【精神科医YouTuberに聞く!】孤独は悪?一人でいるのが楽だけど…健康面への影響も
更新日:
イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
注目の旬ニュースを編集部員が発信!「イチオシ」は株式会社オールアバウトが株式会社NTTドコモと共同で開設したレコメンドサイト。毎日トレンド情報をお届けしています。
生活スタイルの変化や年齢を重ねることで、人と会う機会が減り、ふとした瞬間に孤独を感じることはありませんか? 最近では「積極的孤独」として一人の時間を楽しむ人が増えている一方で、孤独がつらいと感じている人も多くいます。孤独とは、果たして悪いことなのでしょうか、それとも味方なのでしょうか。
「早稲田メンタルクリニック」の益田裕介院長に話を伺いました。
【動画】「それぞれの孤独のグルメ」異なる主人公たちが1人気ままに腹を満たす
画像素材:PIXTA
――「孤独」には、『積極的孤独』や『消極的孤独』のように種類があるのでしょうか。
「学術的に明確な分類があるわけではありませんが、大きく分けて2つの捉え方があると思います。1つは『消極的な孤独』で、人との関わりを避け、対人関係が面倒に感じて孤立してしまう状態を指します。もう1つは『積極的な孤独』で、自分の意思で他者と適切な距離を保ち、一人の時間を積極的に楽しむ姿勢です。『積極的な孤独』は、他者から距離を置くためではなく、自分自身と向き合う時間を大切にする前向きな選択として活用されているように思えます。
近年の"ソロ活ブーム"や"お一人様ブーム"は、自分自身と向き合う時間を大切にする、まさに『積極的な孤独』の一例と言えます。一人で過ごす時間は、脳をリラックスさせ、記憶や情報を整理する役割を持つ『デフォルトモードネットワーク』を活性化させます。これは睡眠や瞑想と同様、脳を休めるために欠かせないプロセスです。一人での活動は、日常では得られないリフレッシュ効果をもたらし、むしろ心身の健康や豊かさにつながる大切な時間です」
――孤独は、健康を維持するためにも欠かせないプロセスであると。
「常に誰かと一緒にいると、脳が情報を処理したり、休息したりする余裕を持ちにくく、ストレスが蓄積しやすくなります。特に情報過多な現代社会では、スマホの通知やSNS、職場でのやり取りなどで脳が過剰に刺激を受けてしまい、睡眠だけでは十分な回復が難しいこともあります。そのため、意識的に一人の時間を確保することが重要です。例えば、仕事終わりに公園を散歩したり、カフェで読書を楽しんだりすることで、脳がリラックスし、情報を整理する余裕が生まれます。こうした時間は心身のリフレッシュにつながり、ストレスを和らげる効果があります」
――逆に、完全に孤独でいることは健康に悪影響を及ぼすのでしょうか?
「完全なる孤独は健康に悪影響を与える可能性が高いです。例えば、無人島で一人きりの生活を想像してみてください。食べ物や住居などの物質的な条件が整っていたとしても、長期間他者との関わりがない環境では、精神的に耐えられなくなる人がほとんどです。実際に、YouTubeなどで無人島生活に挑戦する企画を見ると、多くの人が孤独によって心が不安定になる様子が見られます。
人間は社会的な生き物であり、他者との交流によって精神の安定を保っているので、完全な孤独が続く状況では、自己肯定感が低下したり、うつ状態に陥ったりする危険性があるのです」
画像素材:PIXTA
―― 一人暮らしで人とあまり関わらない生活を続けていると、健康に悪影響が出るのでしょうか。
「一人暮らしで引きこもりがちな生活は、精神的に悪影響を及ぼすことがあります。特にコロナ禍以降は、リモートワークで社会的なつながりを持てず、孤独感からうつ病を発症するケースが増えています。例えば、地方から上京した新入社員が、オフィスに通うことなく自宅で一日中パソコンに向かって仕事をしていると、他人との直接的な交流が全くありません。そうすると、自分だけが社会から取り残されているように感じてしまい、心の健康を害するリスクが高まります」
――リモート会議など画面越しのやり取りは、対面の交流と同じ効果を持たないのでしょうか?
「リモートでの会話や会議は確かに便利ですが、対面の交流と同じ効果を得ることは難しいです。人間は、他者と直接顔を合わせることで感情や意図を直感的に読み取り、深い理解を得る生き物です。リモートでのやり取りでは、こうした直感的なコミュニケーションが不足しがちです。
対面での交流がどれほど重要か、完全には解明されていませんが、社会的な生き物である人間にとって、他者と直接関わることは非常に重要です。完全リモートワークの方は、少しでも外に出て人と会話し、交流を持つことが心の健康につながります」
――今、孤独に悩んでいる人はどうしたらいいのでしょうか。
「これは非常に難しい問題で、解決策がまだ見つかっていないのが現状です。現代社会では、“第三の居場所”が失われつつあります。多くの人が仕事と家庭の往復だけの生活を送り、特に独身の方にとっては、会社が唯一の居場所になってしまうケースも少なくありません。
かつては、地元のお祭りや親戚付き合い、町内会といった地域のつながりが、人と人を結ぶ役割を果たしていました。しかし今では、地域の関係が希薄になり、隣に住む人の顔も知らないという状況が当たり前になっていますよね。
さらに、以前は会社の同僚と食事や飲みに行く”飲みニケーション”が一般的でしたが、今ではそのような機会も減り、共通の話題も少なくなりました。昔はみんなが同じテレビ番組を見ていましたが、現在ではそれぞれが興味のあるネット情報を追うようになり、かつて話題の中心だったプロ野球のようなトピックでさえ、共有されることが少なくなっています。その結果、孤独を感じる人が増加しているのです。
解決策の一つとして、趣味を通じたつながりを持つことがおすすめです。例えば、ラーメン好きな仲間と一緒に行列に並ぶ、ボードゲームを楽しむコミュニティーに参加するなど、共通の趣味が人と人を結びつけるきっかけになるでしょう」
――積極的孤独を生活に取り入れる方法や、楽しみ方について教えてください。
「まずは、電車の中でスマホを見ないところから始めてみてはいかがでしょうか。電車を待つ間にスマホを見ず、ただぼーっとするだけでもいいと思います。昔は時間つぶしにウインドーショッピングをしたり、気ままに街を歩いたりして、一人の時間を楽しんでいましたよね。こうした何気ない行動も、脳のデフォルトモードネットワークを活性化させる大切な時間です。
軽い登山や一人での外食などもおすすめです。一人で食事をする際はスマホをカバンの中にしまい、料理が運ばれてくるまでの待ち時間や、食べ終わった後の会計を待つ時間などに、あえてぼーっとする瞬間を作る。そうすることで、自分自身と向き合う余裕が生まれます。スマホに頼らず、自分のペースで物事に向き合う習慣を少しずつ身につけることで、積極的孤独の楽しさを感じられるようになると思います」

