片山晋呉が“まな弟子”に贈る「幹が太くなる勝ち方」 勝俣陵、阿久津未来也の初優勝に安堵
26日、自身のSNSでケガの影響により6月から試合を欠場していたことを明かし、約2カ月間の入院を経て、27日にゴルフ界へ復帰したことを発表した、ツアー通算31勝で永久シード権を保持する片山晋呉。その“まな弟子”である29歳の勝俣陵が、先週の国内男子ツアー「パナソニックオープン」で初優勝を遂げ、喜びをあらわにした。
同週に行われた国内シニアツアー「日本プロゴルフシニア選手権 TSUBURAYA FIELDS HOLDINGS ULTRAMAN CUP」で、片山は所属するイーグルポイントゴルフクラブのホストプロを務めたものの、ケガの影響で大会には出場できず、中継の解説者として参加した。28日の最終日、男子ツアーで勝俣が2位に3打差をつけ単独首位で迎えるなか、片山は解説前から試合の行方を気にかけており、大会終了後、勝俣の逃げ切り優勝を知り、安堵の表情を浮かべた。
「(練習を)やっている姿が良い。いつかは勝つと思っていた。でも相手もいるから、“いつか”ってね。俺に聞いて、『これをやっておきな』っていうことを、やり方や向き合い方がすごくいい。(阿久津)未来也に関しても、今年時間がないなかで2回きて、凝縮した時間のなかでも言ったことをちゃんとやるし。ご飯を一緒に食べていても、しっかり話を聞いている」
今年の「~全英への道~ミズノオープン」でツアー初制覇を遂げた30歳の阿久津未来也も弟子の一人である。勝俣は2017年、阿久津は2016年にプロ入りして以降、なかなか勝てずにいたが、ともに初優勝を果たし、「肩の荷が下りたよ。(僕が)言っていることは間違っていないんだなと思えたし、もっと良くなればいいなと思える」と、ホッとした表情を見せた。
片山は、日本では2004年からの3年連続を含む5度の賞金王に輝き、01年には「全米プロ」で4位タイ、09年の「マスターズ」では優勝者と2打差の4位に入るなど、海外でも結果を残してきた。そんな片山が選手に教えているのは「勝ち方」だけである。
「(僕は)練習しているときに、『どうやったら優勝できるのか』しか考えていない。それを教えているだけ。強くなったり、優勝したいなら、(優勝を)しているひとに聞いたほうが早いと思う。スイングはコーチが教えられるけど、勝ち方は別。勝つコツ、その練習方法は知っている。だから伝える」
片山が教えるのは、長い期間にわたり強く戦い続けられる力。だからこそ「俺の教え方は時間がかかる」と話す。「コーチがパッと見てすぐ勝つ人もいる。でも俺はそういう教え方じゃない。本当に崩れず幹が太くなる勝ち方、ゴルフを強くするためのことを教えている」。スイング、技の土台となる基礎を徹底することで、長く安定したプレーを可能にするのだ。
勝俣は今年6月の「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」で、3日目を終えて首位と3打差まで迫り、最終日に優勝争いを演じた。そのとき、片山と宮崎県で行った合宿で教わった基礎練習を継続していることを明かしていた。「冬に片山晋呉さんと練習して、そこで教わった基礎練習を続けています。それをやっていればショットの調子は崩れない。それだけをやっています」。
合宿では「バンカーからの片手打ち」などの基礎ドリルを徹底し、朝とラウンド後に30分~1時間ほど行う。全身を使うゴルフでは、毎日同じ動きやタイミングで振ることは容易ではないが、“片山直伝”の基礎練習を徹底することで、安定したゴルフにつなげている。「少しずつ結果に結びついている」と、勝俣は手応えを感じていた。
片山は、同じイーグルポイントGCの契約プロである勝俣との出会いを振り返る。「陵はなにもない“0”のときからだった。ここ(イーグルポイントGC)に初めて来て、『これでプロになって大丈夫かな』と思ったところからだった」と明かす。
そこから勝俣は基礎を徹底的に練習し、「今年の合宿はクラブ1本で来た。自分が(コースに)出られないことをわかっていたからね。合宿には一番長く居たけど、一度も一緒に回っていない。それだけ『本当にこれをやらなきゃいけない』と理解していた」。近道をせず、たゆまぬ努力を貫く姿勢こそが勝俣の強さだ。
基礎練習にはさまざまな方法があるが、「大事だけど、意味を理解せずにやっている選手が多い。これは何のためで、どういう理由があって、こういうことがあるからやらないといけない。それを理解してやるのか、ただ『みんなやっているから俺もやろう』でやるのかでは大きな違いがある」と片山は指摘する。形だけでなく、その意図まで理解させるのが“片山流”だ。過去にも片山の合宿に来た選手では、8人ほどの選手が初優勝を遂げている。
これからも片山は、プロゴルファーに“勝つための道”を示していくという強い信念を持ち続けている。(文・高木彩音)
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