「すかいらーくHD」が「資さんうどん」を買収 東京初出店の舞台裏:ガイアの夜明け
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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3月7日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「激変!外食サバイバル」。
外食・フードサービス業界で、企業買収が活発化している。その背景には外食業界に吹き荒れる激しい逆風がある。コロナ禍で落ち込んだ市場規模はいまだ戻らず厳しい状態、その上、食材費や光熱費、人件費など、コスト高に伴う値上げの反動で外食頻度が減少する傾向があり、回復がもたついているという。
この状況でどう生き残るか…。2024年に北九州の人気チェーン店「資さんうどん」を買収した外食大手「すかいらーくHD」、世界最大のサンドイッチチェーン「サブウェイ」の日本法人を完全子会社化した「ワタミ」、大型買収の背景にいったい何があったのか。
その戦略の舞台裏を追った。
【動画】「すかいらーくHD」が「資さんうどん」を買収 東京初出店の舞台裏
ファミレスの雄が「北九州のうどん」を買収…その狙いは?

福岡・北九州市を拠点に約80店舗を展開している「資さんうどん」(売上高約160億円 ※2024年12月期)は、地元のソウルフードとして親しまれてきた。
2月24日に東京発進出となる両国店がオープン。初日は2時間待ちになるほどの大盛況の出発となった。1番人気は「肉ごぼ天うどん」だ。外は柔らか、中はもっちりとしてコシのあるうどんに、サクサクに揚げたごぼうの天ぷらが乗る。自家製だしがじっくり染み込んだおでんや甘くてスパイシーなビーフカレー、年間540万個以上売るぼた餅など、客を飽きさせない100種類以上のメニューが特徴。
1976年に故・大西章資さんが創業。後継者がいなかったこともあり、経営は投資ファンドに移った。

去年、その「資さん」を買収したのが、「ガスト」や「バーミヤン」など20以上のブランド、合わせて3100店以上を運営するファミレスの雄「すかいらーくホールディングス(HD)」。
全国展開を見据え、買収後に送り込んだのが、「資さん」の新たなトップ、崎田晴義会長(元すかいらーくHD取締役)だ。
崎田さんは、「『資さん』は実績がしっかりある。『すかいらーく』の色に染めようとは全く思っていない。お互いのいいところを出し切って、1+1が3とか5にしたい」と話す。
2015年に「すかいらーく」の役員に就任した崎田さんは、谷 真会長の懐刀として“すかいらーく流”を最もよく知る人物。その崎田さんが動き出していた。

この日、食材の管理と一次加工を行う「すかいらーく」のセントラルキッチン(全国に10カ所)では、「資さん」とは異なる調理機器を使い、これまでと同じ味が再現できるのかを試していた。
まず着手したのは、創業当時から親しまれているカレー。微妙な味の違いが生まれやすいため、計測器で味を数値化。崎田さんも「資さん」の幹部と試食する。

6種類のカレーを試食した崎田さんは、「火力の機器の違いが固形物の状態に出ている。申し訳ないけど、今日は合格点を出せない」と評価。ライスにもうどんにも合うカレーだからこそ、味の判断は慎重だ。
実は買収前の去年7月に「資さん」は独自で、東京・神田でテストマーケティングを行っていた。うどんやカツとじ丼などがセットになった九州で890円の「資さんしあわせセット」を、人件費や賃料が高い東京では、1200円で販売。昨今の食材の値上げも想定した上での価格だった。
そんな最中での買収劇…。「資さん」の強みは低価格なだけに、味を守りながら価格も守れるのか、「すかいらーく」にとっても大きな挑戦となる。
「国内だけでなく世界でバイヤーが飛び回っている。かつ、全国10カ所のセントラルキッチンがあるので、現状の価格・コストはまだ見直せる」(崎田さん)。
1月。「すかいらーくHD」本社(東京・武蔵野市)に戻った崎田さんは、「ガスト」などの既存の店舗を「資さん」に変える業態転換について話し合っていた。
グループ内での客の奪い合いが課題だった「すかいらーく」。これを解消するため、「資さん」のような業態転換が可能な“集客力のある有名ブランド”の獲得が必要だった。既存の店舗を「資さん」に転換することで、これまでの客をつなぎ留めつつ、新たな客も狙う。

崎田さんがまず業態転換に選んだのは、和食の「藍屋」。この日、崎田さんは、営業を終えた三郷店(埼玉・三郷市)で次々と改装の指示を出していた。崎田さんはその手腕で、これまでグループ100店舗以上の業態転換を手掛けている。

そんな崎田さんを裏で支える社員がいた、江崎誠さんだ。
「すかいらーく」の強みの一つが、全店舗で均一なサービスを保つためのマニュアル。人手不足の中、調理から接客までアルバイトを即戦力にするため、江崎さんは分かりやすい動画マニュアルを作成している。
2006年に入社した江崎さんは、エリアマネージャーや新店立ち上げの経験を買われ、マニュアル作成を託された一人だ。
去年12月。江崎さんは、オープンを控えた「資さんうどん 八千代店」(千葉・八千代市)でスタッフ研修に参加。地元で愛される「資さん」のノウハウを吸収するため、早速厨房へ。うどんの茹で方やサクサクの食感が評判のごぼ天の揚げ方のコツはどこにあるのか…自分の手で確かめて理解することが、マニュアル作りには欠かせない。

