体力重視の“申ジエメソッド”が金澤志奈を初優勝に導いた? 「自分の身体とどう付き合っていくか」
<ソニー 日本女子プロ選手権 最終日◇14日◇大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)◇6840ヤード・パー72>
金澤志奈が女子プロゴルファーNo.1決定戦のメジャー大会で、悲願のツアー初優勝を果たした。そして中学3年生頃から師事する、日本ツアー1勝の金愛淑(キム・エイスク)、そしてキムを通して慕う存在となった申ジエ(韓国)に、涙ながらに感謝の言葉を伝えた。
金澤とジエは15年ほどの仲だ。ここ3年ほどは、オフにオーストラリアで合宿を組み、「真横で、朝暗いときから夜暗いときまで」練習に励み、一緒に過ごす時間も長くなった。持ち味とする小技は、「ジエさんのたくさんの引き出しのなかから盗み見て得るものが多くあります」とさらに磨きがかかった。
3日目の最終18番。グリーン左のバンカーから、ラフを越えたカラーのギリギリに落とし、パーを拾った。これには3年前からタッグを組み、今年は“ほぼ”バッグを担いでいる潟手陽介キャディも絶賛。「(合宿の)練習量が本番に生かされたような感じがしました。グリーンを外れても、いろんなバリエーションのアプローチを持っていて、キャリーとランのイメージがよく湧いていました」と目を見張っていた。
だが、元世界ランキング1位のジエに『どのようなアドバイスをしているのか?』と聞くと、最近は、「志奈が頑張っているからです。前はこっちはこれ、あっちはあれ、と聞いてきたけれど、自分で選択して、責任の重さも分かるようになってきた。私はコーチではないから、いろんな選択肢をあげて、考えが広くなるようにしてあげます」と、師弟の関係性の変化を明かしていた。
この数年間、金澤がジエに最も教わっていることは「体の強化」と話す。「いままでもトレーニングはしてきたけれど、この3年は特に体力づくり、筋力に取り組んできました」。そしてジエも、この体の管理の大事さを説く。
「どこで力を抜いて、どこで力を入れるのか。シーズン中に(休みを)決めるのは、もう疲れているからそのときには遅い。好きなコース、好きな試合に出ていると、(1年間)ずっとツアーに出てしまう。ゴルフはシーズンもプレー時間も長いからスケジューリングも大事です。自分の身体とどう付き合っていくかを決めて管理したほうがいいということを、相談しています」
ジエは海外メジャーに参戦するときはその前後の週の試合をスキップするなど、身体に負担がかからないようにスケジュールを組んでいる。昨年の日本ツアー出場試合数は16試合だった。金澤も昨年、全37試合のうち出場したのは31試合のみ。今年もここまで25試合のうち出場は22試合と、定期的な“お休み”を取っている。これもメリハリだ。
金澤自身も、好調な理由に「体力面」を挙げる。「いままでの優勝争いは最終日に伸ばせないとか、スタートダッシュはいいけど失速で終わってしまうのがほとんどだった。今年はそれがなく、最後まで優勝争いに絡めて、こうやって優勝することができました」。選手権の前週にはすでに、シーズンオフの合宿のスケジュールを立て、来季の予定について話し合いを始めている。悲願達成のラストピースは心技体の“体”だったのかもしれない。(文・笠井あかり)
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