後輩たちが胴上げで労い 谷口徹が男泣きしながら語った“プロとしての決断”「ツアーに出るレベルかが問題」
イチオシスト
<カシオワールドオープン 2日目◇28日◇Kochi黒潮カントリークラブ(高知県)◇7375ヤード・パー72>
57歳の谷口徹は、多くの選手が見守るなか、今シーズン最後の戦いを終えた。その目からは涙が止まらない。ホールアウト後の取材でも、終始、その込み上げるものを抑えられなかった。そして、言葉を詰まらせながら、いま思っていることを口にする。
「引退ってわけじゃないですけど、自分で出られないからね。出られなかったらそれは引退かもしれない。日本プロにはまだ出られるから何も決めていないですけど…。今年は優勝がマストというつもりでやっていたので、それが達成できていない…。(優勝への意欲は)ここ何年も思っている。それをまだやりたい気持ちのほうが強かった。若い選手とかがすごく頑張っている姿を見ながら、ここまで来ることができた」
初日は「67」で滑り出し、首位と5打差の8位タイと上々のスタートを切った。しかし、迎えたこの日は1バーディ・4ボギー・1ダブルボギーの「77」。大きくスコアを落とし、トータルイーブンパー・82位タイで決勝ラウンドに進むことはできなかった。昨季の賞金ランキングは154位で、今季は生涯獲得賞金ランキング3位の資格でツアーに出場。今週は賞金ランク136位の位置で挑み、今大会で単独4位以上に入ればシード権獲得の可能性を残していたが、その道も閉ざされた。
来季の出場権をかけて争われるQT(予選会)には「行かない」とキッパリ。2018年の「日本プロ」を制した資格で同大会には2029年まで出場することはできる。そのほかの試合に出場するならば推薦が必要だが、今はあまり前向きではない。「自分がツアーに出るために全部できているか…。ツアーに出るためのレベルがある選手なのかどうかが問題。推薦をもらうどうこうよりも…」。“自分で出られないからね”という言葉には、こんな真意がある。ツアー通算20勝を誇り、2度の賞金王にも輝いた男のプロとしての矜持ともいえる。
涙を流しながら最終18番ホールのグリーンに現れた谷口を、比嘉一貴や永野竜太郎、佐藤大平、塚田よおすけといった、多くの後輩が見守っていた。パーパットを沈めると、手で目元を押さえ、うつむく57歳に、ハグと一緒に次々と『お疲れさまでした』という温かい言葉がかけられた。「すごくありがたい。あまり男子ツアーでは見たことがない。いままで辞めた選手とかでもそういう光景は見たことがないな」。主役は素直に喜びを語る。集合写真を撮影した後には、そんな仲間たちの手による胴上げも。たくさんの選手から慕われていることが伝わってくるシーンだった。
同組で回った片岡尚之と清水大成は、それぞれのトレーナーを通じて一昨年から親交があり、食事などを一緒にする仲。そんな2人からは谷口の写真がプリントされたTシャツも用意された。「2日間プレーが見ることができてよかった。あんなに気迫のこもったプレーができるのはすごいし、何よりもそこまでゴルフを愛せる、そのモチベーションがすごかった」(片岡)、「引退するのかってぐらいすごいプレーでした。本当に刺激になりました。あの姿を見たらもっと頑張ろうって、そういう刺激をもらえる2日間でした」(清水)。若い2人にとっては最後まで学ぶべき姿勢だった。
谷口は「いつも勝つためにやってきたし、レギュラーツアーも出られる限り出たいから出ている。結果がどうなるかは仕方ないですけど、そのためにずっとやってきました。若い子たちにもいい刺激というか、『自分もああなりたい』と思ってもらえたらうれしいですね。彼らがどう感じているかは分からないけど…。長く続けられる道筋というか、『まだできる』という姿を見せたい。そんなことは思いました」と話す。背中で語ってきたメッセージは、しっかりと伝わっている。
今後については「多分しばらくは何も考えられないんじゃないかな、と思います。シニアツアーもありますしね、恵まれているとは思いますけど」と話すにとどめた。長年、主戦場にしてきたレギュラーツアーは、これで“一区切り”。だが、いつ戻ってきても、歓迎する人たちはたくさんいる。(文・高木彩音)
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