元スコットランド代表のスキー選手がメジャーでシニア初優勝 「1000球打っても出ない」劇的一打で逆転
<日本プロシニア TSUBURAYA FIELDS HOLDINGS ULTRAMAN CUP 最終日◇28日◇イーグルポイントゴルフクラブ(茨城県)◇7154ヤード・パー72>
55歳のサイモン・イエーツ(スコットランド)が、最終18番で劇的な“ウイニングショット”を決めて逆転優勝。トータル14アンダーで今年のシニアプロNO.1に輝き、ツアー3年目にして初優勝を飾った。
明暗が交錯した一日だった。首位に2打差で迎えた最終日は前半で3つ伸ばすも、後半10番ではティショットをまさかのシャンクしOB。「きょうは終わったと思ったよ…」とダブルボギーを喫し、頭を抱える姿があった。前半のいい流れが途切れたかと思われたが、14番から連続バーディを奪取し取り戻した。
1打差で最終18番に入った。ボールを新しくし「バーディを獲る」と気を引き締めた。追い風で有利な状況となり、入ったら厄介になる右のフェアウェイバンカーを「パーフェクトなショット」で避けてフェアウェイを捉えた。
そして残り111ヤードの2打目。54度ウェッジでカップ右上80センチのところに落としてバックスピンで戻し、そのままカップインした。両手を上げて喜び、ギャラリーを沸かせるイーグル締め。これがウイニングショットになる劇的展開で、イエーツの勝利が決まった。
その一打を振り返ると、「泣きそうだった。1000球打ってもあのようなショットはできない。いまでも興奮している」と胸に手をあてて感極まる。そしてパッティングが苦手なイエーツは、「ノーパッティング。とてもハッピー」と笑った。
父の友人が欧州ツアー通算9勝でライダーカップに6度出場したブライアン・バーンズ(スコットランド)という縁で、イエーツが6~7歳のときに初めてゴルフクラブを握った。しかし当時は、ゴルフではなくスキーに没頭。「13~16歳まではナショナルチームだったよ」と、国の代表メンバーとして活躍していたほどの腕前だった。
「下半身では(スキーの)効果がある」とゴルフスイングにいい影響を与え、13歳から本格的にプロゴルファーを目指した。18~22歳でイギリスのPGAプロショップで働き始め、ゴルフが盛んになっていたドイツでティーチングプロになろうと考え始める。だが、知り合いに『ティーチングだけではもったいない』と言われ、PGAチャンピオンシップにエントリー。1994年にアジアンツアーのQTを受け、ツアーでは2度の優勝。「2位は15回だったよ(笑)」と驚きの経歴を明かした。
そして、50歳になった2019年に日本プロゴルフ協会(PGA)のプロテストに一発合格。妻の母国であり、32年間住むタイにもシニアツアーがあるなかで、日本のシニアツアーを選択した。「タイ人のマネージャーから日本のシニアツアーを進められた」というのがきっかけ。合格後は「5年ほどは子どもたちの成長のために家にいたくて」ということと、新型コロナウイルスの影響で来日することができなかったこともあり、日本のシニアツアーに初参戦したのは23年だった。
日本で戦うことを決めたのは、「タイのシニアツアーは(人数が少ないこともあり)決まった選手しか勝つことができない。日本のように(出場選手が多く)誰しも勝つチャンスがあって、素晴らしい選手がたくさんいるわけではありません。私は日本でプレーするのがチャレンジと感じている」から。レベルの高さを感じ、第二の競技人生を本気で楽しむために日本で戦うことを選んだ。
そして、念願の栄冠に笑顔を見せる。優勝したことで今季の残りの試合に加え、来年から3年間のシード権を得た。「大きなこと。なかには 33年シードを獲得して怠ける人もいるかもしれないけど、私はもっと上を目指したい。さらに良くなるように引き続きやっていきたい」と、55歳はさらなる飛躍を誓った。(文・高木彩音)
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