唐沢寿明「カッコ悪くていい、違う人間に見えたら勝ち」“究極の役作り”と“作品愛”
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【役者魂VOL.4】
1980年、弱冠16歳で芸能界へ飛び込み、今年で45年――。NHK朝の連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」(1988年)や大河ドラマ「春日局」(1989年、NHK)で注目を集め、1992年放送の「愛という名のもとに」(フジテレビ)でブレイクした唐沢寿明。
以降も、主演を務めた大河ドラマ「利家とまつ~加賀百万石物語」(2002年、NHK)や代表作の一つとなった「白い巨塔」(2003~2004年、フジテレビ)など、主演作・出演作は枚挙にいとまがない。

そんな唐沢が、ドラマ9「コーチ」(毎週金曜夜9時 ※10月17日の初回は15分拡大)で主演。原作は、元新聞記者ならではのリアリティーある描写でベストセラーを多数生み出している、堂場瞬一の傑作警察小説。
唐沢は、捜査に失敗し、行き詰まり、逃げ出したくなっている若手刑事たち(倉科カナ、犬飼貴丈、関口メンディー、阿久津仁愛)の前に突然現れるコーチ・向井光太郎を演じる。
果たして、どんな役となるのか―――唐沢の胸に秘めたる矜持とは?
【動画】唐沢寿明主演 ドラマ9「コーチ」
「冒頭から、“今までのドラマとは違う”と感じると思います」、そう自信をのぞかせた唐沢。
放送前に公開された役写真は、白髪に白ひげ、長髪のメガネ姿、これまでの唐沢寿明のイメージとは全く違う風貌を見せて人々を驚かせた。
「向井は“一風変わった男”という設定なので、いつもの自分の感じだと若手俳優との差が見えないと思いました。もちろんエンターテインメントなので、そこまでリアリティーは追っていないというか、ちょっと(デフォルメして)作らせていただきました。若手刑事たちとの対比を分かりやすくしようと」
「この風貌を唯一の売りにしているので、インパクトだけで3話くらいは引っ張れるんじゃないでしょうか(笑)」と冗談交じりに話すが、その“こころ”は至ってシンプルだ。
「風貌だけ変えてもダメで、本当に“向井”に見えなきゃ意味がないんですよ。今回のように、地味な役だったら地味なものを身につけなくてはならない。カッコよさを追求してもしょうがないんです。カッコ悪くても見てくださる皆さんの中に喜怒哀楽や感動が起きればそれでいいと思います。作品を見終わった後、“あの作品と同じ俳優が演じていたのに、随分印象が違うな…”と思ってもらえるかどうか。見た目ではなく“違う人間に見えたかどうか”。俳優は、それだけですから」

