「ふるさと納税」でポイント付与禁止「楽天」「ふるなび」の闘い:ガイアの夜明け
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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12月20日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「ふるさと納税“頂上決戦”!」。
2008年に「税収格差の是正」と「地方創生」を掲げて始まったふるさと納税。その寄付金額は昨年度1兆円を突破し、利用者数も1000万人を超えた。
一方、自治体の返礼品競争は激化し、まさに百花繚乱の様相。今やふるさと納税は“巨大な通販サイト”と化している。
ふるさと納税の現場で何が起きているのか? 国と闘いながら生き残りを賭ける自治体や税収の流出に悩む東京の自治体など、奮闘する人々の姿を追った。
【動画】「ふるさと納税」でポイント付与禁止「楽天」「ふるなび」の闘い
新たな仕掛けで地元に活力を!“除外”自治体 泉佐野市の秘策
ふるさと納税とは、自分が住む場所以外の自治体に寄付をすると、住民税などが控除される制度。寄付額に応じて返礼品を受け取れる。さらに今は、もう1つ大きな特典が。
例えば、ポータルサイト「楽天ふるさと納税」から寄付すると、寄付額100円につき1ポイント以上の「楽天ポイント」を受け取れるのだ。返礼品に加え、ポイントまで…しかしそんなお得な年末は、今年が最後だ。
総務省は「(2025年10月から)ポイントなどを付与するポータルサイトを通じた寄付募集を禁止する」と発表。ふるさとを応援するという本来の主旨から外れ、利用者獲得のための“ポイント競争”が加熱していることを問題視したのだ。今、ふるさと納税の現場は分岐点を迎えている。
大阪・泉佐野市。地元で人気の「焼肉バイキング左近」で客の多くが注文する「泉州元気ハラミ」は、厚切りのハラミを秘伝のタレで漬け込んだ店の看板メニュー。実はこの「泉州元気ハラミ」は、泉佐野市の返礼品でトップの人気を誇る。
他にも、日本唯一のワタリガニ専門店のかに飯や、合計1.45キログラムの「牛たん 暴れ盛り」、全国シェア約4割を誇る泉州タオルなど、人気の返礼品に注文が殺到。昨年度の寄付金額は175億円を突破し、1788の自治体の中で全国3位に輝いている。
数々のユニークな作戦で人気の街へと押し上げた立役者が、泉佐野市役所 成長戦略室長の阪上博則さんだ。
「毎年毎年、総務省が机の上で考えたような規制が発せられるというのは、この取り組みの障害になっている」(阪上さん)。
泉佐野市のふるさと納税は、国のルール変更との知恵比べの歴史でもある。
2019年6月、総務省は「返礼品は寄付金額の3割以下」「地場産品に限る」というルールを導入。地場産品ではない返礼品やAmazonギフト券など過剰な特典を提供した泉佐野市は、総務省から「ふるさと納税の対象にならない」と告示され、制度から除外された。
しかし泉佐野市は、裁判で最高裁まで争い、勝訴。1年後には制度に復帰した。
「一番の課題は、泉佐野市には地場産品資源が多くないということ。新たな返礼品をつくっていかなくてはならない」(阪上さん)。
そこで阪上さんが始めたのが、「#ふるさと納税3.0」という進化版だ。
まずは新たな地場産品づくりに寄付してもらい、完成後に返礼品を受け取る仕組み。
第一弾は、熟成肉を生産する工場の立ち上げに寄付を募り、完成後、そこでつくった商品を返礼品として出すことにした。
11月上旬。阪上さんたち市役所の面々は、市内にある「新興タオル」の工場へ。この工場は、事業に寄付するふるさと納税で、約1億6000万円を調達。その資金で工場の一部を改装して物販スペースを用意、タオルの製造を眺めながらお茶ができるカフェを作った。
泉佐野市は、数少ない地場産品「泉州タオル」の強化も忘れていない。
阪上さんは「これから総務省がどういう風に変更を加えてこようが、泉佐野市は沈まない。信念を持ってやっていきたい」と話す。
県内ダントツの寄付金額!‟富士山の街”を支えるIT企業
総務省から告げられた「ポイント付与禁止」という新たなルール。このルールに強硬に反対したのが、ポイントでシェアを伸ばしてきた最大手「楽天」。撤回の署名運動は、すでに250万人を集め(10月31日現在)、今後も断固反対する姿勢だ。
10月下旬、山梨・富士吉田市で「楽天」が動いていた。市内にある「富士急ハイランド」で始まったのは、富士吉田にまつわるクイズ大会。ふるさと納税で寄付してくれた人と地元の人をつなぐイベントで、全問正解した人は羽毛布団がもらえる。通常、3万円寄付するともらえる返礼品だ。
羽毛布団は富士吉田市の人気返礼品の1つで、他にもシャインマスカット、富士山の湧き水で作る炭酸水やミネラルウォーターなどが人気。昨年度の寄付金額は88億円を超え、富士吉田市は、全国でも14位に入る自治体だ。
