一度食べたらクセになる? ウーバーイーツ配達でも人気の「ママの味」【チャリンコ爆走配達日誌】

これまでに配達したスナックのゴーストレストランを紹介します
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第122回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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最近、配達をしていても商品を受け取る機会が少なくなったゴーストレストラン。そのことについては以前「ウーバーイーツ配達で感じた『ゴーストレストラン』の浮沈」でいろいろ紹介しました。
もちろん規模を拡張している店もありますが、全体としては店の数は減っていると思います。私の実感では深夜0時以降、営業している店が少ない時間帯にたまに料理を受け取りに行くといった感じです。
また、営業形態も変わってきていると感じています。以前は、ビルの中に厨房と料理の受け渡しカウンターだけがある、ゴーストレストラン1本で勝負をする店が多かったのですが、現在はカラオケ店が唐揚げ専門店をやったり、インド料理店がイタリアンを提供したりと、厨房を効率よく使うためにゴーストレストランをやるケースが増えています。スキマバイトのような感覚で、厨房の空いている時間を活用しようということなのでしょう。
そんな空き時間活用タイプのゴーストレストランで深夜、料理を受け取りに行く機会があるのがスナック。厨房だけあるタイプのゴーストレストランかなと思って配達員用のアプリを確認しつつ雑居ビルに入ったら、セット料金が書かれた看板と木製のドアというケースがちらほら出てきました。
そこで、私がこれまでに配達したスナックのゴーストレストランを紹介したいと思います。
初めてスナックへ料理を受け取りに行ったのは、コロナが5類に移行される前の2022年のクリスマス。夕方に中央区の日本橋から配達を始めて、すべての配達依頼を受けていたら、なんだかんだで練馬のハリーポッターの施設があるあたりまで流されてしまった深夜のこと。
「うどん専門店」と書かれた場所へ行くと現れたのは雑居ビル。普通の店はこの時間までやっていないのでゴーストレストランだなとは感じていました。そして、指示されたフロアまで上がると出てきたのは、木製の重厚なドア。「これは受け取る場所を間違えたな」と思ったらドアの片隅に「ウーバーさん、こちらです」と書かれた小さな貼り紙が。
中に入ると、バーカウンターのような長いテーブルには誰もおらず、レジ袋に入ったうどんと思われる商品がたくさん並んでいます。そして袋にはメモ紙が貼られていて、そこに注文番号が記されています。奥で換気扇が回る音がしたので、そちらの方に「すみません。ウーバーです」と声をかけると、向こうから「番号を確認して持っていってください」という女性の声。見ると、店で着る服の上にエプロンを着て三角巾を着用したママと思われる女性が天ぷらを揚げていました。
2024年の秋、板橋区で配達していた際もスナック案件がありました。一度経験しているので、住所に間違いがないことをアプリで確認して木製のドアを開けると、こちらもスナック営業用の服にエプロンをまとったママの姿が。
注文された弁当をすべて作り終わり、イスに座って一息ついていたママにひと声かけてハンバーグ弁当を受け取り、受け渡しの際に聞くと「店でハンバーグを出したらお客さんに好評だったのと、コロナもあったのでウーバーで弁当店をやろうと思った」とのこと。コロナのときは夕方から弁当店を営業されていたそうですが、現在はスナックが終わってから営業しているとのことです。
去年の冬、夕方6時ごろに錦糸町で受け取った料理はペペロンチーノ。配達員用アプリの地図が示す場所からゴーストレストランだというのは想像できたのですが、こんな早い時間からスナック案件があるのは驚きました。しかも料理はパスタです。例によって木製の扉を開けると、カウンターに若い女性が。軽く話を聞くと、ここのスナックのチーママで、ママに許可をもらってお客さんが来る前のこの時間帯にゴーストレストランをやっているとのことでした。
今年に入ってから行ったのが上野のフィリピン料理専門店。「フィリピン料理専門店なんて聞いたことがないな」なんて思いつつ行ってみたら、フィリピン人のママが経営するスナックでした。
アプリで注文の品物を確認すると「シニガン」「ポトブンブン」など、どんな料理なのか想像がつかないものが並んでいたこと、スナックの営業時間中でお客さんがいるのにママがウーバーの料理を作っているところなど、日本の店にはない感覚が印象的でした。
あくまで本業はスナックでウーバーは副業なので、これらの店が現在もゴーストレストランとして営業しているかはわかりませんが、私も機会があればスナックのママさんやチーママさんが作った料理を味わってみたいです。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
記事提供元:週プレNEWS
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