つまるところ「見た目も中身も役に成りきるしかない」。そうした役作りに対して、「真剣に考えるのは楽しいよ」と、笑顔で語る。
「それが上手くいったか、失敗したかっていうところは気になるけどね。芝居にしても、ここは出過ぎたかなとか、自己主張しすぎたかな…とか。それでも、裏目に出ることはあまりないかな。
何をやっても怒られない世代になってきたので(笑)、自分なりにちゃんと戒めていますよ。今回は、テレ東ということも大きいよね。ゆったりとマイペースにできるからいいなと」
自らの性格を「意外とマイペース。“人は人、自分は自分”」と分析する。
「誰かを気にする、誰かと比較するということがないので、昔からテレ東さんのことが好きなんです。“テレ東だから好き勝手にやれる”って意味じゃないよ!(笑) 向井の中身もそうだけど、ちゃんと計算して、狙いがあってやっていますから。それが上手く出ているかどうかは見てみないと分からないけど、絶対にプラスになると信じて演じています」
2018年10月期に放送した「ハラスメントゲーム」以来、テレ東での主演作は約7年ぶりだ。
「監督とは、脚本もできていない頃からずっと話し合ってきました。手元に台本が届いて、それをそのまま演じることは誰でもできるけれど、そうすることで失敗する可能性もあるわけじゃないですか。自分が携わることで作品が良くなるのであれば、何だってやります。作品が面白ければ見てくれる人もいますし、我々はそれを信じて創っていくだけ。いいものを皆さんに届けるだけですよね」
“俳優重視ではなく作品重視で創る。(主演は)引く時は引く”。唐沢は、俳優生活45年で培った矜持を明かす。
「主演だけが目立つドラマは絶対にヒットしない。いい作品は、周りの俳優がみんな活きているんだよね。その点『コーチ』も、若い俳優の皆さんとの掛け合いはもちろん、毎回主演が変わるような構成になっていて。今までの刑事ドラマとは、少し違うテイストの作品になっていると思います。
決して華々しくはないけれど、毎回大人っぽくていい話ですよ。脚本が命の作品ですから、絶対にハマると思います」
マイペースな性格もあってか、俳優としては「あまり前に出てやるタイプではない」と口にする。
「そういう意味で言うと、僕にとってこのドラマはちょうどいいのかもしれません。(若手俳優陣は)みんな本気でやっていますから。自分も若い時は、どうしていいか分からないことがいっぱいありました。だからこそ、皆さんのそういう姿がすごく微笑ましい。
今の年齢になって、若い世代と一緒に現場で演技に向き合うと、相手の演技が変わっていくのを感じることがあって、それが楽しいんですよね。逆に僕が皆さんに引っ張られることもあります」
▲第1話より、倉科カナと
主演俳優として「それなりのことをきっちりとやる」、ただし「話の中の主人公は彼ら」と話す唐沢。
「僕は僕なりにやるので、若い俳優さんたちが“自分でどうするか”ということ。このチャンスをものにして、人生を思い切り変えてもらいたい。台本を読んで、そのまま現場に来るようではダメなんだよね。誰にでもできるようなことばかり繰り返していたら、何も変わらないから」
厳しい言葉は吐かない。しかし、若手を納得させるために言うべきことははっきりと言って、方向性を示す。「まるで劇中の向井のようですね!」と話を向けてみた。
「僕自身はあまりアドバイスしないけどね。“人は人、自分は自分”なので、じゃあ自分はどうしようかなってことを考えているから。それに、演技のことって人に言われたくないじゃない? 僕も気持ちが分かるから言わないようにしています。演技のどこがダメとかは一切言わない。そこは個性の違いだから。最低限できれば、あとは自分なりにどう役を理解するか――だって、それを考えるのが俳優の醍醐味なんだから」
【役者魂VOL.4】唐沢寿明インタビュー後編は、10月23日(木)正午に公開します。
【唐沢寿明 プロフィール】
1963年6月3日生まれ、東京都出身。1987年、舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』で本格デビュー。俳優として数々のドラマや映画で主演を務め、特に2003~2004年放送のドラマ『白い巨塔』の財前五郎役は代表作の一つ。
また、アニメ映画『トイ・ストーリー』シリーズでは、主人公ウッディの日本語吹替版を担当。映画『ラヂオの時間』で『日本アカデミー賞』優秀主演男優賞を受賞するなど、舞台から映像まで第一線で活躍している。
【第1話】
池袋西署の係長・益山瞳(倉科カナ)は若くして管理職になり、年上の部下を抱えやりづらさを感じていた。そんな中、人事二課から新入りが来るという異例の辞令が。現れたのは冴えない見た目のおじさん、向井光太郎(唐沢寿明)。経歴は謎だらけだが、刑事としては、やけに有能。その捉えどころのなさに瞳は困惑する。彼が配属された理由とは?そんな中、ある一軒家で殺人事件が発生。瞳が現場に駆け付けると既に向井の姿があり…。
(取材・文/橋本達典)
1980年、弱冠16歳で芸能界へ飛び込み、今年で45年――。NHK朝の連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」(1988年)や大河ドラマ「春日局」(1989年、NHK)で注目を集め、1992年放送の「愛という名のもとに」(フジテレビ)でブレイクした唐沢寿明。
以降も、主演を務めた大河ドラマ「利家とまつ~加賀百万石物語」(2002年、NHK)や代表作の一つとなった「白い巨塔」(2003~2004年、フジテレビ)など、主演作・出演作は枚挙にいとまがない。

そんな唐沢が、ドラマ9「コーチ」(毎週金曜夜9時 ※10月17日の初回は15分拡大)で主演。原作は、元新聞記者ならではのリアリティーある描写でベストセラーを多数生み出している、堂場瞬一の傑作警察小説。
唐沢は、捜査に失敗し、行き詰まり、逃げ出したくなっている若手刑事たち(倉科カナ、犬飼貴丈、関口メンディー、阿久津仁愛)の前に突然現れるコーチ・向井光太郎を演じる。
果たして、どんな役となるのか―――唐沢の胸に秘めたる矜持とは?
【動画】唐沢寿明主演 ドラマ9「コーチ」
「俳優の仕事」と「究極の役作り」
「冒頭から、“今までのドラマとは違う”と感じると思います」、そう自信をのぞかせた唐沢。
放送前に公開された役写真は、白髪に白ひげ、長髪のメガネ姿、これまでの唐沢寿明のイメージとは全く違う風貌を見せて人々を驚かせた。
「向井は“一風変わった男”という設定なので、いつもの自分の感じだと若手俳優との差が見えないと思いました。もちろんエンターテインメントなので、そこまでリアリティーは追っていないというか、ちょっと(デフォルメして)作らせていただきました。若手刑事たちとの対比を分かりやすくしようと」
「この風貌を唯一の売りにしているので、インパクトだけで3話くらいは引っ張れるんじゃないでしょうか(笑)」と冗談交じりに話すが、その“こころ”は至ってシンプルだ。
「風貌だけ変えてもダメで、本当に“向井”に見えなきゃ意味がないんですよ。今回のように、地味な役だったら地味なものを身につけなくてはならない。カッコよさを追求してもしょうがないんです。カッコ悪くても見てくださる皆さんの中に喜怒哀楽や感動が起きればそれでいいと思います。作品を見終わった後、“あの作品と同じ俳優が演じていたのに、随分印象が違うな…”と思ってもらえるかどうか。見た目ではなく“違う人間に見えたかどうか”。俳優は、それだけですから」

