14年前の悪夢から学んだこと マキロイは悲願王手でも冷静「何が起こるか知っている」
<マスターズ 3日目◇12日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇7555ヤード・パー72>
悲願達成に王手をかけた。史上6人目のキャリアグランドスラムを狙うローリー・マキロイ(北アイルランド)が、2打リードで単独首位に立った。
最終組のひとつ前。パトロンの大声援がマキロイに送られた。2番パー5ではグリーン奥からウェッジでフックラインに乗せて、チップイン・イーグルを奪取。出だしからスコアカードに“3”を6つ並べる滑り出し(1イーグル・3バーディ)は、マスターズ史上初だ。
「きのうの午後にプレーを終えてからスタートするまで、とても長く感じた。期待と不安が蓄積されていく。そのなかでこのスタートが切れて素晴らしかった」。いきなりリーダーボードの一番上に名前を載せた。
8番、10番ではボギーを喫したが、リードを守って迎えたアーメンコーナーの11番、12番はそれぞれパーで切り抜けた。「その後はパー5でアドバンテージを取ることだけを考えていた」。13番パー5ではグリーン奥から寄せてバーディ。初日にダブルボギーを喫した15番パー5では、残り205ヤードから2メートルにつけたイーグルパットを決め、力強くこぶしを握った。
メジャー初制覇を目指した2011年大会は、4打リードで最終日を迎えながら、後半は10番のトリプルボギーをきっかけに「43」。最終日「80」の大乱調で15位に終わった。
その後は「全米オープン」(2011年)、「全米プロ」(2012、14年)、「全英オープン」(2014年)と次々にメジャー制覇。キャリアグランドスラムの挑戦権を得てから、10年以上の時が流れた。
当時の最終日を迎えるにあたっての心境については、「全然覚えていないよ。記憶力が弱くて良かった(笑)」と話す一方で、あの“悪夢”はマキロイの脳裏にこべりついている。「18ホールはまだ長い道のり。最終日に何が起こるかは、ほかの誰よりも知っている。たくさんの経験をしてきた。あしたどんな状況になっても、それに対処できるようにしないといけない」。脂がのった35歳に、絶好のチャンスが訪れている。
「自分はかなり勢いのある選手。だからバランスが必要。できる限り勢いに乗りたいし、少しは合理的な考えも持ち合わせないといけない。それはとても微妙なバランスで、ロボットになるのも、生き生きしすぎるのもイヤなんだ」
最終日はマスターズ初制覇かかるブライソン・デシャンボー(米国)との2サム。昨年の全米オープンでは別々の組でV争いを繰り広げ、デシャンボーがタイトルをつかんだ。この日はマキロイにも、デシャンボーにも同じように大声援が送られた。「あしたの最終組は少し騒がしくなりそうだ。ただ落ち着いて、自分の殻に入って、この3日間と同じような姿勢で臨みたい」。
今夜は夕食をとり、途中まで見ていたドラマを楽しむ予定。「携帯はあしたの夜まで見ないようにしよう」。グリーンジャケットに袖を通す自身の姿を、ほんの少しだけ思い描きながら。マキロイは最終決戦への長い夜を過ごす。(文・笠井あかり)
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