原発事故から13年。福島の“いま”が食卓から浮かび上がる「ロッコク・キッチン」
イチオシスト
ノンフィクション作家の川内有緒と映画監督の三好大輔が共同で監督を務め、東日本大震災による原発事故から13年を経た福島の“いま”を、人々の食卓を軸に描き出したドキュメンタリー「ロッコク・キッチン」が、2月14日(土)よりポレポレ東中野、3月6日(金)よりシモキタ – エキマエ – シネマ『K2』ほか全国で順次公開される。ポスタービジュアルと予告編が到着した。

東京と福島を繋ぐ国道6号線(通称「ロッコク」)を両監督が車で旅し、被災地でツアーを企画するインド人のスワスティカ・ハルシュ・ジャジュさん、〈おれたちの伝承館〉を運営する写真家の中筋純さん、本屋〈読書屋 息つぎ〉を夜だけオープンさせる武内優さんのキッチンを軸に、彼らの日常と人生を描き出す。キッチンに立つ姿、料理の手ざわり、食卓で交わす言葉は、過酷な体験をした土地に育まれた“生活の色”であり、喜びや悲しみの記憶であり、希望の証となる。
また、住民の協力のもとで震災前のホームムービーも挿入。それらは町の再開発により消えつつある“暮らしの記憶”を次世代へ繋いでいく。作品は山形国際ドキュメンタリー映画祭2025でワールドプレミアを迎え、大盛況となった。
なおこのプロジェクトは、川内のノンフィクションエッセイにもなっている。2024年10月に文芸誌『群像』(講談社)で始まった連載は、書籍版『ロッコク・キッチン』にまとめられ、第35回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した。
〈コメント〉
震災から時を経たある日、避難指示が解除されたばかりの暗い町に、たった一軒だけ灯りがもれる家がありました。あの家の人はいま夜ご飯を食べているのだろうか──。それから、「みんな、なに食べて、どう生きてるんだろ?」という問いと共に、ロッコクを駆け抜けてきました。人と人が出会い、一緒に温かいスープを飲む。それは、当たり前に見えて当たり前ではありません。一度全ての光を失ったこの地に来るたびに、人とのつながりの儚さを思い、それでも人生の中で出会えた喜びで胸がいっぱいになります。ぜひ本作を見ていただけたら嬉しいです。
──川内有緒(共同監督)
東日本大震災が起こり世界も自分も変わった。放射能から逃げるように東京から長野に移住したけれど、これでいいのか?という思いがずっと燻っていた。そんな原発事故でさえ、時間が経てば記憶が薄れていく。忘れることは簡単だ。でも忘れたくない。訪れるたびに変化する町で、そこに暮らしている人たちと出会い話をし、ご飯を食べながらカメラをまわし続けた。想像を遥かに超える生き方に心が震えた。あぁ、この人たちのあるがままを伝えたい。共に過ごした時間を忘れないために。
──三好大輔(共同監督)

「ロッコク・キッチン」
監督:川内有緒、三好大輔
音楽:坂口恭平
撮影・録音:三好大輔
編集:川内有緒、三好大輔
スチール:一之瀬ちひろ
アニメーション制作:森下征治、森下豊子
サウンドデザイン:滝野ますみ
ドローン撮影:森下征治
ナレーション:武内優
プロデューサー:渡辺陽一、宮本英実
2025年/日本/122分
©ロッコク・キッチン・プロジェクト
公式サイト:https://rokkokukitchen.com
記事提供元:キネマ旬報WEB
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