地元色を生かした返礼品で人気の街に押し上げた仕掛け人が、「楽天グループ」ふるさと納税事業部の上川駿さん。大学を卒業後、地方銀行に就職した上川さんは、地域の会社と関わる中で疲弊する地方経済の状況を目の当たりにした。そうした問題をITの力で解決したいと、5年前「楽天」に転職した。
11月中旬。上川さんは、富士吉田市 ふるさと創生室部長・萩原美奈枝さんと、「春木屋」を訪ねた。「春木屋」は富士吉田市で50年以上続くお茶の専門店で、去年、道を挟んだ場所に自家焙煎のコーヒーが売りのカフェをオープン。ここでも返礼品を出しており、寄付金額3000円で人気のコーヒー豆が200グラムもらえる。
魅力ある新たな返礼品をつくるのも上川さんの仕事。この日は、「春木屋」の専務・清水洋征さんに、返礼品としてスティック形状の商品が増え始めている、スティックコーヒーを作れないかと提案した。自家焙煎の豆にこだわってきた清水さんにとってスティックコーヒーは予想外の提案だったが、上川さんの意見を取り入れることに。
上川さんは、その後も次々と地元の会社を訪問。「楽天」がこうした取り組みを続けるのは、地域との連携を強めるためだ。ふるさと納税では後発の「楽天」だが、これまでポイントを付与することでシェアを増やしてきた。これが禁止になると、サイト同士の差別化が難しくなると見られている。
しかし上川さんは、この街を盛り上げるべく、次なる一手を打っていた。
税収流出100億円!都市部の逆襲が始まる!
自分が住む場所とは別の自治体へ税金を収める形になる「ふるさと納税」。地方の活性化に役立つ一方で、懸念されているのが都市部の税収の流出だ。
10月31日、樋口高顕千代田区長は会見を開き、「千代田区は、今年の10月からふるさと納税制度の活用を開始した」と発表した。ふるさと納税が始まって16年、初めて返礼品を出すというのだ。
その背景にあるのは、税収の流出。区民が他の自治体に寄付してしまうため、本来入るはずの税金が累計100億円以上失われていた。奪われた財源を取り戻す…都市部の逆襲が始まろうとしていた。
そんな千代田区が真っ先に頼った人物が、ふるさと納税の大手ポータルサイト「ふるなび」を運営している「アイモバイル」執行役員・加藤秀樹さんだ。
農産物などはもとより、地場産品さえ期待できない千代田区。しかし、古くから続く老舗の名店がたくさん集まっており、古書店が並ぶ神保町や昔からの街・神田、御茶ノ水、サブカルの聖地・秋葉原などがあり、多彩な顔を持っている。
区長は、そんな千代田区の特徴を生かした返礼品の開拓を、加藤さんに託した。
「アイモバイル」(東京・渋谷区 年商187億円 従業員219人)はIT企業で、主力の事業が「ふるなび」。ふるさと納税4大ポータルサイトの1つで、掲載自治体数も1442を数える。加藤さんはその事業のリーダーで、広告代理店を経て「アイモバイル」に入社。2014年、「ふるなび」の立ち上げを任されて以来、ふるさと納税の最前線で闘ってきた。
「楽天」の快進撃に危機感を感じ、利用者獲得のため、2021年に始めたのが「ふるなびコイン」だ。返礼品とは別に、寄付金額最大50パーセント分の独自のポイントを付けた。
「ふるなびコイン」は、AmazonやPayPayなどの電子マネーにも交換できる。
しかし、来年10月以降、ポイント付与が禁止されると、「ふるなびコイン」は発行できなくなってしまう。「マーケティングの1つとして我々の武器ではあったので、ショック」と加藤さん。今後は、都市部の返礼品を積極的に取り扱うことで他社と差別化を図ろうとしていた。
この日、加藤さんが向かったのは「日比谷松本楼」(東京・千代田区)。老舗の洋食店で、カレーやオムレツライスと並んで人気なのが、2週間かけて仕込んだデミグラスソースが美味のハンバーグステーキだ。
加藤さんはこの店に「ふるなびトラベル」への参加を提案。自治体に寄付すると、返礼品として寄付金額の3割を「トラベルポイント」としてもらえるというサービスだ。「トラベルポイント」は、旅先の自治体で、飲食店や宿泊施設などの支払い時に利用できる。
人気の飲食店やホテルが多い都市部。加藤さんはこの仕組みが格好の返礼品になると考えた。
本社に戻った加藤さんは、千代田区の返礼品「トラベルポイント」の中身を、さらに魅力あるものにできないか…スタッフを集めて策を練る。老舗ばかりでは利用者に限りがあるため、「千代田区で仕事勤めしている人が普段使いできる店を集めてほしい」と加藤さん。
するとメンバーから、ある提案が。そしてこれらの斬新なアイデアが、とんでもない結果を生み出す――。
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記事提供元:テレ東プラス
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