「腐っていた」一年から手にした勝利 長野泰雅を奮い立たせた賞金ランクトップの存在
<ロピア フジサンケイクラシック 最終日◇7日◇富士桜カントリー倶楽部(山梨県)◇7424ヤード・パー70>
最終組はツアー未勝利の3選手。そこに杉浦悠太、蝉川泰果といったメジャータイトルホルダーも加わり、混戦模様となった最終日で、最後に笑ったのは22歳の長野泰雅(ながの・たいが)だった。
福岡県出身の長野は父の影響でゴルフを始めた。名前の由来はタイガー・ウッズ(米国)から。ジャンボ軍団の大ファンだった父は、当初、尾崎将司、尾崎直道から一文字ずつ取り「将直」と名付けたかったという。
沖学園高校1年の2019年には「国体少年男子」で団体・個人の2冠を達成。3年生となった21年にはQTに挑戦し、プロ転向した。ルーキーイヤーから頭角を現し、ローカル大会「東急大分オープン」では比嘉一貴をプレーオフで下して優勝。ツアーでも「ASO飯塚チャレンジド」でトップ10入りを果たすなど、存在感を示した。
優勝に最も近づいたのは23年の「ジャパンプレーヤーズ選手権」(以下JPC)。2日目に首位タイに立ち、3日目も首位を守ったが、最終日は谷原秀人とのプレーオフで敗戦。惜しくもツアー初優勝を逃したが、自身最高位の2位を記録した。
若さあふれる攻めのゴルフが持ち味の長野。まだあどけなさを残す22歳は、ツアートーナメント74試合目(アマ時代3試合を含む)で念願の初優勝をつかんだ。だが、本人は決して短い道のりではなかったと語る。
「長かったですね。20歳の年が一番優勝のチャンスがあった。優勝争いも何回かしたし、今年もトップ10はあるんですけど、優勝に届く位置からスタートしていなかったので」
そう語る背景には、2年前のJPCの記憶がある。「去年は腐っていた」。谷原とのプレーオフで敗れて以来、ゴルフ熱が冷め、集中しきれない時期もあった。昨年の最高位は「日本オープン」の8位にとどまった。
今年はそんな状況を変える出来事があった。今季唯一複数回優勝を挙げ、賞金ランキングトップを走る生源寺龍憲が、長野の地元・福岡に拠点を移したのだ。「家が近くて、一緒に練習してくれたり、生源寺さんが優勝したりして。それで自分もゴルフに熱が入って、集中できていると思います」。
さらに、今年から契約フリーとなり、様々なクラブを試せる環境もプラスに働いた。「自由になって、楽しいじゃないですか。ゴルフ自体は好きなので、いろんなクラブを使ったりするのは楽しかったです」。今大会もアイアンとシャフトを新調し、優勝を引き寄せた。道具探しも“ゴルフ熱”を高めている要因だ。
男子ゴルフ界に誕生した新星の次なる目標は「日本オープン」での優勝。10月に日光カンツリー倶楽部で行われる同大会は、今年から優勝者に海外メジャー「マスターズ」の出場資格が与えられる。
海外志向の強い長野にとって、これは大きなチャンス。「一番の目標ですね」。初優勝で再び火がついた22歳は、2勝目、そして海外挑戦への道を切り開こうとしている。(文・齊藤啓介)
<ゴルフ情報ALBA Net>
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