南北線と東西線、仙台市営地下鉄に〝完乗〟 現場でのホスピタリティに大感激(宮城県仙台市)
イチオシスト

2025年8月の宮城紀行。「全国高校生地方鉄道交流会in宮城県美里町」と「気仙沼線BRT乗車」に続く三題噺(ばなし)ラストで、「仙台市営地下鉄完乗記」をお届けします。
筆者は地鉄交流会(8月10日)前日に仙台入りし、東北新幹線から乗り換えた地下鉄仙台駅で一日乗車券を購入。杜の都の地下鉄全線に乗車しました。
1987年開業の南北線と2015年の東西線
仙台市営地下鉄は南北線と東西線の2路線。南北線は泉中央~富沢14.8キロで1987年7月、東西線は八木山動物公園~荒井13.9キロで2015年12月にそれぞれ開業しました。両線は仙台で接続(クロス)します。
南北線と東西線の規格は大きく異なります。南北線はJR在来線と同じ線路幅1067ミリの一般鉄道。東西線は1435ミリの鉄輪式リニアモーターカー、都営地下鉄大江戸線やOsaka Metro(大阪メトロ)長堀鶴見緑地線などと同じリニアメトロです。
「南北線車両からの進化」
仙台市交通局のトピックス、2024年10月から営業運転に入った南北線の新鋭3000系電車です。南北線車両は、開業時から1000系(2007年からの更新工事で現在は1000N系)オンリー、3000系は約40年ぶりの新型車両です。
主なスペックは4両一編成で、アルミ合金製。全長は先頭車21.75メートル、中間車20メートルで、先頭車は乗務員室の分だけ長くなっています。
イメージコンセプトは「南北線車両からの進化」。2021年実施の仙台市民アンケートで選ばれました。先頭形状は1000N系を引き継いだ〝くの字形〟。筆者は京都市営地下鉄烏丸線の20系電車に似た印象を受けました。
車体ラインカラーはグリーン。仙台市民の憩いの場・定禅寺通のケヤキ並木がモチーフだそうです。
細かい点では、車体床面を1000N系に比べ4センチ下げ、ホームとの段差を縮めました。床面全体を下げるのでなく、ドア部にわずかな下り傾斜を付け、車いすでもスムーズに乗降できるようにしました。
仙台市交は2030年度までに最大22編成(88両)を新製、1000Nを置き換える計画です。

富沢から泉中央へ乗り鉄
終点の富沢から起点の泉中央に向かいます。富沢はホーム地上3階、コンコース同2階の高架駅。駅南側に富沢車両基地があります。上下線の真ん中にホームがある1面2線で、これは南北線全駅に共通します。

富沢発車後、次駅の長町南までの間で地下に入ります。現地で気付いた点では南北線は4両編成ですが、ホームは全駅6両分の有効長があり、将来の輸送力増強に対応します。全駅にホームドアが整備されます。
地下を走る長町南~旭ヶ丘は多くがシールドトンネルですが、駅部など一部区間に開削トンネルもあります。黒松、八乙女の2駅は高架駅。泉中央手前で再び地下に入ります。泉中央はサッカー、ベガルタ仙台の本拠地・仙台スタジアムが目の前です。

南北線は長町で東北線、仙台で東北新幹線と東北、仙石、仙山のJR在来3線、北仙台で仙山線に接続します。
JRTTが西端部を建設した東西線
ここから東西線。筆者は開業前の仙台市営地下鉄東西線への取材経験があります。といっても〝仙台市交通局直撃〟でなく、話を聞いたのは鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)仙台鉄道建設所(2013年当時のセクション名)です。
JRTTは東西線終点の八木山動物公園から国際センター西側まで約4.3キロ区間の土木工事と軌道工事を受託しました。
受託理由の1つが「軟岩(なんがん)」。土砂と岩石の中間的な地質で、青葉山は全山が軟岩地層で形成されます。実は南北線にも同様の地層があり、JRTTの前身の日本鉄道建設公団は一部区間を建設しました。東西線でも実績を買われました。
工法の基本は山岳トンネルのNATM(ナトム=最近は新オーストリアトンネル工法と訳されます)。地山(じやま)の力を生かして掘削する山岳トンネルの基本工法で、JRTTは整備新幹線などで多くの実績を持ちます。自然環境が豊かな青葉山とあって、特に環境保全には最大限配慮しました。
駅名でも分かるように、八木山動物公園は近隣に動物園があるため、動物の生活サイクルに配慮して工事時間を工夫しました。
伊達政宗の前立て
東西線車両は2014~2015年に製作された2000系電車。4両一編成で、車体長は先頭車16.75メートル、中間車16.5メートルと、南北線より一回り小ぶりです。仙台市内の高校生によるワークショップを開催するなど、市民の意見を反映させました。

ワンポイントが、戦国武将・伊達政宗のかぶとの前立て(ひたい部分の飾り)をイメージした三日月のライン。鏡面仕上げで、仙台の車両らしさを際立たせます。
日本で最も標高の地下鉄駅
荒井から八木山動物公園に向かいます。施設的にはシールドトンネルが延々続きます。ホームは南北線と同じ1面2線。仙台は南北線の下部で交差します。
JRTTが施工した国際センターからは複線の山岳トンネルに変わります。東西線全線の標高差は約100メートルもあります。
終点の八木山動物公園は標高136.4メートルで、国内地下鉄では神戸市営地下鉄北神線谷上(244メートル)に次ぐ2位。ただし谷上は地上駅で、地下駅に限れば八木山動物公園がトップです。
東西線はずっと地下ですが、広瀬川橋りょう(国際センター~大町西公園)と竜の口橋りょう(八木山動物公園~青葉山)の橋りょう部では地上に出ます。竜の口橋りょうは下部が地下鉄、上部が道路の鉄道道路併用橋です。

乗務員さんの親切に感激
最後に、取材時のエピソード。筆者は南北線富沢で3000系を待っていたのですが、なかなか姿を現しません。ホームで乗務員さん尋ねたところ、わざわざ運行管理に確認して「本日は車両運用に入っていません」(もちろん、本サイト取材のためという目的と、事前に仙台市交通局広報セクションに連絡済みという点はお話ししました)。
40年以上交通記者をしていても、現場でここまで対応してもらえたのは初めて。仙台市交通局の方のホスピタリティーを感じながら駅を離れました。
記事:上里夏生
記事提供元:旅とお出かけ 鉄道チャンネル
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