日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『サスカッチ・サンセット』をレビュー!
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「人間が猿の格好をして、猿っぽく演技をしているところが見たい」という欲望は、実は映画史と共にある。
その背景には19世紀末から20世紀初頭にかけて欧米を席巻した「未知の動物としてのゴリラ」のブームがあり、1930年に作られ大ヒットした『インガギ』というフェイク・ドキュメンタリー映画の見せ場はまさに「(人間が演じる)ゴリラ的な類人猿」を収めた映像だった。
その後30年代から70年代に至るまで、それぞれ自前で工夫を凝らしたゴリラの着ぐるみをまとった、通称「ハリウッド・ゴリラ・マン」と呼ばれる人々がスクリーンを彩ってきた。
1968年に始まる『猿の惑星』シリーズはその決定版ともいえる存在だが、他にも無数の「人間が演じた猿」映画が作られ続けてきており、本作はまさにその最新形とみなすことができる。
共同監督で、おじいさんサスカッチを演じたネイサン・ゼルナーは特殊メイクを手がけたわけではないがVFXマンでもあり、役者と裏方が交わるところには「ハリウッド・ゴリラ・マン」の伝統が息づいている。
本作はサスカッチしか出てこず、セリフも一切ないのに爆笑に次ぐ爆笑を呼ぶユニークな作品で、改めて「映画」の持つ自由さを感じさせる。
STORY:北米の霧深い森で暮らす4頭のサスカッチ(ビッグフット)。寝床を作り、食料を探し、交尾をするといった営みを繰り返しながら、旅を続けている。しかし、旅はトラブル続き。4頭は果たして生き残れるのか?
製作:アリ・アスター
監督:デヴィッド・ゼルナー&ネイサン・ゼルナー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ライリー・キーオほか
上映時間:88分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
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