女吸血鬼が経営する売春宿で犠牲者続出! ハイスペックな90年代ホラー 『ボーデロ・オブ・ブラッド』
飯塚克味のホラー道 第105回『ボーデロ・オブ・ブラッド/血まみれの売春宿』
以前、紹介した『デビルゾーン』と同じく、NBCユニバーサルとAmazon.co.jpが企画した「レンタルビデオ 黄金時代が甦る!あなたのリクエストで 初ディスク化」のキャンペーンで、商品化が実現したホラータイトルが本作だ。もっともリアル世代でないと全く探りようがないタイトルだと思うので、きちんと紹介したい。
本作のベースになったのは、全米でテレビのオムニバスホラーが大流行した時代に作られた『ハリウッド・ナイトメア』(1989~1996)だ。プロデューサー陣が豪華で、リチャード・ドナー、ウォルター・ヒル、ロバート・ゼメキス、ジョエル・シルヴァーといった面々が名を連ね、監督もヒット作を手がけた人物が大勢参加した。そんな大作シリーズにも拘わらず、ホラー描写はテレビとは思えないほど強烈で、どれも短編ながら、極めて出来のいいシリーズだった。筆者も当時、LDで出たものを買い集め、よく見直していた。1995年には映画版『デーモン・ナイト』が公開され、スマッシュヒット。そして1996年に作られた映画版第2作が本作だったのだ。ストーリー的なつながりは全くなく、テレビシリーズと同様、クリプトキーパーと呼ばれる不気味なキャラクターが冒頭とエンディングにちょっとした解説をしてくれる。
物語は山奥で復活を遂げた女吸血鬼リリスが経営する売春宿で展開する。売春宿を訪れたカレブと友人が行方不明になってしまい、心配した姉のキャサリンが、私立探偵のレイフ・ガットマンと共に、捜索にあたるというもの。
シンプル極まりない話だが、映画の中身はサービス満点。製作当時は特殊メイクが頂点に達した時代で、更にCGも一部採用されるまでになってきた。こうしたあらゆる技術を駆使して、見せ場が大いに盛り上がるようになっているのだ。冒頭のリリスの復活シーンでもそれは顕著で、逆回転や光学合成などを多用して、ミイラの女性が見事に人の姿に変身していく。復活した彼女が周囲にいた人間を殺しまくる残虐シーンもやりたい放題。冒頭だけでそんな感じなので、本編に入ってからは更にヒートアップし、バイオレンスレベルは現代ではあり得ない描写になっている。また売春宿が舞台になっているので、裸の女性も山のように出てくる。しかもどの女性もハイレベルな美女ばかりなので、驚くばかりだ。
監督を務めたギルバート・アドラーは、テレビシリーズなどで脚本を担当し、前述の『デーモン・ナイト』で監督デビューを果たした。本作の後は主にプロデューサーとして活躍し、『TATARI タタリ』(1999)、『13ゴースト』(2001)、『ゴーストシップ』(2002)の他、『コンスタンティン』(2005)や『ワルキューレ』(2008)のような大作も手掛けている。キャサリンを演じた主演のエリカ・エレニアックはスティーヴン・セガール主演の『沈黙の戦艦』(1992)でケーキから出てくるプレイメイト役が有名。『E.T.』(1982)ではエリオットの同級生役も演じていた。現在でもテレビドラマを中心に女優業を続けている。怪しい神父役には『フライトナイト』(1985)のクリス・サランドン、キャサリンの弟カレブ役は『ロストボーイ』(1987)のコリー・フェルドマン。この2人は、近い年のヴァンパイア映画に出たことから、当然狙ってのキャスティングだろう。このほか、ウーピー・ゴールドバーグもカメオ出演している。
今回、ビデオ以来のソフト化で、初ディスク化となった訳だが、そのクオリティはこのキャンペーンで同時リリースされた6作品の中でも断トツのレベルだった。色は濃厚で、細部まではっきりくっきり。フィルムらしい質感も維持できていて、ブルーレイの画質としては文句のつけようがない。音質も英語音声がdts-HDマスターオーディオ5.1chで収録され、豪快なサラウンドを再現してくれる。ビデオで出ていた日本語吹替版も収録されている。日本では劇場未公開の本作だが、BDでの鑑賞は映画館をしのぐ体験になるはずだ。
実は自分も当時、レンタルビデオで観た世代なのだが、当時はもうこの手のホラー映画が山のように出尽くしていて、それほど特別感は持っていなかった。だが今回、見直してみると、作りの丁寧さ、観客を喜ばせようとあらゆる工夫をしていることが感じ取れ、当時以上に楽しめた。ソフトの価格として4950円は高いと感じるかもしれないが、それに見合った内容になっているので、ぜひ、手元に置いて繰り返し楽しんでもらいたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
【Amazon.co.jp限定】ボーデロ・オブ・ブラッド/血まみれの売春宿
https://amzn.asia/d/f6zUu6w
4,980円(税込)
(C) 1996 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. ALL RIGHTS RESERVED. “TALES FROM THE CRYPT”TM &(C) 1996 TALES FROM THE CRYPT HOLDINGS.
記事提供元:映画スクエア
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