ついにミッキーマウスがホラーに登場! 若者たちを次々と殺戮 『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』
飯塚克味のホラー道 第113回『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』

またまたやって来た、みんな大好き著作権切れキャラの新作。『プー あくまのくまさん』シリーズ(2023~)、『メリーおばさんのひつじ』(2023)、『シン・デレラ』(2024)など、気づいたら結構なムーブメントになっていて、もう笑うしかないジャンルのひとつと言えよう。今回は、とうとう本丸と言うべきか、ついにあのミッキーマウスがターゲットになってしまった。ベースとなるのは2023年で著作権保護期間が切れた『蒸気船ウィリー』(1928)に登場するミッキーマウス。そのため、赤いズボンに黄色のクツというおなじみのスタイルではなく、モノクロをイメージしたキャラになっている。
気になる話はこんな感じだ。バイト先のゲームセンターで、深夜勤務を命じられるアレックス。だがそれは彼女の誕生日を祝う友人のサプライズパーティーだった。だがそこにネズミのマスクをかぶった殺人鬼が現れ、次々と殺戮の嵐が繰り広げられる。そして並行して描かれるのが、豪邸に集まった若者たちがやはりネズミの殺人鬼に襲われていく様子。2つの舞台がどう関係するのか?そして生き残った女性が警察で何を語るのか?思わせぶりな展開が続きを気にさせる。
本作を手がけた勇気あるクリエイターは2人いる。監督、プロデューサー、編集、撮影を担ったジェイミー・ベイリー。そしてプロデューサーと脚本を担当したサイモン・フィリップス。ジェイミー・ベイリーは、テレビ、映画に加え、CMも多く製作してきている。サイモン・フィリップスは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが出演した『UFO 侵略』(2011)などこちらも多くの映画でキャリアを誇る人物だ。二人が作ってきた映画はいずれも通好みのマニア受けする作品ばかりだが、映画への思いは人一倍強い。ゲームセンターに出てくる若者の一人が、『スクリーム』シリーズ(1996~)さながら、「ホラー映画では、こう言うと…」などとおなじみのセリフを放つ場面では、思わずニヤリとしてしまう。

だが、映画の完成度に過度な期待は禁物だ。オープニングのあまりに有名なSF映画のパロディシーンからして、かなり滑っていて、テンションは下がってしまう。オープニングタイトルでは堂々と『蒸気船ウィリー』の映像が使われ、見ているこちらも「大丈夫なの?」と思ってしまうが、悪ノリは止まらず、ゲームセンターの店主が自室のホームシアターでも『蒸気船ウィリー』を上映し、しつこく感じてしまうはずだ。こちらが一息つけるのはやはりゴアシーンが出始めてからだろう。中でも豪邸に暮らす片目の女性が、割れた皿でけがを負い、バスルームで一人、治療をする場面にはとても力が入っている。傷の描写があまりにも痛々しいので、ここから一気にホラー色が強くなってくる。
なぜネズミマスクのミッキーが殺人鬼になったのか?その弱点や特殊能力に関する説明が一切なされないなど、言いたいことは山ほどあるが、来日した監督とプロデューサーが続編を匂わせる発言をしたので、そうした疑問点は続編で明らかにされると信じたい。まずは本作を観て、ラストに首をひねりつつも、ミッキーがこうした形で著作権に怯えることなく使用されたことを祝いたい。
また時を同じくして、『テリファー』シリーズ(2016~)でアート・ザ・クラウンを演じたデヴィッド・ハワード・ソーントンがモンスタータイプのミッキーを演じる『Screamboat(原題)』が公開を控えていることも明らかにされた。こちらの製作は『テリファー』シリーズのスティーヴン・デラ・シャラとマイケル・レヴィが担当。船を舞台にしたパニックホラーのコメディということで、大いに期待したいところだ。著作権切れホラーの増殖はまだまだ止まりそうにない。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
マッド・マウス ~ミッキーとミニー~
2025年3月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ハーク
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記事提供元:映画スクエア
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