【益田裕介 プロフィール】
「早稲田メンタルクリニック」院長。防衛医科大学校を卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神医療センター、医療法人社団薫風会 山田病院などで経験を積む。2018年、「早稲田メンタルクリニック」を開院(東京メトロ 東西線「早稲田駅」より徒歩1分)。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
自身が運営するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」は、登録者数63.5万人を突破(2024年11月時点)。
著書に「まんが 夜のこころの診療所 精神科医がいるスナック」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法」(KADOKAWA)など。

YouTube
X
(取材・文/みやざわあさみ)
●2025年1月10日(金)公開予定! 「劇映画 孤独のグルメ」
「孤独のグルメ」シリーズ、感謝の集大成! 12年間にわたって主人公・井之頭五郎を演じた松重豊が監督・脚本・主演を務め、フランス・韓国・日本の3か国で撮影を敢 行! 主演ももちろん松重で、ワールドワイドに腹を減らしながら、自らメガホンを執る。
「早稲田メンタルクリニック」の益田裕介院長に話を伺いました。
【動画】「それぞれの孤独のグルメ」異なる主人公たちが1人気ままに腹を満たす
一人で過ごすことで脳がリラックスし、記憶や情報が整理される

――「孤独」には、『積極的孤独』や『消極的孤独』のように種類があるのでしょうか。
「学術的に明確な分類があるわけではありませんが、大きく分けて2つの捉え方があると思います。1つは『消極的な孤独』で、人との関わりを避け、対人関係が面倒に感じて孤立してしまう状態を指します。もう1つは『積極的な孤独』で、自分の意思で他者と適切な距離を保ち、一人の時間を積極的に楽しむ姿勢です。『積極的な孤独』は、他者から距離を置くためではなく、自分自身と向き合う時間を大切にする前向きな選択として活用されているように思えます。
近年の"ソロ活ブーム"や"お一人様ブーム"は、自分自身と向き合う時間を大切にする、まさに『積極的な孤独』の一例と言えます。一人で過ごす時間は、脳をリラックスさせ、記憶や情報を整理する役割を持つ『デフォルトモードネットワーク』を活性化させます。これは睡眠や瞑想と同様、脳を休めるために欠かせないプロセスです。一人での活動は、日常では得られないリフレッシュ効果をもたらし、むしろ心身の健康や豊かさにつながる大切な時間です」
――孤独は、健康を維持するためにも欠かせないプロセスであると。
「常に誰かと一緒にいると、脳が情報を処理したり、休息したりする余裕を持ちにくく、ストレスが蓄積しやすくなります。特に情報過多な現代社会では、スマホの通知やSNS、職場でのやり取りなどで脳が過剰に刺激を受けてしまい、睡眠だけでは十分な回復が難しいこともあります。そのため、意識的に一人の時間を確保することが重要です。例えば、仕事終わりに公園を散歩したり、カフェで読書を楽しんだりすることで、脳がリラックスし、情報を整理する余裕が生まれます。こうした時間は心身のリフレッシュにつながり、ストレスを和らげる効果があります」
――逆に、完全に孤独でいることは健康に悪影響を及ぼすのでしょうか?
「完全なる孤独は健康に悪影響を与える可能性が高いです。例えば、無人島で一人きりの生活を想像してみてください。食べ物や住居などの物質的な条件が整っていたとしても、長期間他者との関わりがない環境では、精神的に耐えられなくなる人がほとんどです。実際に、YouTubeなどで無人島生活に挑戦する企画を見ると、多くの人が孤独によって心が不安定になる様子が見られます。
人間は社会的な生き物であり、他者との交流によって精神の安定を保っているので、完全な孤独が続く状況では、自己肯定感が低下したり、うつ状態に陥ったりする危険性があるのです」
リモートでのやり取りだけでは孤独を解消できない?

