ジェイソンが初めてホッケーマスクをかぶった記念碑的作品 シリーズ初の3D作 『13日の金曜日PART3』
飯塚克味のホラー道 第135回『13日の金曜日PART3』

今年も10月になり、ハロウィンの足音が聞こえてきた。ハロウィンと言えば、欠かせないのがホラー映画。今年もいいタイミングでホラー映画のソフトが続々とリリースされている。ニューラインとハピネットがリリースを続けて15年になるホラーマニアックスからは『13日の金曜日PART3』(1982)が登場。実は9月頭発売の予定だったのだが、製作上の都合か、ちょっとずれ込んだ。
今ではすっかり人気フランチャイズとなったこのシリーズ、第3作目では今やトレードマークとなったジェイソンのホッケーマスク姿がついにあらわになる。だがそれ以上に公開時、話題となったのが3Dでの上映だった。日本では1983年3月に『ジョーズ3』(1983)が、本作が4月末に3Dで公開され、新たなブームとなったが、実は本国では『13金』の方が先に公開され、一大ブームとなっていたのだ。その理由は赤青のメガネではなく、偏光メガネを使った新しい方式を採用し、よりリアルな映像を実現させていたことにある。約30年後、『アバター』(2009)で再び注目を集めた3D技術だが、日本でも1983年の春は大勢の観客が3Dに魅了されていたのだ。
話はあって無いようなもの。クリスタル湖のそばにあるロッジを訪ねた若者たちが、前作で生き残ったジェイソンに襲われるというもの。前半は小さなコンビニのようなスーパーを営む夫婦と、若者たちに絡むバイカー3人がジェイソンのえじきになり、若者たちは後半にどんどん殺害されていく。
スティーヴ・マイナー監督の演出は残念ながら、後の『ガバリン』(1986)や『ワーロック』(1989)のようなキレはなく、脚本もかなり雑な仕上がりだ。犠牲となる若者たちの背景は、多少は描かれるものの、人物造詣に深みはなく、ほとんどの人物が殺され要員として出ては殺されるの繰り返しになってしまっていて、大変もったいない。前作から間髪入れずに作品をリリースし続けたいスタジオ側の意向と、3D技術を導入したことになる撮影の手間が内容自体に影響してしまったのではないだろうか?その肝心の3D映像も物干竿やヨーヨー、お手玉の果物などが画面に向かって飛び出すばかりで、今の3Dのようにレイヤーが細分化され、重層的な映像という訳ではないので、2Dで見たら、かなり興ざめしてしまう。

今回のブルーレイ、「オリジナルネガからの4Kスキャンによるニューマスター版」とのことだが、ショットによって高画質だったり、低画質だったりで、一定のクオリティが維持されていない。これは3D撮影が大きく影響していると思われる。音声は5.1chリミックスだが、オリジナルがモノラルなので、あまり期待し過ぎない方がいいだろう。貴重な日本語吹替版の収録はありがたいところだ。
厳しいことばかり言ってきてしまったが、本ブルーレイの充実した特典に大きな価値があることだけは強く言っておきたい。短いメイキングドキュメンタリーを5本、合計約1時間収録し、撮影や公開時の様子をうかがい知ることができるのは、ホラーファンにとって最上の喜びだ。「『13日の金曜日PART3』の記録」では、いたずら好きのシェリーを演じたラリー・ゼルナーが公開初日の様子を嬉々と語り、「3Dホラーに迫る 新たな“切り口”」では3D撮影の難しさ、そして本作が全米で2週連続1位の大ヒットとなり、『フレディVSジェイソン』までシリーズ最高の記録を持っていたことが明かされる。「マスクが語り継ぐもの」ではホッケーマスク採用の経緯や、その後のフィーバーぶりも知ることができる。音声解説では『13金』の研究者とキャスト4名が、撮影時の裏話をたっぷり聞かせてくれる。中でもジェイソンを演じたイギリス人俳優リチャード・ブルッカーは映画の中ではセリフが無かった反動か、とにかくよくしゃべるので、楽しめるはずだ。
北米では昔ながらの赤青メガネ対応の3Dやブルーレイ3Dがリリースされているので、できることなら日本でも同様の仕様でリリースしてほしかったところだが、採算面を考えると難しいのが実情だろう。だが、特典の充実度は本当に嬉しいので、未リリースの5作目以降も是非、ソフト化を検討していただきたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
13日の金曜日 PART3 -TV吹替音声収録版
好評発売中
価格:5,000円 (税抜)
発売元:株式会社ニューライン 企画協力:株式会社フィールドワークス
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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記事提供元:映画スクエア
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