【阪神vsソフトバンク 】"似ている王者" 対決を制するのは虎か、鷹か!?
イチオシスト

NPBもMLBもいよいよ2025年シーズン最終決戦へ――。伝説の瞬間は生まれるのか!?
■投打に盤石な虎、要所でミスしない鷹「リーグ王者同士による、日本最高峰の試合が期待できるマッチアップとなりました」
阪神とソフトバンクが激突する今年の日本シリーズについて、このように期待を寄せるのは、現役投手を指導するピッチングデザイナーで、本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏だ。
まずは両軍のクライマックスシリーズ(CS)での戦いぶりとチーム状況を解説いただこう。
阪神は2位DeNAを3連勝で退ける、ペナントレース同様の盤石ぶりだった。
「CSファイナルステージでは3試合のうち2試合で無失点リレー。村上頌樹(しょうき)、才木浩人、髙橋遥人の先発3枚が安定していました。髙橋はケガの影響で昔ほどの圧倒感はないかもしれないと心配していましたが、ここにきて本領発揮。あと一歩でノーヒットノーランの快投で健在ぶりを示しました」
12球団トップのチーム防御率2.21を誇る投手陣はCSでも健在だった。優勝から1ヵ月も空いたが、どの投手も問題なくコンディション調整ができている。
一方、打線に目を向けると、4番の佐藤輝明がCS打率.455、1本塁打、5打点。3番の森下翔太が打率.667、1本塁打、3打点でCSファイナルステージMVP受賞。この主軸ふたりの活躍で日本シリーズ進出を決めてしまったカタチだ。
森下は2年前の日本シリーズでも7戦7打点と活躍しており、大一番での勝負強さを改めて印象づけた。
「森下の勝負強さは精神的なものだけではなく、低めを得意とするスイング軌道だから。ピンチや勝負どころであればあるほど、相手投手は低めに落ち球やスイーパーなどの決め球を投げようと徹底してくるので、結果的に森下のスイング軌道にバッチリと合う。
2年前の日本シリーズでの活躍も、低めのストレートやフォークをうまくとらえた結果でした」
対するソフトバンクはCSファイナルステージで打線が湿りがちだった。近藤健介の不在も痛かったが、パ・リーグ首位打者の牧原大成が打率.118、周東佑京が打率.143と主力の不調が重なった。
「日本ハム投手陣が良かった影響もありますが、コンディションが万全でない選手も多かった印象です。困ったときに頼りになる中村晃が接触転倒で途中から欠場してしまったのも痛かったです」
それでも日本ハムを振り切れたのは、CSファイナルステージMVPを受賞したリバン・モイネロや盤石の救援陣を軸とした投手陣の踏ん張りがあったから。
そして、ペナントレース同様の「要所でのきめ細かさ」が生んだ結果だとお股ニキ氏は語る。
「日本ハムの野球は『こうなったらいいな』という願望で選手を起用することが多く、ハマったら手がつけられないものの、ここぞの場面では裏目に出てしまうことも。
対して、ソフトバンクの野球は現実主義。要所でミスをしない野球ができる。そういう実直なプレーの積み重ねに対して、野球の神様が最後にほほ笑んだと言えます」
阪神とソフトバンクの主力の顔ぶれを見ると、似た特徴を持つ選手が多く、ハイレベルな攻防を期待できそうだという。
「森下の勝負強い打撃について説明しましたが、ソフトバンクの野村勇も同じタイプ。低めの球に強いスイング軌道で、CSファイナルステージでは2本塁打を記録。日本シリーズでも打線のキーマンになると思います」
そのほかの打者でも共通項は多いという。
「足で存在感を見せる近本光司と周東。強打も進塁打もできる中野拓夢と牧原。ここぞで一発が期待できる佐藤輝と柳田悠岐。阪神勢とソフトバンク勢、どちらが結果を出せるのか注目です」
投手陣も、共に先発4枚が盤石という構成は同じだ。
「阪神は村上、才木、髙橋に、CSで登板機会のなかったジョン・デュプランティエが加わる。一方のソフトバンクもモイネロ、有原航平、上沢直之、大関友久の『10勝カルテット』がいるため、点が入りにくい試合が予想できます」

さらに、リリーフ陣の顔ぶれも対になっているという。
「阪神は及川(およかわ)雅貴、石井大智、岩崎優(いわざき・すぐる)の3枚が盤石。一方のソフトバンクも藤井皓哉、松本裕樹、セーブ王の杉山一樹という『樹木トリオ』が試合を締める。どちらもCSではさすがの仕事ぶりでした」
その投手陣をまとめる坂本誠志郎と海野隆司、両軍の正捕手にも実は共通項が多い。
「守備力が高く、配球にも優れ、投手の良さを引き出すタイプ。そんな彼らが正捕手を務める阪神とソフトバンクが勝ち上がったことは、失点を防ぐという観点で捕手の果たす役割がいかに大きいかを証明しています。ふたりのリードがシリーズの鍵を握っているのは間違いありません」
〝似ている王者〟対決となったが、どこで差が出てくるのか?
「低めが得意な森下以外、阪神はフォーク系投手が苦手。そして、ソフトバンクは先発もリリーフもフォーク系投手が多い。特に抑えの杉山は阪神打線が一番苦手とするタイプです」
また、主力選手以外の顔ぶれではソフトバンクに優位性がありそうだ。
「川瀬晃(ひかる)がCSファイナルステージ最終戦で決勝打と好守を見せたように、勝負どころで仕事ができるいぶし銀がいるのはソフトバンクの伝統。阪神では熊谷敬宥(たかひろ)らが同じ立場ですが、ソフトバンクのほうが一枚上手です」
一方、阪神としては甲子園球場という地の利をどう生かすかも重要になる。
「10月の甲子園は寒さもあり、コンディション調整が難しい。また、この時期は左打者に不利な浜風の風向きが変わるので、佐藤輝にとってプラス材料です。
いずれにせよ、両チームとも野球がしっかりしていて、投手陣や守備のレベルが高く、大崩れしない。緊張感のあるハイレベルな試合が展開されそうです」
文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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