室伏広治もやっていた“紙風船トレーニング”にスイング安定のヒントあり! 体幹を感じるための方法とは?【四の五の言わず振り氣れ】
イチオシスト
昨年でツアーから撤退した上田桃子やルーキー・六車日那乃などを輩出する「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏が、スイング中に大切な体幹を意識する方法を教えてくれた。
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「ツジ、面白いテレビやっとるで! すぐに見ろや!」。ジャンボ尾崎さん専属で、伝説のキャディと呼ばれる佐野木計至さんからの電話。テレビをつけると、室伏広治さんが映っていました。佐野木さんが面白いと言ったのは、この日ゲストに呼ばれていた室伏さんの、体の使い方の授業でした。室伏さんといえば、アテネ五輪、ハンマー投げの金メダリスト。陸上・投てき競技ではアジア人初の金メダリストで、先日までスポーツ庁長官を務められていました。
さて、室伏さんの筋肉隆々とした体からは、さぞやハードな筋力トレーニングをやってきたんだろうな、と想像しがちです。ところが番組で紹介していたのが、現役時代からやっていたという“紙風船トレーニング”。ちなみにボストン・レッドソックスで活躍する吉田正尚選手は、早くから室伏さんに師事し、続けているトレーニングだそうです。
さて、その内容ですが、まず体の真正面、胸の辺りで両手を合わせます。その状態から力いっぱい両手を押し合います。さて、体のどこに力が入っているでしょうか。腕や肩、首筋辺りが張っているはずです。次に同じ姿勢で、今度は紙風船を両手で挟みます。そして今度も力いっぱい、しかし紙風船を潰さないよう両手を合わせます。すると今度はどうでしょうか。体に力の入る部分、やがて熱くなる部分が違っていることに気が付くのではないでしょうか。
結論を急げば、ヒジや肩、首筋はリラックスしていて、体の中心部分、内側というか内部に力が入り、熱くなっているはずです。この熱くなる部分がいわゆる体幹であり、インナーマッスルです。実はゴルフスイングでも、この体幹、インナーマッスルが体の効率的な使い方において、とても重要な役割を果たしています。
ちなみにヒジや肩、首筋に力が入るのは、いわゆるゴルフの天敵とされる力みです。読者のみなさんの中にも、ラウンド後にヒジや肩、首筋といった上半身に疲労や、ときに痛みを感じる人はいないでしょうか。それは同時に、体を上手に使えていない証拠でもあります。
ボクの師匠である故・荒川博先生は、指導してくださる際によく、「臍下(せいか)丹田に氣を集めろ」と、おっしゃいました。少し概念的で、指導を受け始めた頃は、具体的にどのようにしたらいいのか分かりませんでした。
ところが先生が亡くなった後、自分なりに勉強するうち気が付いたことがあり、ボクなりに考案した練習がありました。というのは室伏さんが語っていたトレーニングと似たもので、クッションを両腕(前腕部分)に挟んでのアドレスです。両腕で挟むのはクッションでなくても構いません。ヘッドカバーを挟んでやらせたこともありました。どのような選手にやらせるかといえば、スイング中に軸がブレる選手にです。そういう選手には目をつぶらせることで、より意識が内に中に集まることが理解できるようになりました。このとき、集中する意識が氣であり、それが集まる体の内の部位が臍下丹田なのです。
ちなみに先生は、絶対に“氣”を使い、簡易な“気”という文字は使いません。中には米と書きますが、この中心が臍下丹田であり、そこから四方八方に放出されるエネルギーが氣だからです。
それはともかく、番組に登場した吉田正尚選手は、かつては重いバーベルを上げ、重いバットを振ることがトレーニングだと思っていたそうです。その結果、腰痛に悩まされ、それを克服し体の上手な使い方を身に付けるために、室伏さんに弟子入りしたそうです。その中で関節は消耗品だけに、大事なのは使い方だといった趣旨のことを語っていました。
ゴルフも同じ。飛距離ひとつを取っても、力づくではなく、関節を上手に使って加速させて飛ばすのです。そのために大切なのが体幹やインナーマッスルであり、臍下丹田であり、そこに集まる氣なのです。ふと、荒川先生の顔を思い出させてくれる番組でした。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』878号より抜粋し、加筆・修正しています
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