プロテスト不合格の“苦闘”と友人からの“刺激” 23歳のネクヒロ年間女王が豪州挑戦を決断したワケ【ありなみんの豪州プレーイン・レポート】
イチオシスト
日本のプロテスト合格を目指し、宍戸ヒルズCC(茨城)で研修生をしている“ありなみん”こと、23歳の林亜莉奈(はやし・ありな)。2023年からマイナビネクストヒロインゴルフツアーで戦い、25年には年間2勝を挙げ、自身初の年間女王に輝いた。今年は、オーストラリアツアー(WPGA)のツアーエグゼンプションランキング(QT)44位で出場資格を得て、海外でも戦う。異国の地で何を感じているのか――。新たな挑戦の現場を追う。(取材/構成・高木彩音)
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みなさん、こんにちは! 林亜莉奈です! 友人たちからは、“ありなみん”というあだ名で呼ばれていますので、みなさん覚えてくださったらうれしいです! この度、現地リポートという形で、あまり耳慣れないであろうオーストラリアツアーのリアルや、現地での生活の様子をお伝えしていきたいと思います。
日本は冬ですが、オーストラリアは今がシーズンの真っただ中! すでに第2戦まで終えています。まず今回はWPGAに挑戦することになったキッカケや、それまでにあった出来事などからお話したいと思います。
■WPGAを知ったのは同級生の存在だった
私がこのツアーの存在を初めて知ったのは、昨年の3月。同い年の池羽陽向ちゃんがオーストラリアツアーに挑戦していることを聞きました。私は当時、マイナビの試合を主戦場にしながら、日本のプロテスト、あとはミニツアーでできることを頑張ろう、というくらいの感覚で、陽向ちゃんの話を聞いたときも『そういうのもあるんだ…』というのが、その時の感想。自分がチャレンジする未来は、正直、全く見えていませんでした。
でも4月の「CRÉATION DREAM CUP」(ネクヒロ)で、陽向ちゃんが優勝したんです。その大会は、彼女がオーストラリアから帰ってきてすぐの試合で、私は陽向ちゃんと同組で回りました。会場だった葉山CC(神奈川)はかなりの暴風だったのですが、陽向ちゃんは「オーストラリアのほうが断然、風が強かったから、これくらいは平気」といった感じで、まったく動じていなかったんです。
ラウンド中の会話では、冬場も試合ができていたから、その流れでプレーできている、という話をしていて。それを聞いて、『この冬の2~3カ月で、こんなに差って生まれるんだな』と、そのとき初めて感じました。ただ、まだ自分が『今年の冬は海外へ行こう』と決めていたわけではありません。
2~3カ月の差をすぐに結果として出すのは難しいと思いますし、その差を見つけるのも正直厳しいとは思います。でも、そのとき、陽向ちゃんの生き生きした感じや、ゴルフができていること自体が幸せそうだという空気感がすごく伝わってきて、さらに結果にも表れていて、『ここで差が出るんだな』と痛感したのです。
■これまでだったら諦めていたことに挑戦し、さらに海外で戦いたい気持ちが増した
そこから、考え方も変わってきました。4月15日〜5月13日の期間に世界各地で「全米女子オープン」の予選会が開催されましたが、私は日本会場のエントリーに間に合わなかったのです。その時にコーチである石井忍さんからチームのグループLINEに「海外は空いているぞ」とアナウンスが。当然、経費もかかるので、みんなスタンプで反応するぐらいでしたが、私は『ありかもしれない』と思いました。正直、その瞬間に何を考えていたのか自分でもはっきりと覚えていませんが、『1人で行っちゃおうかな!』と思いついたことは記憶に残ってます。
これまでの私なら、『しょうがないか』『じゃあ日本女子オープンを頑張ろう』くらいで終わっていました。でもそのときは、『チャンスがなくなった』という悔しさがすごく強かった。そして母に「予選会に出るためにアメリカに行きたいんだけど、行ってもいい?」と聞くと、「挑戦したいことは、できる限りやればいいじゃない」と、背中を押してくれました。
ただ、現実的に費用はかかるので、そのあたりの相談や準備は忍さんが中心になってくれて、マネジャーさんにも手伝ってもらい、クラウドファンディングのサイトを立ち上げました。動画を撮って、「挑戦するので応援してください」という形で発信。そこでは、知り合いの方が支援してくださることがほとんどのなか、全く知らない方が「挑戦を応援したい」と支援してくれたことは、今でも強く心に残っています。
また、私をスポンサードしてくださっているシーヒューマンの会長さんが、「ゴルフで考えることがたくさんあるんだから、あまりお金で悩ませたくはない。お金が理由で、諦める方向にはしたくないから、できる範囲のことはするよ」と言ってくださり、後押ししてくれたんです。さらに、この全米予選だけでなく、オーストラリアQTへの出場も応援してくれました。とても恵まれているなと思います。母をはじめ、忍さん、マネジャーさん、スポンサーさん、そしてクラウドファンディングで応援してくれた方々には本当に感謝しかありません。
