長尾謙杜×當真あみ、ひと夏の切ない恋が30年後に奇跡の感動を呼ぶ、映画「おいしくて泣くとき」
著書の映像化が相次ぐ人気作家・森沢明夫の同名小説を、『なにわ男子』の長尾謙杜主演で実写映画化した切ないラブストーリー「おいしくて泣くとき」。孤独だった高校生の男女の生涯忘れられない短い夏の初恋と突然の別れ、30年後に明かされる秘密と奇跡を描き、多くの観客が涙した本作のBlu-rayとDVDが、10月8日(水)にリリースされた(レンタルBlu-ray &DVD同時リリース)。豪華版には、オーディオコメンタリーや150分以上の映像特典も収録されている。
切ないひと夏の初恋と30年後の奇跡を描く物語
父の食堂を引き継いだ飲食店で、子ども食堂も運営する風間心也(ディーン・フジオカ)は、暴走車が突っ込む事故で店が大破し、営業停止を余儀なくされる。事故の影響で二階の自宅にも被害が及ぶ中、散乱したものの中に忘れられない女性が写った学生時代のアルバムを見つける……。
30年前。高校でサッカー部のエースだった風間心也(長尾謙杜)はケガで休部し、鬱々とした日々を過ごしていた。そんな中、心也は新井夕花(當真あみ)と共に、“学級新聞コンクール”の係に強引に指名される。心也の父・耕平(安田顕)が営む大衆食堂“かざま食堂”はこども食堂も兼ねており、そこに度々やってくる夕花とは幼馴染だったが、いつしか距離ができていた。図書館で学級新聞を作り始めた二人はぎくしゃくしつつも、次第に打ち解けて“ひま部”を結成。義父から厳しい扱いを受けていた夕花は家に居場所がなく、クラスでも孤立しており、心也といる時が大切な時間になっていく。
ある日、心也は父の子ども食堂の常連でもある不良の石村(水沢林太郎)から、彼が食堂に来ていることを口外したとのあらぬ誤解を受ける。さらに別の不良グループからは、父を偽善者呼ばわりされ嘲笑を受けるも、言い返せずに複雑な思いを抱く。そんな心也の荒れた心を夕花は静かに癒し、二人は惹かれ合っていく。
そして夏休み。心也は義父に殴られてアパートから投げ出された夕花を目撃。その場からなんとか夕花を救い出した心也は、彼女の「わたし……逃げたい。遠くに」との悲痛なつぶやきを聞き、かつて両親と訪れた思い出の地へ連れ出す。美しい海と夕暮れの堤防がある港町、さらには幼い頃の心也が亡き母・南(美村里江)と四つ葉のクローバーを探した公園に辿り着き、心也は夕花にもっと遠くへ逃げようと告げるが、二人の別れは突然訪れる。
突然の別れから30年。事故により大破した店の修繕費用をすぐに捻出できない心也は、営業再開の目途が立たず、妻・ゆり子(篠原ゆき子)と共に途方に暮れていた。そんな中、事故のマスコミ報道を見たというひとりの若い女性(芋生悠)が、店にやってくる……。
甘酸っぱくも苦しく痛いラブストーリーとその背景となる子ども食堂を通して描く人間愛
高校生の切ない初恋と、30年後に起きた奇跡を綴る本作。どこにも居場所のない少女と、彼女を守ろうとした少年のひと夏の逃避行と悲恋は、甘酸っぱくも苦しく痛い。ピュアな高校生の心也と夕花が惹かれ合っていく姿には胸キュンさせられつつも、共に家庭の事情などで孤独と悩みを抱えていたからこそ、お互いの痛みを分け合うように寄り添い合っていくため、ときめき以上に胸を締め付けられる。さらに最後に明かされる突然の別れの理由や30年後に起きた愛の奇跡、そしてタイトルの意味を知ると、深い感動が押し寄せ涙させられる。
また、本作の背景として、子ども食堂も描かれる。少年時代の主人公の心也は、ケガでサッカーを諦めたことや、幼い頃に母を亡くしたことなどで心に傷を負うが、父親がさまざまな事情を抱えた子どもたちに無償で料理を提供する活動にも複雑な思いを抱いている。それは父を偽善者呼ばわりする心ない者たちがいるためで、理不尽ながらも、まだ少年の主人公がその声に抗えないのも無理はない。心也は父に、父の活動によって心ない扱いを受けていると告げ、他人の子どもの方が自分より大事なのかと問いかけ、子ども食堂の活動をやめて欲しいと願う。ここで心也の父は、子ども食堂の意義や活動の正統性などを語って説き伏せたりはせず、少し寂しそうにしながらも、息子を悲しませるようならやめてもいいと、優しく応える。父と子のどちら側に立ってみても心が痛く、印象深いシーンだ。