つまるところ「見た目も中身も役に成りきるしかない」。そうした役作りに対して、「真剣に考えるのは楽しいよ」と、笑顔で語る。
「それが上手くいったか、失敗したかっていうところは気になるけどね。芝居にしても、ここは出過ぎたかなとか、自己主張しすぎたかな…とか。それでも、裏目に出ることはあまりないかな。
何をやっても怒られない世代になってきたので(笑)、自分なりにちゃんと戒めていますよ。今回は、テレ東ということも大きいよね。ゆったりとマイペースにできるからいいなと」
自らの性格を「意外とマイペース。“人は人、自分は自分”」と分析する。
「誰かを気にする、誰かと比較するということがないので、昔からテレ東さんのことが好きなんです。“テレ東だから好き勝手にやれる”って意味じゃないよ!(笑) 向井の中身もそうだけど、ちゃんと計算して、狙いがあってやっていますから。それが上手く出ているかどうかは見てみないと分からないけど、絶対にプラスになると信じて演じています」
主役が輝くのではない、「作品」を面白くするのが俳優の矜持
2018年10月期に放送した「ハラスメントゲーム」以来、テレ東での主演作は約7年ぶりだ。
「監督とは、脚本もできていない頃からずっと話し合ってきました。手元に台本が届いて、それをそのまま演じることは誰でもできるけれど、そうすることで失敗する可能性もあるわけじゃないですか。自分が携わることで作品が良くなるのであれば、何だってやります。作品が面白ければ見てくれる人もいますし、我々はそれを信じて創っていくだけ。いいものを皆さんに届けるだけですよね」
“俳優重視ではなく作品重視で創る。(主演は)引く時は引く”。唐沢は、俳優生活45年で培った矜持を明かす。
「主演だけが目立つドラマは絶対にヒットしない。いい作品は、周りの俳優がみんな活きているんだよね。その点『コーチ』も、若い俳優の皆さんとの掛け合いはもちろん、毎回主演が変わるような構成になっていて。今までの刑事ドラマとは、少し違うテイストの作品になっていると思います。
決して華々しくはないけれど、毎回大人っぽくていい話ですよ。脚本が命の作品ですから、絶対にハマると思います」
マイペースな性格もあってか、俳優としては「あまり前に出てやるタイプではない」と口にする。
「そういう意味で言うと、僕にとってこのドラマはちょうどいいのかもしれません。(若手俳優陣は)みんな本気でやっていますから。自分も若い時は、どうしていいか分からないことがいっぱいありました。だからこそ、皆さんのそういう姿がすごく微笑ましい。
今の年齢になって、若い世代と一緒に現場で演技に向き合うと、相手の演技が変わっていくのを感じることがあって、それが楽しいんですよね。逆に僕が皆さんに引っ張られることもあります」

主演俳優として「それなりのことをきっちりとやる」、ただし「話の中の主人公は彼ら」と話す唐沢。
「僕は僕なりにやるので、若い俳優さんたちが“自分でどうするか”ということ。このチャンスをものにして、人生を思い切り変えてもらいたい。台本を読んで、そのまま現場に来るようではダメなんだよね。誰にでもできるようなことばかり繰り返していたら、何も変わらないから」
厳しい言葉は吐かない。しかし、若手を納得させるために言うべきことははっきりと言って、方向性を示す。「まるで劇中の向井のようですね!」と話を向けてみた。
「僕自身はあまりアドバイスしないけどね。“人は人、自分は自分”なので、じゃあ自分はどうしようかなってことを考えているから。それに、演技のことって人に言われたくないじゃない? 僕も気持ちが分かるから言わないようにしています。演技のどこがダメとかは一切言わない。そこは個性の違いだから。最低限できれば、あとは自分なりにどう役を理解するか――だって、それを考えるのが俳優の醍醐味なんだから」
【役者魂VOL.4】唐沢寿明インタビュー後編は、10月23日(木)正午に公開します。
【唐沢寿明 プロフィール】
1963年6月3日生まれ、東京都出身。1987年、舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』で本格デビュー。俳優として数々のドラマや映画で主演を務め、特に2003~2004年放送のドラマ『白い巨塔』の財前五郎役は代表作の一つ。
また、アニメ映画『トイ・ストーリー』シリーズでは、主人公ウッディの日本語吹替版を担当。映画『ラヂオの時間』で『日本アカデミー賞』優秀主演男優賞を受賞するなど、舞台から映像まで第一線で活躍している。
【第1話】
池袋西署の係長・益山瞳(倉科カナ)は若くして管理職になり、年上の部下を抱えやりづらさを感じていた。そんな中、人事二課から新入りが来るという異例の辞令が。現れたのは冴えない見た目のおじさん、向井光太郎(唐沢寿明)。経歴は謎だらけだが、刑事としては、やけに有能。その捉えどころのなさに瞳は困惑する。彼が配属された理由とは?そんな中、ある一軒家で殺人事件が発生。瞳が現場に駆け付けると既に向井の姿があり…。
(取材・文/橋本達典)
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。