"ゆで原画"第35回! 好評発売中『キン肉マン』最新JC87巻をより楽しむために......86巻をベストシーンでおさらい!!
『キン肉マン』最新JC87巻が好評発売中! 前巻86巻からゆでたまご先生が選ぶ名シーンは?
『週刊プレイボーイ』および『週プレNEWS』連載中(毎週月曜発売、および更新)の漫画『キン肉マン』(ゆでたまご作)のジャンプコミックス(以下、JC)各巻の中から、ゆでたまご先生ご自身にお気に入りの原画を選んでご紹介いただくシリーズ企画"ゆで原画"第35回。
ついに動き始めた新勢力・時間超人の主力組"五大刻(ごたいこく)"と、彼らが「旧式」と呼ぶ正義超人、完璧超人ら既存の超人勢力との対抗戦が次々と始まるなか、当代の完璧超人最強クラスの実力者のひとりネメシスが、五大刻の中でもリーダー格と目されるファナティックと激突! そんな『キン肉マン』最新JC87巻が現在、好評発売中!
そんな最新刊をより楽しく読めるようおさらいを兼ねて......その前巻JC86巻から作者・ゆでたまごの両先生に、思い入れの深い漫画原稿1枚をそれぞれ理由も添えて選んでもらった。
まずは原作シナリオ担当・嶋田隆司先生に選んでいただいたページはこの1枚(JC86巻/114ページより)。
シベリアに現れた時間超人の迎撃に向かったウォーズマン、そこは若き日の己が戦闘超人としての修練を積んだ思い出の超人育成秘密機関"狼の部屋"と目の鼻の先という因縁めいた場所だった!? すでにその"狼の部屋"へ突入していた時間超人をウォーズマンは追うが、自身の過去の記録が残る施設内部で素性を隠す必要に迫られた彼は......施設を警護する超人兵士の姿に変装、隠密行動を続行することに!!
――嶋田隆司先生(ゆでたまご・原作シナリオ担当)コメント
「この姿は『キン肉マンⅡ世』で、ウォーズマンがやはり同じく素性を隠すために変装していたクロエという超人のものなんですけど、そのルーツということでここで出しました。
そもそも、クロエというキャラクターはかつて『Ⅱ世』を描いてた頃から自分でも気に入ってて、いつか再利用したい気持ちだけはずっとあったんです。でも、今描いてるスグルたちの世界からすると"未来"に出てくるはずのキャラクターですし、さすがに初代の中で描けるチャンスはないかと再登場自体を半分はあきらめていたんです。
とはいえ、今のシリーズで時間超人という、これも『Ⅱ世』で描いていた設定を盛り込んでいくことになって、『じゃあ、もしかしたらクロエもやり方によっては再登場させられるんじゃないか』と。
そんな中でちょうどいいなと思ったのは『キン肉マン』って、試合を描いていくのがやはり物語のメインではあるんですけど、その幕間(まくあい)の展開......試合以外のところでどうやったら読者に楽しんでもらえるか、驚いてもらえるかというのがいつも悩みどころなんですよね。
そんなタイミングで、思いついたのは僕が大好きなブルース・リーの『燃えよドラゴン』みたいな、ヒーローが敵地に潜入するという展開。その中でウォーズマンが変装するという流れを想像したときに、ちょうどクロエとはなんだったのかというテーマが、うまくはめ込むことができるんじゃないかと。ふと思いついてやってみたら、面白いほどうまくつなげることができました(笑)。長年の大きな課題がひとつクリアできて、自分の中でもようやくほっと安心できたようなシーンでした」
そして作画担当・中井義則先生に選んでいただいたのがこの1枚(JC86巻/122ページより)。
"狼の部屋"の占拠を目的に施設内で大暴れを続ける時間超人"五大刻"ペシミマン。施設を守る超人兵士の姿に変装したウォーズマンは彼の前に飛び出し、その暴挙を止めるべく立ちはだかる。が、他の兵士たちとの圧倒的な実力差を肌で感じたペシミマンは、それまでの無差別な攻撃をいったん停止。特別な力を感じたその超人兵士とリング中央にて1対1で向き合い、一転して超人としての正式な試合を望むような節度ある態度を見せ始めた。
――中井義則先生(ゆでたまご・作画担当)コメント
「これから闘うふたりの超人が、対戦前にどういう思いで相手のことを見ているか、どういう心境で試合場に上がっているか......というのを絵の表現だけで読者に察してもらえるように描くのは、毎回非常に難しいながらも描き甲斐のあるモチーフでして、僕も常に描きながら緊張するところでした。
このふたりに関しては、我ながらかなり満足度の高い形で仕上げられたんじゃないか、ということで今回はここを選ばせてもらいました。
特にペシミマンは、それまで他の相手に対して、軒並み敬意の欠片(かけら)もないガラクタのような扱いをしていたわけで、しかしこの変装ウォーズマンに対してだけはしっかりとその実力、そして超人としてのオーラのようなものを感じ取り、言葉では攻撃的なセリフを吐きながらも、態度としてはどこかリスペクトのようなものを漂(ただよ)わせている。
それに対し変装ウォーズマンも、倒すべき相手だとは理解しつつも、ただの嫌悪感だけではない、超人としての格のようなものを感じ取っていて、そこには礼を尽くしている。
そもそも両者ともに相手への敬意が何もなければ、こういうお互い見つめ合うだけという間は生まれようがないわけで、じゃあこの間はふたりのどういう思いがそこに交錯した結果生じたものなのか。闘うべき敵なんだけど、そこには通じている何かが必ずある。
そういうものが最初にしっかりあるからこそ、『キン肉マン』という作品の大テーマである友情という話にも後でつながってくるのでしょうし、この先、いい試合をしてくれそうだという期待感、まだ見ぬ未来に対してのワクワクした楽しい気持ちをしばらく心に抱きながら、読者にも過ごしてもらうことができる。その出来栄えを最初に大きく決定づけるのはここ次第だというつもりで毎回、原稿に取り組んでます」
正義超人、完璧超人といった地上の既存超人勢力メンバーは、時間超人"五大刻"の侵攻を抑え込むことができるのか!?
その行方を占う重要な一戦、ネメシスVSファナティック戦は大熱戦の展開に!
取材・文/山下貴弘 ©ゆでたまご/集英社
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。