その後、心也は夕花や石村らの同級生により、子ども食堂に救われている人たちがいる実情を実感し、さらには夕花を守りたいとの想いから、他人を思いやることも知る。そうして父の子ども食堂の活動にも理解や尊敬を示すようになり成長を遂げた心也は、父の想いも味も受け継いだ30年後、感動的な奇跡を起こすことになる。ちなみに子ども食堂は、現時点でも全国に公立中学校の数を上回る1万件以上あるらしく、子どもの貧困問題だけでなく、孤食の問題解決や人々の交流を促す場として増え続けているという。本作は声高に子ども食堂の意義を語ったりはしていないが、その活動への注目や支援のきっかけとなるメッセージが自然と伝わる作品ともなっている。本作の結末も、初恋や悲恋の成就というよりは、純粋に相手の幸せを願っていた想いの成就やそこから生まれた奇跡を描いており、様々な人間愛を綴った物語ともいえるだろう。
著者・森沢明夫から信頼の厚い横尾初喜監督がフレッシュな長尾謙杜&當真あみのカップルで映画化
原作者の森沢明夫は、『虹の岬の喫茶店』が吉永小百合主演の「ふしぎな岬の物語」(14)として映画化されたほか、『津軽百年食堂』『夏美のホタル』『きらきら眼鏡』『あおぞらビール』『癒し屋キリコの約束』などの著書も映画化やドラマ化されるなど、映像化が相次いでいる。また、本作の監督を務めた横尾初喜は、森沢の著書を映画化するのは「大事なことほど小声でささやく」(22)に続いて2度目。本作の原作を読んで深い感銘を受けた横尾は、自ら映画化企画を立ち上げ、信頼を得ていた森沢からも許諾を得たという。
幼い頃に亡くなった母との思い出の“四つ葉のクローバー”を今も大事にしている、主人公の高校生・風間心也を演じるのは、人気アイドルグループ・なにわ男子のメンバーで、本作が劇場映画初主演となる長尾謙杜。長尾は、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(23)で青年期の岸辺露伴役を務め、今年は1月公開の「室町無頼」で才蔵役を演じ、豪快な棒術アクションを披露。さらには公開中のサスペンス映画「俺ではない炎上」ではサラリーマン役、10月24日公開の恋愛ミステリー「恋に至る病」でも主演を務めるなど、映画界で大活躍中。特に本作の純朴な高校生と「室町無頼」のアウトロー役は同じ俳優だとは思えないほど作品毎に異なる顔を見せており、その豊かな表現力は、今後さらなる活躍が期待される。
心也の同級生でどこか影のあるヒロインの新井夕花には、2021年にデビュー後、アニメ映画「かがみの孤城」(22)の主人公の声優として注目された當真あみ。以降、数々のドラマや映画に出演し、今年は『ちはやふる-めぐり-』で連続ドラマに初主演、10月17日からは長編初主演映画「ストロベリームーン 余命半年の恋」の公開も控える。さらに、美村里江、尾野真千子、安田顕、ディーン・フジオカら個性あふれる豪華キャスト陣が、フレッシュな長尾と當真の2人を支えている。
長尾謙杜×當真あみ×横尾監督が撮影時の裏話や各シーンに込めた想いを明かした豊富な特典
Blu-rayとDVDの豪華版には、本編ディスクに音声特典として長尾と當真と横尾監督の三人によるオーディオコメンタリー、特典ディスクに150分以上の映像特典を収録。封入特典として、特製ブックレットとステッカーも付属する。
長尾&當真&横尾監督の3名が、全員初めてというオーディオコメンタリーでは、各シーンでの撮影裏話や芝居・演出に込めた想いなどを語り合っている。劇場公開の約1年前に行われた撮影当時、まだ高校生だった當真は等身大で演じられたが、當真より4歳上の長尾は、自身が當真の同級生の高校生に見えるかどうか、心配していたと振り返る。本作はなるべく劇中の時系列に沿った順撮りで撮影されており、長尾と當真が揃った撮影の最初のシーンは、心也と夕花が学級新聞を作るため図書館で打ち合わせを始めたところ。実は長尾も當真も人見知りだそうで、心也と夕花が打ち解けるまでぎくしゃくしてしまうこのシーンは、撮影初期の緊張感やまだ慣れていない空気感が、うまく反映されているという。長尾は人見知りだと自称するが、當真も横尾監督もそうは見えなかったようで、人見知りの當真を気遣ったり、スタッフ・キャストを問わず誰とでも積極的にコミュニケーションを取り、座長として現場を盛り上げていたという。
