上田桃子は11年間 短く持って打つ、ホース素振りなどで、ひたすら腕の力みをなくした【四の五の言わず振り氣れ】
イチオシスト
2024年でツアーから撤退した上田桃子や今年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。今回は2024年にツアー撤退を表明した上田桃子との練習内容について聞いた。
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上田桃子プロが2024年にツアー撤退を表明しました。2014年から上田プロの専属コーチになって11年。コーチとして、その都度、上田プロに合ったいろんな練習やドリルを考案してきました。今回は上田プロと過ごした11年間を振り返ってみたいと思います。
彼女のゴルフの特徴は、足のエネルギーを、上に効率的に伝え、最終的に腕の振り、ヘッドスピード(HS)に転換するものです。
彼女のゴルフを語るとき、とても興味深い練習風景を紹介しましょう。晩年オフの合宿では、上田プロも若手と一緒に走ります。年を追って若手選手に遅れを取ることも増えた彼女。上田プロがプロデビューした年に生まれた選手もいるのですから、それも無理からぬ話でしょう。
ところが上り坂に差し掛かると、その差は縮まり、長い坂になると抜き去ってしまうこともしばしばでした。それだけ強い下半身は、彼女のゴルフの特徴であり魅力といえます。
シーズン中、ボクたちコーチの仕事は不調の原因、選手が感じる違和感をどう取り除くかがメインになります。そして上田プロの場合、エネルギーの源でもある下半身からスイングを直すことがほとんどでした。
具体的には、背面側でボクが両足を押さえて打たせたり、1本歯の下駄を履かせて振らせたり。また、チューブを振らせたり、状況や不調の度合いによって色んな練習をしたものです。しかし、その目的は下半身の見直しで、そこが不調の原因となる場合がほとんどだったからに他なりません。
そうした練習の中で最も多くやったのが、クラブを短く持ってのショットでした。不調のとき、上田プロがよく口にしたのが「どうしても手に力が入っちゃう」というものでした。それもまた、下半身がしっくりこないために起こる現象であり、手先で振ることが多くなるからです。腕や手の振りは、体の回転についてくるのが理想です。手を振る動きは、不安定な下半身が引き起こすと考えてください。
下半身がしっかりしないと、前傾角と軸が崩れます。それを防止する方法として、クラブを可能な限り短く持って打たせるわけですが、グリップのシャフト側を握らせて打たせました。前傾角を変えず、ボールの近くに立ちます。これをやれば、下半身がドッシリとした感覚が理解できるはずです。
短く持つと飛距離が落ちると考える人も多いでしょう。しかし、例えば8番なら140ヤードと、長く持ったときの距離と変わりません。同じ距離を打てというのではなく、同じ距離が打てるのです。飛ばそうとすれば力みが生まれますが、短く持っても下半身がドッシリすれば、同じ距離が打てるのです。
つまり下半身から伝える全体重・全重心を、効率よくボールに乗せるからに他なりません。それどころかミート率も方向性も良くなり、強いボールが打てるようになります。読者の皆さんも、試してください。これが上田プロと取り組んだ練習の中で、一番思い出の練習です。
飛距離がアドバンテージであることは間違いありません。まして若手が台頭する女子ゴルフ界で、上田プロにとって飛距離は、現役を続けるための生命線のひとつでした。
ボクが専任コーチとなった当時の上田プロの平均飛距離は230ヤードでした。それが2024年は245ヤードまで伸びています。
もちろんそこには、ギアの進化があることも間違いありません。しかしプロ20年目のベテランが、飛距離を伸ばし続けている理由は、それだけでは説明できません。ボクのチームには、上田プロと同じHS43m/sの若い選手がいますが、上田プロの方が15ヤードも遠くに飛ぶのです。同じHSでも、加速するインパクトと減速するインパクトでは、これだけの差が生まれます。
そして、その差を生み出すのもまた、上田プロの鍛え続けた強靭な下半身であったことは言うまでもありません。
最後にボクが上田プロから学んだのは、強い『氣持ち』を持って、一つのことをやり続けることの大切さです。それはゴルファーでなくても同じではないでしょうか。そして、そうした上田プロと出会えたこと、ゴルフを通じて同じ空気を吸えたことを幸せだと思っています。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』906号より抜粋し、加筆・修正しています
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<ゴルフ情報ALBA Net>
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