フェアウェイウッドはスチール、アイアンはカーボン 池村寛世が貫く“異端”セッティング【春のクラブチェック】
オフシーズンを通して試行錯誤を重ねた結果、クラブセッティングに変化が見られる選手も多い。かつてはドライバー1本のみ、昨年の開幕戦ではウェッジ5本体制という“奇策”を披露した池村寛世。今年も様々な変更を加えた14本をバッグに詰め込んできた。
“直ドラ”の名手として知られる池村は、かつてキャディバッグにフェアウェイウッドを入れず、ドライバー1本のみでプレーしていた。その下は、2番のアイアン型ユーティリティをよく使用。3番ウッドの距離は直ドラでカバーしていた。ティショットで距離を抑えたいときや、左に行かせたくない場面でも、ティアップせずにドライバーで打っていた。
しかし、近年はフェアウェイウッドを数本入れるなど、セッティングは大きく変化している。今年は、1番ウッド、3番ウッド、7番ウッド、その下が5番アイアンという流れに落ち着いた。ウッドは、かつて契約していたテーラーメイド、昨年はキャロウェイを使用することが多かったが、開幕戦では地クラブメーカー、バルドの『GT2』を投入してきた。
ヘッド体積は460ccながらディープフェースで、いかにもロースピンな球が出そうな形状。同メーカーを使用する男子プロはツアーで見かけないが、なぜこのヘッドにたどり着いたのか。
実は池村の私物ではなく、コーチの櫻井省吾氏のもの。櫻井氏は池村のスイングを見て「カットスイング系なので。今のヘッドはシャローで重心が後ろだから開きやすい」と分析し、流行とは異なるディープ目なヘッドを提案した。「イメージした球が出てくれる」(池村)とヘッドとの相性は良く、さらに若干“被り気味”のフェースアングルも池村に安心感をもたらしている。当然、伝家の宝刀・直ドラも打ちやすくなる。
3番ウッドはキャロウェイの『PARADYM Ai SMOKE ♦♦♦ T』。こちらも小ぶりなディープフェースが特徴のモデル。7番ウッドは長らくテーラーメイドの『ステルス2』を使用しているが、注目すべきはともにスチールシャフトを装着している点だ。ドライバーとアイアンはカーボンシャフトだが、この2本だけが異なる。
昨年もこのスチールシャフトが入った7番ウッドはスタメン入りしており、最も自信を持って振れるクラブとなっている。その流れで3番ウッドも探していたが、「出玉が低く出てくれないとか、(フェースに)乗ってくれる感じが無い。じゃあスチールを入れるか」と考え、3番ウッドにもスチールシャフトを挿した。
ウッド2本だけスチールだが「全部を合わせるというより、1本ずつ打って良ければそのまま行く」と、池村にとってこの流れに違和感は無い。さらに、硬いシャフトが好みではない池村にとって、しなりを感じられるこのスチールシャフトは非常にフィットしているという。
一方、アイアンのシャフトは三菱の『ディアマナ Thump i105 S』で、こちらはカーボンシャフト。こちらも、しなりを感じたいという意図で選択しており「クラブが短い分、どうしても硬さを感じてしまうのでSにしている」とのこと。ただし、今後は重いシャフトに変更し、さらなる“しなり”を求めたいとも話す。
アイアンのヘッドには「打感が柔らかいのが好き」という理由から、キャロウェイ『X FORGED』のノーメッキ仕様を選択。ウェッジだけノーメッキにする選手は珍しくないが、アイアン全体をノーメッキにするケースはほとんど見られない。そのため、バッグに並ぶヘッドの存在感はひときわ目を引く。
シャフトの“しなり”に一貫してこだわる池村だが、かつてはグラファイトデザインの『ツアーAD クアトロテック』やフジクラの『ベンタス RED』など、先調子のシャフトを好んでいた。
しかし、櫻井コーチの指導のもと、「『先調子は合わない』っていうことで全部元調子になりました」と、一昨年の「ダンロップフェニックス」からセッティングにおける大改革を断行。スイングのタイミングはシャフトのしなりで取っていたが、元調子でもその感覚は変わらず、今ではこのセッティングになじんできているという。
最後に、パターは黒いヘッドに鮮やかな蛍光イエローの差し色が入ったテーラーメイドの『スパイダー ツアーX』。「黄色にしたら見やすいかも」と、アライメントの取りやすさを意識した結果、このカラーにカスタムをした。スコッティ・シェフラー(米国)も使用しているクランクネック仕様も注目すべき点だ。
ドライバー1本だったセッティングから、今ではウッド3本体制へ。シャフトの変更を含め、様々な工夫を重ねる池村。その背景には、理想の1本にたどり着くまでの柔軟な発想と探究心がうかがえる。(文・齊藤啓介)
【池村寛世のクラブセッティング】
1W:バルド GT2(ディアマナ プロトタイプ)
4W:キャロウェイ PARADYM Ai SMOKE ♦♦♦ T(モーダスプロトタイプ TX)
7W:テーラーメイド ステルス2(モーダスプロトタイプ TX)
5~PW:キャロウェイ X FORGED(ディアマナ Thump i105 S)
50、54、58°:キャロウェイ JAWS LAW(DG EX ツアーイシュー)
60°(61°):タイトリスト ウェッジワークス(DG EX ツアーイシュー)
PT:テーラーメイド スパイダー ツアーX
BALL:タイトリスト プロV1
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