ラスベガスでのエキサイティングな試合を制した井上尚弥。世界戦の連続KO記録を11に延ばし、9月に国内でのビッグマッチを明言!【Lemino BOXING】

ボクシング・スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が4日(日本時間5日)、米ラスベガスのT-モバイル・アリーナで防衛戦に臨み、挑戦者のWBA同級2位ラモン・カルデナス(米)に8回45秒TKO勝ち。4団体王座のベルトを守った。これで通算戦績を30戦全勝とした井上は、世界戦11戦連続のKO勝利。さらに世界戦でのKO勝利数を23とし、歴代最多記録を樹立した。
“モンスター”の4年ぶりとなるアメリカでのファイトは、ダウンあり、打撃戦ありの実にエキサイティングな試合になった。
井上の動きはスタートから悪くなかった。ジャブを突き、足を使いながらカルデナスの出方をうかがい、機を見て連打を繰り出すと早くも大歓声が沸き起こる。モンスターのKOショーが見たい──。井上はそんな観客の期待を十分に意識しながらも、慎重なスタートを切ったように見えた。
サプライズが起きたのは2回だった。井上がピッチを上げてハードパンチを繰り出し、KO勝利への道筋を作り始めた。そう感じたラウンド終盤、カルデナスが井上の左フックをかわし、そのまま下を向きながら左フックを放つと、これを食らった井上がダウンしたのである。
会場はバケツをひっくり返したかのような大騒ぎだ。井上が少し驚いた表情を見せ、ゆっくりと立ち上がった。ラウンド終了までは残り5秒。井上はゴングに救われる形でこのラウンドを終えた。
ここからは実にスリリングなシーンがリング上で展開された。井上はダウン直後の3回、ディフェンス重視のスタイルを取らず、あくまで強気に攻めていく。右ストレート、左フックをバシバシと繰り出す。挑戦者はしっかりガードを固めて、井上の打ち終わりを狙って得意の左フック、右ストレートをフルスイングだ。井上はわずかな間合いでこれをかわすが、ダウンもあって手に汗握る攻防となった。
4回、井上は左ボディブローも交えてカルデナスを攻める。ジャブを突いて間合いを取ったり、ジャブから一気に連打につなげたりと攻撃が幅広い。カルデナスもカウンターを思い切り振り抜き、中盤もエキサイティングな展開が続いた。
徐々にペースを引き寄せた井上は6回にワンツーを決めてカルデナスを追い込むと、怒涛のラッシュで会場を沸かせる。カルデナスもガッツを見せて手を出し、井上と堂々と渡り合う。7回には左フック、左ボディで井上をたじろかせた。
それでも最終的には「この試合はKO勝ちしなければいけないと思っている」という井上の志が勝負を決めた。7回にパンチを食らったあと、ワンツーを決め返し、さらに右で畳み掛けるとカルデナスがついにダウン。8回、弱ったカルデナスをロープに押し込み、連打を浴びせたところで主審が試合を止めた。
試合後の勝利者インタビューで井上は「今日の試合を見て、僕が殴り合いが好きだと証明できたと思う。楽しかったです」と笑顔で答えた。カルデナスについては「映像で見た印象よりも強い選手。一番すごいと感じたのは対策をしてきたところ。映像と全く違った」と挑戦者を称えた。
世界タイトル初挑戦で敗れたカルデナスは「井上はいいタイミングを持っているが、手が下がる瞬間があるのでそこを狙った」と戦術の一端を明かした。井上からダウンを奪い、果敢に打ち合ったことで株は大いに上がったことだろう。
ラスベガスのビッグマッチを大いに盛り上げて終えた井上は、リング上から9月にWBA暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と対戦すると明言した。12月にWBAフェザー級王者ニック・ボール(英)と対戦する予定で、アメリカの記者から「中谷潤人とはいつ対戦するのか」と問われると、「来年の5月です」とこちらも明確に答えた。
文=渋谷淳
【制作・編集:Blue Star Productions】
記事提供元:Lemino ニュース
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