村田沙耶香の小説を映画化した「消滅世界」、性のない“楽園”を捉えたシーン解禁
イチオシスト
人工授精での出産が定着し、夫婦の性行為はタブーとなった世界。“両親が愛し合った末に”生まれた雨音(蒔田彩珠)は、母を嫌悪し、夫である朔(栁俊太郎)以外の人やキャラクターと恋愛を重ねていく。だがその“正常”な日々は、性愛のない実験都市・楽園(エデン)への移住で一変する──。
芥川賞作家・村田沙耶香のベストセラー小説を映像ディレクターの川村誠が監督を務めて映画化した「消滅世界」が、11月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国で公開。雨音と朔が初めてエデンを訪れ、管理人(眞島秀和)に案内されていくシーンの映像が、メイキングとともに解禁された。
川村誠監督のコメント
実験都市エデンの造形は、セットを使用せずに全て現実にある建築物を組み合わせて構築するという撮影プランは、企画段階から決めていました。それは、この映画の舞台を、作り物で彩られた絵空事のような超SFの世界ではなく、「明日こんな世界がやってくるかもしれない」そんな現実との地続き感のある異世界にしたいと考えたためです。
近い手法で近未来を表現した「CODE46」や「her」などの映画も頭のどこかにイメージとしてはありましたが、漂白され性の消滅した世界をビジュアル化するために、さまざまな施設、病院、学校、研究所などが候補に上がりました。しかし、限られた撮影日数の中で全てロケ撮影で組み立てるのは、なかなか骨の折れる作業でした。
公園は、最初に主人公がエデンに対して違和感を覚える場所で、作品を象徴する場所になると思っていたため、ビジュアル的にノーマルな公園ではない、その先の世界観を想像させるような場所を演出部・制作部の皆さんと撮影ギリギリまで探しました。
そんな中、元々自分の脳裏にもあったKAIT広場を「公園」にすることを思いつき、建築のコンセプトなどをリサーチするにつれ、この作品に相応しいロケーションであると確信しました。
自然は人間にとって時に大きすぎるので「人間のスケールでつくられた屋内空間に自然を取り入れた」のがこの広場。人間の側から自然をデザインしようとする石上純也さんの建築物に通底する理念が、どこか出産という自然の摂理を人間がコントロールしようとするエデンの世界観に近しい気がしたのも選定理由の一つです。
ここで「子供ちゃん」たちが走り回る姿を見た時、自分のイメージしていたエデンが立ち上がってくる感覚があり、キャストのお三方もロケーションに圧倒されつつ、その空間に没入して撮影ができたのではないかと思います。
物語の後半で、ここが別の用途でも使われることで、この公園の構造上の謎が深まる点にも注目して観ていただければと思います。

©2025「消滅世界」製作委員会
配給:NAKACHIKA PICTURES
芥川賞作家・村田沙耶香による現代人の価値観を揺さぶる衝撃作『消滅世界』実写化 蒔田彩珠 出演情報解禁
原作・村田沙耶香×主演・蒔田彩珠が贈る「消滅世界」 追加キャスト出演情報解禁
記事提供元:キネマ旬報WEB
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