なぜ 東北・上越新幹線の終電は早まるのか?「やむを得ない理由」と対象区間とは? 2026年春から実施(JR東日本)
イチオシスト

JR東日本は2025年11月11日、2026年春のダイヤ見直しにあわせ、東北新幹線(東京~盛岡間)および上越新幹線(大宮~越後湯沢間)の下り終電を10分~20分程度繰り上げると発表しました。この変更は、利用者の減少によるものではありません。私たちが未来も安全に新幹線を利用し続けるために不可欠な、設備リニューアルや大規模な地震対策工事の時間を確保することが目的です 。
なぜ今、終電を繰り上げてまで工事時間を確保する必要があるのか? そこには、「増加する工事量」と「減少する担い手」という、日本の鉄道インフラが直面する喫緊の課題がありました。この記事では、その背景と、私たちの安全がどのように守られようとしているのかを解説します。
2026年春から東北・上越新幹線の一部で終電繰り上げ
今回の発表によると、2026年春のダイヤ見直しにあわせて、東北新幹線(東京~盛岡間)および上越新幹線(大宮~越後湯沢間)の下りの終電が10分~20分程度繰り上げられます。これにより、夜間の作業時間が20分程度拡大され、設備のリニューアル工事や地震対策工事を推進します。
対象区間の現在の終電時刻例(繰り上げ対象区間の一部)
JR東日本は、対象区間の現在の終電時刻の例として、東京発の那須塩原行き(22時44分)、仙台行き(21時44分)、盛岡行き(20時20分)、越後湯沢行き(22時28分)を挙げています。なお、2024年春にすでに終電を繰り上げた上越新幹線の高崎行きおよび新潟行きの終電時刻に変更はありません。
なぜ終電を繰り上げるのか?私たちの安全を守る「2つの課題」
JR東日本は、新幹線輸送の安全性向上のため、終電繰り上げによる工事時間の確保が必要だとしています。背景には「工事量の増加」と「担い手の減少」という2つの課題があります。
1.増加する工事量(地震対策と老朽化対策)
1982年頃に開業した東北・上越新幹線は、開業から40年以上が経過しています。安全な運行のため、日々の夜間工事でレールや架線の交換、トンネルの修繕などが行われています。
これらに加え、JR東日本グループが掲げる“究極の安全”の実現に向け、大規模地震に備えた対策工事も並行して進められています。

地震対策工事は、線路で約2000km、トンネルで約30km、電柱で約2万本に及び、全体の工事量の約20%を占めている状況です。JR東日本が示した下記図によれば、新幹線の工事量は10年前と比較して約20%増加しており、今後もさらに増加する見込みです。

2.減少する工事の担い手
一方で、鉄道工事は屋外での夜間労働という性質もあり、工事の担い手は減少傾向にあります。軌道工事従事員は、この10年間で約20%減少しました。生産年齢人口の減少などを踏まえると、今後も担い手の確保は厳しい状況が続くと見込まれています。
このため、日々の安全安定輸送を確保するリニューアル工事と、大規模地震に備えた対策工事を両立させることが課題となっています。
2024年春の上越新幹線での先行実施区間での効果
JR東日本は、2024年春に上越新幹線の一部区間(大宮~高崎間および越後湯沢~新潟間)で、すでに終電を20分繰り上げる施策を実施しています。この先行実施により、作業時間が拡大し、1日の工事量が増加するなどの効果が得られ、対象区間での施工効率を約10%向上させることができました。
対象区間は開業40年以上経過 エリア全体の8割超の工事量
今回、終電繰り上げの対象となる東北新幹線(東京~盛岡間)および上越新幹線(大宮~新潟間)は、1982年頃に開業し、40年以上が経過している区間です。
下記画像(図5)によると、これらの経年の古い区間は、JR東日本の新幹線工事量全体の84%を占めています。

JR東日本は、これらの区間で作業時間を確保し、機械化とあわせて工事を着実に推進することで、将来にわたり安全で安心して利用できる新幹線輸送を実現したいとして、利用者の理解と協力を求めています。
東北新幹線・上越新幹線「終電繰り上げ」の概要
JR東日本が2025年11月11日に発表した内容によると、東北新幹線・上越新幹線の一部区間で2026年春から下り終電が繰り上げ。対象区間は、東北新幹線(東京~盛岡間)と上越新幹線(大宮~越後湯沢間)です。繰り上げ幅は10分~20分程度で、これにより夜間の作業時間を20分程度拡大します。
目的は、増加する設備リニューアル工事や地震対策工事と、担い手不足の課題を両立させ、安全性を向上させるためです。
今回の終電繰り上げは、JR東日本が将来にわたって安全な新幹線輸送を提供し続けるために必要な判断です。
東北新幹線・上越新幹線を夜遅い時間に利用する際は、2026年春以降のダイヤ変更に注意が必要です。JR東日本は、詳細は決まり次第発表するとしています。
(画像:JR東日本、TOP写真:JR東日本、kawamura_lucy / PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)
記事提供元:旅とお出かけ 鉄道チャンネル
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
