米女子今季メジャー初戦の見どころ 日本勢の“勢い”は運? 実力?【石井忍の展望】
海外女子メジャー初戦となる「シェブロン選手権」が現地時間24日から始まる。これまではカリフォルニア州のミッションヒルズCCで行われてきた伝統の一戦は、2023年からザ・クラブatカールトン・ウッズへ舞台を移した。今年は日本勢13人が出場。米女子ツアーの中継を行うWOWOWで解説を行う石井忍が、今大会の展望を語った。
■昨年は世界1位が偉業達成 勝みなみはメジャーで初のトップ10入り
昨年大会では、ネリー・コルダ(米国)が史上3人目となる出場5大会連続Vという偉業を達成。日本勢では、勝みなみが自身メジャー初のトップ10入り(9位)を果たした。
「ネリーは無双状態の真っただ中だった。このシェブロンもあっさり勝ったという印象でしたね。だけど、勝選手が最終日に(順延で)前日回り切れなかった5ホールを回って、18番でイーグル。首位に4打差で最終ラウンドに入った。最終日は2オーバーだったけど、自身初のメジャートップ10入り。これも素晴らしいことです」
■今シーズンの日本勢戦績を振り返る
今シーズンのここまでを振り返ってみると、開幕戦の「ヒルトン・グランドバケーションズ トーナメント・オブ・チャンピオンズ」で竹田麗央が8位。第2戦の「ファウンダーズカップ」では、山下美夢有が4位、勝が7位と開幕から日本勢の活躍が目立っている。
「記憶にも新しいホンダLPGAタイランドでは、岩井明愛選手がエンジェル・イン選手との“殴り合い”とも言えるような優勝争いを見せてくれた。最終日にトーナメントコースレコードとなる『61』で回り、僅差で2位でしたけど、興奮しましたね。竹田選手も9位といい試合でした」
さらに「HSBC女子世界選手権」で古江彩佳が2位、中国の「ブルーベイLPGA」では竹田麗央が「“ぶっちぎり”の圧勝」を見せ、さらに3位に古江、5位に西郷真央、8位に山下・畑岡奈紗とトップ10に日本勢5人が入った。「フォード選手権」では、馬場咲希が6位。「先週のJMイーグルLA選手権では、明愛選手が今年2度目の優勝争いの末に2位に入りました。いつ勝ってもおかしくない。山下選手、畑岡選手もトップ10入りですし、竹田選手、千怜選手、古江選手も含めるとトップ20に6人。メジャー初戦を前に日本の強さを見せています」と振り返る。
■決して“運”ではない。日本勢は世界に通用する“実力”がある
「運の要素ではなくて、確実に安定した実力を身につけていると思います。それはスタッツにも表れている。トータルドライビング(ティショットの総合力)では千怜選手が7位と持ち味を発揮しています。明愛選手は10位で、平均飛距離でも14位(276.61ヤード)にいます。日本のコースよりも長いセッティングの中でも、上位で戦えている要因の一つです」
さらにフェアウェイキープ率では古江が83.42%で3位、パーオン率では竹田が80.77%で5位、リカバリー率では山下が75%で2位。ラウンドあたりの平均パット数では、1位(26回)に馬場、2位タイ(27.83回)に山下、4位(27.88回)に勝、6位(28.19回)に西村と、主要スタッツの上位には必ずと言っていいほど、日本人選手の名前がある。
■注目選手はルーキーの二人
「日本勢は、みんな優勝をガンガン狙っている。“当たれば怖くない”という状態に入っているように感じます。“なでしこ”の意地を見せてくれそうですね。とはいえ、世界の強豪たちもどんどんコンディションを上げてきている。今年6試合に出て、トップ10入りが5回のジーノ・ティティクルもめちゃくちゃ安定しているし、ネリーもいる。海外勢からしたら“望むところだ”という状態だと思う。いい戦いが期待できますね」
日本勢13人の中で、石井がとくに注目しているのはルーキーの竹田と馬場。「竹田選手は今季7試合に出場して、優勝を含めたトップ10入りが3回。さすが、昨季の日本ツアー年間女王ですね。もっと言うと、 米ツアーでは戦い方が変わっているようにも見えます。昨年は日本ツアーで一番飛んでいましたから、アメリカではその飛距離を生かしていくと思っていたけど、そうではない。ドラディスに比べて、パーオン率のほうが上がっている。
新しいスタイルを作ろうとしているような…。変化を感じますね。もともとフェードヒッターだけど、より左のスペースを意識してボールを止めている。優勝したときも、ほとんどの選手が止まらない(グリーン)で苦労している中、切れ味のあるランディングアングル(ボールが地面に着地する角度)で、上から“どすん”と落ちるフェードでグリーンを数多くキャッチしていた。だからこそ鍵はパッティング。スタッツは1ラウンド平均30.46パットで118位。そこがしっかり追いついてくれば、さらに良くなると思います」
馬場は23年に日本のプロテストに合格。昨年は米下部のエプソン・ツアーで戦った。そして、昨年の最終予選会(Qシリーズ)を24位で突破。今季は限られた出場試合の中で結果を残し、ポイントランキングでは52位につけている。「米ツアーでやってきたことが、実を結んできているように思います。今季は3試合と出場数は少ないけれども、期待ができます」と話した。
■名物の18番は“リスクに強いで賞”の対象ホール
年間を通じてチャレンジングで戦略的、かつリスクを伴うホールでいかに好スコアを積み上げたかを競う『AONリスクリワード・チャレンジ』という賞が、LPGAツアーにはある。毎試合ごとに1ホールが対象となり、該当ホール(3日間か4日間)で記録した好スコア2つが集計され、年間を通して賞を争う。今大会は名物ホールとして有名な右ドッグレッグの18番パー5だ。
ザ・クラブ at カールトン・ウッズは、帝王ジャック・ニクラス(米国)が設計。ニクラスらしいアンジュレーション豊かなグリーン、グリーンサイドのバンカー、さらに効果的に配置された池が特徴だ。
18番はフェアウェイ右側にバンカーがあり、セカンド地点からグリーンまでは左サイドに池が待ち受ける。池のプレッシャーに負けず2オンを狙うか、刻んで3打目勝負か。2オン狙いは左側の池、またはグリーン右横のガードバンカーにはまるリスクをはらむ。『リスクリワード・チャレンジ』を競うにふさわしい難ホールだ。日本勢では、畑岡(6位)、竹田と馬場(8位タイ)がランキング上位につけている。
「上位にいる二人もですし、今年は攻めのゴルフをする日本人選手が多い。18番でどのようなプレーを見せてくれるのか、注目です。ティショットの見た目は右ドッグレッグで、そこから池越えで少し左にドッグレッグしていくような見え方。右のバンカーに入らないように、しっかり距離を出さなければならない。そういう意味では、飛距離の出る岩井姉妹も楽しみです。目が離せない戦いになるでしょう」
▼石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。現在は将来プロになることを目指している25歳以下の女子選手が出場するマイナビ ネクストヒロインゴルフツアー、米国女子ツアーの中継を実施しているWOWOWの解説も行っている。
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