「優勝しちゃった!」 早大卒・稲垣那奈子が東京六大学出身者初のツアー優勝
<リゾートトラストレディス 最終日◇1日◇グランディ鳴門ゴルフクラブ36(徳島県)◇6585ヤード・パー72>
2023年のプロテストに合格し、QTランク47位で今季がツアー本格参戦1年目となった稲垣那奈子が初優勝を果たした。
青木瀬令奈、三ヶ島かなとともに首位で並んで迎えた、自身初の最終日最終組。2つ前の組には、2週前に通算3勝目を挙げた神谷そらもいた。今季は前週まで4試合に出て、予選通過は1度しかない。過去最高は昨年の「ゴルフ5レディス」、今年4月の「富士フイルム・スタジオアリス」の14位。経験、実績で判断すれば、どうみても分は悪かった。だが、勝った。しかも、4日間で初めてオーバーパーとなる「73」を打ちながらの逃げ切りだ。
2打リードで迎えた最終18番。ピン手前14メートルからバーディパットを打つときに、初めて順位を確認した。3パットでも優勝できる。「ちょっと安心して、しっかり打つことができた」。心がけたのは段の上に切られたカップをオーバーさせること。そして2メートルオーバーさせ、そこから2パットのボギーで決めた。
ツアー14試合目での初優勝。優勝争い自体も初めてだった24歳は、「うわっ! 優勝しちゃった!」と表情を緩ませ、グリーン脇で見守ってくれた幼なじみの山口すず夏、プロテスト合格同期の高木優奈らの祝福に涙がこぼれた。
「実感がありません。でも、毎週練習ラウンドをしていただいた渡邉彩香さん、高木優奈ちゃん、ずっとゴルフを一緒にやって来た山口すず夏の顔を見たら、うるっときました」
高校からプロの道に進むのが、昔も今も国内女子ゴルフの主流だ。10歳からゴルフを始めた稲垣も、「そのとき(高校)からプロになりたいと思っていた」。だが、共立女子第二高からの進路は大学だった。しかも、アスリート選抜入試で進んだのは、プロになったOGは中島真弓だけの早稲田大学。母・宣子さんには「プロになるなら早いうちにテストを受けたほうがいいんじゃない」と助言され、迷うこともあったが、自分の意思を貫いた。そして早大卒で初めて、東京六大学でも初となるツアー優勝者となった。
「勉強したいことがあったんです。その気持ちは強かったですね。それに高校3年のときに自分の未熟さを感じた。このままじゃダメだと。頭も、技術も、体力も向上させてからプロテストに挑戦しようと思いました」
今週は、同週開催の海外メジャー「全米女子オープン」に日本ツアーから多くが出場。世界ランキング29位の申ジエ(韓国)、同50位の小祝さくら、同67位の河本結らの実力者たちが参戦し、同ランクは69位の佐久間朱莉が最高だった。その佐久間も今季初の予選落ちを喫した。運も味方にし、重圧をまったく感じさせないプレーで、すいすいと手繰り寄せた初優勝。コンビを組んで2試合目の小畑貴宏キャディは「淡々とプレーする姿が似ている」と、長年バッグを担ぎ10勝をサポートした、通算11勝の小祝さくらを重ねていた。
「(優勝は)早かったなぁと思います。去年は(下部ツアーの)ステップで経験を積んで、今年はレギュラーツアーのルーキーイヤー。後半戦に勝てたらと思っていました。アマチュアのときは全国優勝できるような選手じゃなかったし…。将来は海外ツアーで活躍できる選手になりたい」
アマ時代は2021年の「関東女子学生」が唯一の大きなタイトルだった。それ以来となる、「何倍もうれしい」と笑った2度目の優勝。世界ランキング398位が大きな仕事をやってのけた。(文・臼杵孝志)
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。