中田翔選手の引退に、しみじみと感じる時代の流れ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第179回
中田翔の引退について語った山本キャスター
本日、中田翔選手が引退を決めたというニュースが流れました。
中田選手といえば日本球界を代表する強打者。大阪桐蔭高から高校生ドラフト1位で2008年に日本ハムに入りましたが、当時は中田選手と、仙台育英高からヤクルトに入団した佐藤由規さん、成田高からロッテに入団した唐川侑己投手の3人が「高校BIG3」として大きな話題になりました。
甲子園を大きな熱狂に包んだ3人はプロからも注目され、中田選手は4球団、由規さんは5球団、唐川投手は2球団が入札。その後の活躍はご存じのとおりです。元日本ハムの斎藤佑樹さんや、田中将大投手(巨人)が甲子園を沸かせた1年後で、彼らは「1989年世代」ともと呼ばれましたね。
中田選手といえば、最初に思い浮かぶのは打撃力です。近年は打って走れるタイプの選手が主流ですが、どっしりとした体型で、バットコントロールはしなやか。当たればとにかく飛びました。
日本人の右の強打者としては、清原和博さんなどの系譜にあたるでしょうか。ある意味で、"クラシックな強打者"として存在感を発揮しました。それにしても、最近はシュッとした体型の選手が増えましたから、中田選手のような「いかにも強打者」といった佇まいの選手は、最近では稀有になりましたね。
中田選手の魅力は打撃だけではありません。大の野球ファンである私の父は、「中田の守備の身のこなしは一級品」と手放しで絶賛していました。ペナントレースはもちろん、WBCでの守備などでも安定感があり、見ているこちらも頼もしかったことを覚えています。
日本ハムから巨人、中日と渡り歩き、引退を発表されたその裏には、腰の不調があったと言われています。大物の選手が引退を発表すると、ひとつの時代が終わったような気がして寂しくなります。
当時の写真がありました。2016年7月9日、緑のユニフォームを着ての由規さんの復帰登板......この日を忘れることはないと思います。
中田選手の同期には、オリオールズの菅野智之投手、巨人の丸佳浩選手、広島の菊池涼介選手など、まだまだ第一線で活躍する選手がたくさんいます。ちなみに、先の高校BIG3のひとりである由規さんは現在、ヤクルトの2軍投手兼育成担当コーチを務めています。由規さんが現役時代、長くケガに苦しんで復帰登板を果たした試合は、球場に見に行ってボロボロ泣きました。
1989年世代の選手たちは36歳で、各チームで最年長に近い世代になります(45歳のヤクルトの石川雅規投手は別格とします)。グランドで躍動する選手の大半が年下になって久しい山本ですが、マイクがないところではみんな"普通のあんちゃん"という感じで、家族と話しているような錯覚さえ覚えます。野球選手といえばみんな年上でしたから、時代は流れていくのだなあとしみじみ思いますね。
中田選手は年男です。ひと回り下の年男には、ドジャースの佐々木朗希投手や、オリックスの宮城大弥投手、ヤクルトの長岡秀樹選手など、現在のプロ野球を沸かす若手選手がたくさんいます。24歳といえばまだまだ若手のようにも思えますが、高卒6年目といえば、もう中堅の域ですよね。
ちなみに1989年世代は、「中田世代」「菅野世代」など、いろいろな呼び名があるようです。2001年生まれは「佐々木朗希世代」と呼ぶそうですが、これには正解はありません。
ただ、「〜世代」という言い方には、同じ時代にしのぎを削ったライバルたちはもちろん、ファンにとっての特別な思い出も含まれています。同じ世代の選手が引退していく時は、みんな寂しさを感じるのでしょうね。
佐々木投手ら2001年生まれの選手たちも、いずれ今の中田選手と同じ36歳になります。その時に、ひと回り下の24歳の選手たちは、今はまだ12歳の小学生と考えると......野球というのは、時を超えた大きな物語なのだと思いました。
最後になりますが、中田選手、お疲れさまでした。そして、まだまだ現役で頑張っている1989年世代のみなさんに、1996年世代の山本よりエールを送りたいと思います。それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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