事前の書類でのエントリーは時差の影響で失敗してしまい、現地に行ってエントリー。こうして5月7日に行われた全米女子オープンの予選会に出場することができました。結果はトップタイで第2ラウンドを迎えたのに(競技は一日に36ホールを実施)、最後に崩してしまい通過はできませんでした。
本当に久しぶりに、心の底から悔しかった。アメリカの会場では、泣いている人なんて誰もいなかったんですが、私はクラブハウスの端っこで一人、号泣してしまいました。サポートしてくれた人がたくさんいて、家族も快く送り出してくれて、その中でチャレンジして通れなかったことが、本当に悔しかったです。
陽向ちゃんは全米女子オープン予選も通過し、本戦へ出場。さらに日本のプロテストにも合格――。同じ場所で戦ってきた仲間だからこそ、「こんなに変わるんだ」というのを強烈に感じました。
■これまでとは違う“悔しさ”が成長へ
全米女子オープン予選会がダメだったので、『次は日本女子オープンと日本のプロテストを頑張ろう』と切り替えました。夏場は自分の中で調子が良かったこともあって、日本女子オープンの予選会は自信もありました。前の年と比べると、可能性はかなり高い、と。それだけに女子オープンの予選会で落ちたときも、ものすごく悔しかったです。
そのあとすぐにプロテストの1次、2次が始まりました。1次はギリギリ通過しましたが、2次は最終日が台風で中止になったんです。私は途中まで耐えてプレーしていましたが、結局、3日目までのスコアで決まり、スコアが足りずに落ちました。崩している選手も多かっただけに、本当に悔しかったです。プロテストは、今までで一番『いけそうだ』という感覚があった。だから2次で落ちたときは、一気に気持ち的に落ちました。
そのあとは、ネクヒロの試合が続いていて、嫌でもゴルフはしましたが、テストが終わってから次の試合まで、クラブをほとんど握っていませんでした。1週間で体重も4〜5キロ落ちて、まさにどん底。『エントリーしている以上、他人に迷惑はかけられない』という気持ちだけで試合には出ていましたが、9月は練習場にもほとんど行かず、試合とプロアマだけに出る、という状態でした。
3パットしても、OBを打っても、何も感じない。バーディを取ってもうれしくない。魂が抜けたような感覚でした。だけど10月の「みちのくコカ・コーラボトリング × OMNIX GOLF プレゼンツ みちのくコカ・コーラレディース」の試合で3パットをしたとき、久しぶりに自分に腹が立ったんです。その瞬間に、悔しいという感情が戻ってきて、『ここが区切り』と思うことができました。
10月からは練習も再開。それまでは、周りの人たちは何も言わずにただただ見守ってくれていました。忍さんもレッスンを入れることはなく、トレーナーさんも「休みたいなら休め」と言ってくれて、急かされることはありませんでした。自分が「やりたい」と思ったタイミングで再スタートできたからこそ、10月からまた前向きに取り組めたと思います。
そんな苦しい時期もありましたが、練習再開後の11月にあった「kintone Golf Tournament」(ネクヒロ)で、6月の「Sky Look up Ladies Cup」に続く2勝目を挙げることができました。本当にうれしかったです。そして、昨年の年間女王になることもできました。苦しみも喜びも噛みしめた一年だったなと思います。
■WPGAのQT初挑戦で出場権を獲得
海外挑戦については、日本の冬場に行われるオーストラリアと台湾の話が出ましたが、日本のシーズン中に行き来する台湾ツアーではなくオーストラリアを選びました。4月に感じた陽向ちゃんの姿がずっと頭に残っていることもあり、『行くならオーストラリアだ』というのも決断した理由です。日本ではオフシーズンに少し気が緩みがちでしたが、その2~3カ月を陽向ちゃんのように濃く過ごしたい。オフのない1年を過ごしてみたいと思い、挑戦を決めました。
12月のWPGAのQTが決まってから、またゴルフが楽しくなりました。目標や目的があると、やっぱり違いますね。苦しいだけでは、いいパフォーマンスはできない。自分は楽しめていないと続かないタイプなんだと、改めて感じました。
そして昨年12月8日のQTで8位に入り、同4位から10位に入賞した選手が該当するカテゴリー6の資格(ツアーエグゼンプションランキング44位)で出場権を獲得することができました! 出られる試合は限られますが、そのなかでいい結果を残せるように頑張ります。
私は、いつ、どんな試合でも勝つことを目標に戦っています。ですが、この新しい挑戦は、私のゴルフ人生において1つでも多く、プラスになる材料を増やしていくためでもあります。結果ももちろんですが、たくさんのことを吸収して頑張りたいです。みなさん応援よろしくお願いします!
<ゴルフ情報ALBA Net>
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