崎陽軒の野並 晃社長にシュウマイ潤が"シュウマイ愛"を聞く!「シウマイは崎陽軒だけが正解とは思っていません」(前編)【みんなが知らない、シュウマイの実力】
崎陽軒の野並社長(右)と日本シュウマイ協会会長のシュウマイ潤(左)
これまで"シュウマイ愛"を、さまざまなテーマと切り口で伝えてきたシュウマイ研究家のシュウマイ潤だが、その一方で気になるのが他の人の「シュウマイ愛」――。
シュウマイを生業とする企業のトップや開発者は、その人なりの"シュウマイ愛"を持っているのではないか? また、各著名人のなかにも実は"シュウマイ愛"に溢れる人もいるのではないか? その愛を知ることで、シュウマイの新たな実力や可能性が見出せるのではないか?
ということで今回は、誰しもが日本のシュウマイ(シウマイ)企業の王者と認める、崎陽軒の四代目社長・野並 晃(のなみ・あきら)氏に話を聞いた!
※崎陽軒では「シュウマイ」を「シウマイ」と表記する。
* * *
シュウマイ潤(以下、潤) いつもシウマイ弁当を始め、新幹線の移動中などで大変お世話になっております!
実はこの「週プレNEWS」では、2018年に三代目社長であり現会長の野並直文(のなみ・なおぶみ)さんにお話を伺いました。その当時は、まだ私も研究を本格化したばかりでしたが、その後は日本シュウマイ協会を作ることが出来て、崎陽軒を含め、シュウマイ業界に少しは貢献できるようになったのではと思っています。
野並社長(以下、野並) こちらこそ、いつもお世話になっています。さまざまなメディアやイベントなどで、弊社のシウマイについて語っていただき感謝しています。
潤 こうして二代にわたって崎陽軒の社長にお話を聞くことは、シュウマイを愛するものとしてこれ以上ない栄誉です! 今日は皆さんに、もっとシュウマイ愛を強めてもらうべく、様々な方にシュウマイ愛を語っていただこうと思うなか、崎陽軒さんを外すわけにはいきませんので、お声がけさせて頂きました。
早速ですが創業117年、シウマイ誕生から97年ですので、創業100年を超えるシウマイの老舗の息子として生まれましたが、家庭でも"シウマイ学"を叩き込まれたのですか?
野並 いや、これが驚くほど家庭ではシウマイを食べた記憶が薄くて(笑)。むしろ記憶にあるのは、手巻き寿司の甘エビですね。でも、シウマイを始めさまざまな惣菜を作り、お客さまにお届けする崎陽軒という企業で働く上では、好き嫌いなく育ったことは非常にありがたいことでした。それこそ、シウマイが嫌いに育ったら、まさに地獄ですから(笑)。
父(野並会長)からは、崎陽軒を継いで欲しいと言われたことは一度もありません。私自身、高校時代に「組織のトップとして生きていきたい」と思ったんです。と言っても、中学時代にサッカー部でキャプテンを務めたぐらいで、なぜトップになりたいと思ったかは理由が漠然としているのですが。
とはいえ、トップを務めたいのであれば、家族で事業をやっている環境を生かしてトップになろうと思い、会社を継ごうと思いました。
潤 大学では経営学を学び、その後、キリンビールに入社されましたね。
野並 正直、大学では勉強以外、サッカー漬けの日々でした(苦笑)。そんな中で就職を考える時期に、サッカー部のOBが食品関係に就職した影響で関心を持ち、業界の研究をしていたところ、父から「キリンビールに興味はあるか?」と言われ、入社試験を受けました。
キリンビールは崎陽軒と同じ横浜創業で食を作る会社であり、創業時期も同時期(崎陽軒は1908年、キリンビールは1907年)ということで共通項も多く、崎陽軒という企業にも近い部分があるので、まずは外で組織を学ぼうと思いました。
潤 3年間勤務されましたが、崎陽軒での仕事に役立ちましたか?
野並 キリンビール時代でもっとも印象に残っているのは、人間関係でしたね。上司と部下、先輩と後輩そして同期と、企業という組織が動く時、どのような人間関係が必要なのかを学びました。
また、キリンビールという世界的規模の企業と、神奈川県の地域密着企業の崎陽軒とでは、組織の動き方が違うことも実感しました。
社長になってみて分かりましたが、社員と社長との距離が違い、どちらがいいということではなく、組織の意思決定および会社としての動き方が異なることを経験できたことは、非常に貴重な体験でした。
潤 入社してシウマイ愛は強まりましたか?
野並 それよりも、崎陽軒の商品を購入して下さるお客さまの愛の強さを痛感させられました。そうしたお客さまの思いに感謝し、期待に応えることが第一だと、入社して18年経った今も感じております。
潤 なぜそんなに崎陽軒のシウマイは愛されると思いますか?
野並 ......言葉にするのは難しいですね。ただそれは、生まれた背景の影響は大きいのではないでしょうか。
横浜の新たな名物を作りたいという思いと、地元の方に愛され続けるものを作りたいという思いが合わさり、崎陽軒のシウマイは完成したわけですが、地元の方はもちろん、名物として横浜の外にいる方からも愛されているのは、当時の思いを変わらず今につなげてきてくれた、先人たちの積み重ねによるところが大きいと思います。
潤 「昔ながらのシウマイ」は、2028年で生誕100周年を迎えますが、100年間、今も変わらず同じレシピで出し続けているメーカーや飲食店は、私の記憶でも崎陽軒以外ありません。その積み重ねによる崎陽軒ファンのシウマイ愛の強さは、さまざまなシュウマイを食べる私が浮気者に感じるほどです(笑)。
野並 そんなことはありませんが(笑)。私自身、シウマイは崎陽軒だけが正解とは思っていません。シュウマイにとどまらず、日本全国にはさまざまな美味しいものがあり、それらを楽しめることが日本の食文化の素晴らしさだと思います。
シュウマイも然り、さまざまな個性と質のシュウマイがある中に、崎陽軒のシウマイが存在できていることが大切だと思います。
潤 まさに昨今、社会に求められる多様性をシュウマイからも感じられるお言葉です!
◆後編に続く
シュウマイ潤が考案した「シュウマイポーズ」をする野並社長
●野並 晃(のなみ・あきら)
株式会社 崎陽軒 代表取締役社長。1981年8月30日生まれ、神奈川県横浜市出身。2004年、慶應義塾大学経済学部卒後、キリンビール株式会社に入社。3年間の勤務を経て、2007年に株式会社 崎陽軒へ入社。2011年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。2012年に同社取締役、2014年に常務取締役、2016年に専務取締役、2022年より現職へ。
公式X【@ KiyokenOfficial】
公式YouTubeチャンネル『シウマイの崎陽軒』
その他の詳細は、崎陽軒公式サイトにて。
取材・文/シュウマイ潤 撮影/五十嵐和博
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。