江崎さんは一刻も早くマニュアル化するため、福岡・北九州市へ飛び、「資さん」の味を知り尽くす社員の手を借りることに。「資さん」側の思いもしっかりくみ取り、調理の動画撮影を開始した。
これまで「資さん」で使われていたマニュアルは、手順を示した写真と説明文だけ。現場に任されていた手順を誰でも分かる動画にするため、江崎さんは試行錯誤を続けていた。

2月20日。東京初出店の準備が進む「資さんうどん 両国店」(東京・墨田区)に、江崎さんの姿があった。厨房で新人のアルバイトに見せていたのは、完成したばかりの動画マニュアル。サクサク食感にこだわった海老天の作り方だ。
動画を確認しながら調理したアルバイトの男性は、「最初に見て実際に自分がやって、もう1回見返すことができるのでやりやすい」と話す。
そして迎えた2月24日、両国店のオープン初日。果たして店はうまく回るのか、そして客の反応は――?
コロナ禍で沈んだ居酒屋、社運を賭けたワタミの新たなる挑戦!

去年10月、外食業界に激震が走った。仕掛けたのは居酒屋チェーンの「ワタミ」(売上高823億円 社員1621人)のトップで業界の風雲児・渡邉美樹会長(※邉の字は一点しんにょう)だ。「ワタミ」はサンドイッチチェーン「日本サブウェイ」を買収し、国内で事業展開する権利を獲得した。
アメリカ発の「サブウェイ」は、100カ国以上で約3万7000店を展開する世界最大のサンドイッチチェーン。1992年、東京・赤坂に初上陸し、一時は500近くまで店舗数を増やしたが、近年は約200に減り、低迷していた。
一方の「ワタミ」は、最盛期に600を超える居酒屋を展開した外食大手。しかし、新型コロナの影響を大きく受け、崖っぷちに。居酒屋から寿司や焼き肉への業態転換を進めるが、その道のりは険しく、切り札「サブウェイ」を手に入れて再浮上を狙う。「ワタミ」がファストフード業態に参入するのは初となる。

「ワタミ」渡邉美樹会長の指名で「サブウェイ」の副社長として送り込まれたのが、分部雅さん。20歳の時、居酒屋の「和民」でアルバイトを始め、役員にまでなったたたき上げだ。
現状「サブウェイ」の店は全てフランチャイズのため、分部さんは全店舗を回り、課題を洗い出そうとしていた。

「サブウェイ」では、毎朝店内で4種類のパンを焼き上げている。彩り豊富な30種類の具材と9種類のドレッシングを用意し、野菜を無料で増やせるサービスも。どれも400キロカロリー以下とヘルシーで、価格は430円からだ。
お昼時、分部さんが「サブウェイ 渋谷桜丘店」(東京・渋谷)に行くと、注文を待つ客の行列が。カスタマイズできるのが特徴だが、その分、一人当たりの時間を測ると、注文してから受け取るまで5分近くかかっていた。「どうやって早く提供できるかが課題」(分部さん)。
しかし、午後6時に分部さんが再び店を訪れると、昼間のにぎわいとは一転、客の姿はほとんどない。店のオーナーに聞くと、これが通常で「(夜は)落ち着いてしまう」とのこと。
オーナーから「17時以降のメニューが必要」という提案を受けた分部さんは、「逆にチャンス。もし夜にお客が入れば、プラスオン(上乗せ)になる。まだ伸び代がある」と前を向く。

そんな分部さんが「サブウェイ」の店舗回りと並行して行っている業務が、「ワタミ」が運営する「から揚げの天才」だ。大ぶりのから揚げが特徴で、2018年に1号店を出店。コロナ禍のテイクアウト需要を取り込み、わずか3年で112店舗に急拡大した。その立役者の一人が分部さんだった。
しかし、から揚げブームの終えんとともに赤字に転落。分部さんは、100店舗以上を閉じる苦渋の決断を下す。「失敗したと思っている。急激に店を増やしすぎた。QSC(品質・サービス)が追いつかなかった」。分部さんは、急成長からの急失速を経験していた。

1月。新たな野菜でメニュー開発をしたいと考えていた分部さんは、「サブウェイ」の商品開発の担当者を連れて、「ワタミファーム」(千葉・山武市)へ。「ワタミ」は全国に7カ所の有機農場を持っており、自社の野菜を使えば、品質向上とコストダウンの一石二鳥になる。今回はこれまで使っていなかったニンジンで、夜の集客を狙ったサンドウィッチをつくることに。

試行錯誤の末、完成した「サブウェイ」の新メニュー。この日は、夜の集客を狙ったサンドイッチの試食会が行われた。分部さんはこれまでの「サブウェイ」にはない、斬新なメニューを提案するが、試食した渡邉会長の評価は――。
さらに分部さん、「サブウェイ」3000店という目標に向けて、フランチャイズ・オーナーの新規募集を始めていた。
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記事提供元:テレ東プラス
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