―― 一人暮らしで人とあまり関わらない生活を続けていると、健康に悪影響が出るのでしょうか。
「一人暮らしで引きこもりがちな生活は、精神的に悪影響を及ぼすことがあります。特にコロナ禍以降は、リモートワークで社会的なつながりを持てず、孤独感からうつ病を発症するケースが増えています。例えば、地方から上京した新入社員が、オフィスに通うことなく自宅で一日中パソコンに向かって仕事をしていると、他人との直接的な交流が全くありません。そうすると、自分だけが社会から取り残されているように感じてしまい、心の健康を害するリスクが高まります」
――リモート会議など画面越しのやり取りは、対面の交流と同じ効果を持たないのでしょうか?
「リモートでの会話や会議は確かに便利ですが、対面の交流と同じ効果を得ることは難しいです。人間は、他者と直接顔を合わせることで感情や意図を直感的に読み取り、深い理解を得る生き物です。リモートでのやり取りでは、こうした直感的なコミュニケーションが不足しがちです。
対面での交流がどれほど重要か、完全には解明されていませんが、社会的な生き物である人間にとって、他者と直接関わることは非常に重要です。完全リモートワークの方は、少しでも外に出て人と会話し、交流を持つことが心の健康につながります」
――今、孤独に悩んでいる人はどうしたらいいのでしょうか。
「これは非常に難しい問題で、解決策がまだ見つかっていないのが現状です。現代社会では、“第三の居場所”が失われつつあります。多くの人が仕事と家庭の往復だけの生活を送り、特に独身の方にとっては、会社が唯一の居場所になってしまうケースも少なくありません。
かつては、地元のお祭りや親戚付き合い、町内会といった地域のつながりが、人と人を結ぶ役割を果たしていました。しかし今では、地域の関係が希薄になり、隣に住む人の顔も知らないという状況が当たり前になっていますよね。
さらに、以前は会社の同僚と食事や飲みに行く”飲みニケーション”が一般的でしたが、今ではそのような機会も減り、共通の話題も少なくなりました。昔はみんなが同じテレビ番組を見ていましたが、現在ではそれぞれが興味のあるネット情報を追うようになり、かつて話題の中心だったプロ野球のようなトピックでさえ、共有されることが少なくなっています。その結果、孤独を感じる人が増加しているのです。
解決策の一つとして、趣味を通じたつながりを持つことがおすすめです。例えば、ラーメン好きな仲間と一緒に行列に並ぶ、ボードゲームを楽しむコミュニティーに参加するなど、共通の趣味が人と人を結びつけるきっかけになるでしょう」
――積極的孤独を生活に取り入れる方法や、楽しみ方について教えてください。
「まずは、電車の中でスマホを見ないところから始めてみてはいかがでしょうか。電車を待つ間にスマホを見ず、ただぼーっとするだけでもいいと思います。昔は時間つぶしにウインドーショッピングをしたり、気ままに街を歩いたりして、一人の時間を楽しんでいましたよね。こうした何気ない行動も、脳のデフォルトモードネットワークを活性化させる大切な時間です。
軽い登山や一人での外食などもおすすめです。一人で食事をする際はスマホをカバンの中にしまい、料理が運ばれてくるまでの待ち時間や、食べ終わった後の会計を待つ時間などに、あえてぼーっとする瞬間を作る。そうすることで、自分自身と向き合う余裕が生まれます。スマホに頼らず、自分のペースで物事に向き合う習慣を少しずつ身につけることで、積極的孤独の楽しさを感じられるようになると思います」

【益田裕介 プロフィール】
「早稲田メンタルクリニック」院長。防衛医科大学校を卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神医療センター、医療法人社団薫風会 山田病院などで経験を積む。2018年、「早稲田メンタルクリニック」を開院(東京メトロ 東西線「早稲田駅」より徒歩1分)。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
自身が運営するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」は、登録者数63.5万人を突破(2024年11月時点)。
著書に「まんが 夜のこころの診療所 精神科医がいるスナック」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法」(KADOKAWA)など。

YouTube
X
(取材・文/みやざわあさみ)
●2025年1月10日(金)公開予定! 「劇映画 孤独のグルメ」
「孤独のグルメ」シリーズ、感謝の集大成! 12年間にわたって主人公・井之頭五郎を演じた松重豊が監督・脚本・主演を務め、フランス・韓国・日本の3か国で撮影を敢 行! 主演ももちろん松重で、ワールドワイドに腹を減らしながら、自らメガホンを執る。
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。