ほかにも横尾監督が、心也と夕花が下校時に分かれ道となる場所などのロケ先や、心也と夕花の衣裳の色味やライティングなど、それぞれのこだわりや表現したかったことなども詳細に明かしている。映像特典は、『Making ofおいしてく泣くとき』をはじめ、イベント映像集(完成披露試写会、公開直前イベント in 大阪・アメ村、公開直前舞台挨拶 in 大阪、初日舞台挨拶、大ヒット御礼舞台挨拶)、公開記念特番、予告編集、特別メイキング映像など、総計150分以上を収録。メイキングでは、撮影現場の模様と共に、キャストのコメントも収録されている。心也がサッカー部のエースだったことは、劇中では台詞と写真でしか描かれていないが、オーディオコメンタリーでも語られているとおり、その劇中写真を撮るために、ロケ先の学校のサッカー部の協力を得て、実際に長尾がサッカーをしているところもメイキングで見ることができる。
また、オーディオコメンタリーや各イベントなどでも語っている當真が撮影の合間に劇中でもキーアイテムとなる四つ葉のクローバーを探していた様子や、心也と夕花が雨の中を濡れながら下校する印象的なシーンは実際にも雨が降ってずぶ濡れの中で撮影されていた様子なども、映像として収められている。長尾と當真は、撮影中は現場スタッフの名前を全員覚えていたそうで、長尾より先にクランクアップした當真は、その際に現場で見つけた四つ葉のクローバーをパウチしたしおりにスタッフ個々の名前を書いて渡したことも、映像特典や音声特典内で語られている。舞台挨拶などは5つものイベント映像が収録されており、そのすべてに長尾、當真、横尾が参加。劇中の素朴な長尾と、各イベントでの登壇時のアイドルらしい華やかな出で立ちの長尾とのギャップも楽しい。音声特典も映像特典も豊富に収録されており、特典の充実ぶりも注目ポイントとなっている。
文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社
「おいしくて泣くとき」
●10月8日(水) Blu-ray &DVD 発売(レンタルBlu-ray&DVD同時リリース)
Blu-ray &DVD 詳細情報はこちら
●Blu-ray 豪華版 価格:7,920円(税込)
【ディスク】<2枚組>※(本編ディスク1枚+特典ディスク1枚)
<音声特典>
オーディオコメンタリー[長尾謙杜、當真あみ、横尾初喜監督]
<映像特典>
・予告編集
・特別メイキング映像
・公開記念特番
・イベント映像集
・Making of おいしくて泣くとき
<封入特典>
・特製ブックレット(16P)
・特製ステッカー
●DVD 豪華版 価格:6,930円(税込)
【ディスク】<2枚組>※(本編ディスク1枚+特典ディスク1枚)
<音声特典>
オーディオコメンタリー[長尾謙杜、當真あみ、横尾初喜監督]
<映像特典>
・予告編集
・特別メイキング映像
・公開記念特番
・イベント映像集
・Making of おいしくて泣くとき
<封入特典>
・特製ブックレット(16P)
・特製ステッカー
●DVD 通常版 価格:4,180円(税込)
【ディスク】<1枚組>※(本編ディスク1枚)
<映像特典>
・予告編集
・特別メイキング映像
●2025年/日本/本編109分/豪華版映像特典166分
●原作:森沢明夫「おいしくて泣くとき」(角川春樹事務所刊)
●監督:横尾初喜
●脚本:いとう菜のは
●音楽:上田壮一
●主題歌:Uru 「フィラメント」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
●出演:長尾謙杜 當真あみ/尾野真千子 美村里江 安田顕 ディーン・フジオカ
●発売元:WOWOW 販売元:ポニーキャニオン
©2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会
記事提供元:キネマ旬報WEB
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