な捜査手法に批判も高まる大阪府警
大阪府警捜査四課の強引な捜査に司法からNGが突きつけられている。山口組の抗争事件に絡み、参考人のマンションにオートロックをすり抜けて出入りしたことが違法捜査だと裁判所が認定して敗訴する事態となった。捜査中の暴行事件でも有罪判決が下され、大量の処分者も出している。「ヤクザも震える大阪4課」と組員たちから恐れられてきた大阪のマル暴刑事たちだが、いまさらながらに社会人としての自制と法の遵守が迫られている。
名古屋市内の30代の女性が大阪府警の違法捜査を受けたとして起こした国賠訴訟で、名古屋地裁は1月22日、「関係者の捜査として許容される限度を超えて違法」と断じ、府に5万5千円の支払いを命じる判決を下した。司法記者が語る。
「判決では、女性に聴取するために居住するマンションに入ろうと、他の住民や関係者の子供の出入りに乗じてオートロックをすり抜けて侵入を繰り返したことなどが違法と認定されました。時には子供に対して、『お母さんに事情聴取に応じるように伝えてほしい』といった趣旨の言葉を交わしています。そして、玄関口のインターフォンを何度も押したり、居住階に数時間とどまるなどしたことも問題視され、違法捜査で女性の私生活の平穏を乱して精神的苦痛を負わせたと結論づけました」(司法記者)
そこまで大阪府警がしゃかりきになって女性の聴取にこだわった理由について、実話誌記者がこう語る。
「2022年5月、当時は神戸山口組のナンバー2の副組長だった宅見組・入江禎組長の大阪市内の自宅に山口組側が車を突っ込む事件を起こし、実行犯の他に指示役の弘道会系幹部が逮捕されて有罪判決を受けました。この幹部が女性の元夫で、犯行車両の登録上の使用者の男性が女性の当時の交際相手でした。
女性は事件には関与しておらず、参考人として事情聴取に応じていましたが、男性の関与を疑う大阪府警の執拗な聴取に不信感を募らせて供述調書の作成を拒みました。このため、捜査員が自宅に押し掛けてきたり、頻繁に電話を掛けてくるようになったようです」(実話誌記者)
【暴行隠匿のため、検察に虚偽報告】大阪府警の行き過ぎた"捜査"はこれにとどまらない。家宅捜索中に捜査対象者を暴行したとして、特別公務員暴行陵虐罪などに問われた捜査4課の元捜査員2人に対し、大阪地裁は1月26日、執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。前出の司法記者が振り返る。
「スカウトグループのナチュラルに総勢28人で家宅捜索した際、スマートフォンのロック解除に応じない捜査対象者の腹部を殴ったり押し倒すなどの暴行を加えたという事件です。このほかに4人が在宅起訴されていて、府警の処分者は懲戒免職となった2人を含む計35人に及びます。
一連の過程では、府警が記録していた防犯カメラ映像を消去し、検察に『映像はない』と虚偽の報告をしたことも明るみになり、組織的な隠ぺい疑惑まで取りざたされています」(前出の司法記者)

2016年12月に行われた山健組への家宅捜索では、大阪府警の職員が組員を袋叩きにする動画が拡散した
特に反社勢力に対しては、苛烈で容赦ない強硬姿勢で臨んできた大阪府警。山口組と神戸山口組の分裂抗争が激しかった2016年12月、神戸側の当時の中核組織だった山健組に家宅捜索に入ると、相手が非協力的だとみるや窓ガラスを警棒で打ち破り、また組員を引きずり倒して馬乗りで締め上げるといった乱闘騒ぎを起こした。そして、その模様を撮影した防犯カメラ映像がネット上に流出。「ヤクザ相手だからこのぐらいは当然」「いくらなんでもやりすぎ」と賛否の声が上がった。
関東地方の県警本部の暴力団担当刑事が眉をひそめて話す。
「ヤクザの事務所は防犯カメラがあるのは分かっているのに、それでもバチバチにやりあげるのは、ネットなどに流れるのは承知で大阪府警の凄みを世間にアピールしたということなのだろう。暴力の刑事というのは、ヤクザに舐められるとヤツらからの情報が入らなくなるので、高圧的なイメージを保たなければならないからね。
ただ、大阪の場合はそれが度を超している。以前、大阪が手配をかけていた組員をうちの県で見つけて捕まえた際に身柄を引き取りに来た刑事はすごかった。『調べ室借ります』と組員を連れて入ると、そもそも内規違反なんだけどドアを閉めて、それで取り調べ室からは椅子でボコボコと殴る音が聞こえてきた。
10分ぐらい経って刑事たちが出てくると、組員の顔は真っ赤に腫れあがっていて、それでもそいつは『ありがとうございました』と刑事に頭を下げていた。大阪では、刑事がパクられたヤクザにヤキを入れるのが当たり前なんだなと思い知らされた」(暴力団担当刑事)
暴力団事情に詳しい関係者も呆れたように話す。
「昔の大阪府警の取り調べ中の暴力はひどかった。否認や黙秘をすると、稽古と称して柔道場に連れていかれて投げられたり首や関節を極められたり。また、取り調べの時間が長くて寝かせてくれず、舌ベロを噛みちぎった親分もいる。今回の山口組の抗争でも大阪では殺人事件は起きていないが、『大阪は取り調べがきついからどうせやるなら他県で』というのが本音だろう」(関係者)
大阪府警捜査四課の看板が、ヤクザを畏怖させて重大事件を防いだ面は否めない。しかし、防犯カメラなどの技術が進み、これまで社会の死角で行われてきた手荒いお家芸は、社会の白日の下にさらされてきている。
文/大木健一 写真/photo-ac.com、関係者提供
記事提供元:週プレNEWS
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