『リターンキー押して』が通じない?上司と部下の間に立ちはだかる“キーボードの壁”
「そこでリターンキー押して」
この一言に対して、きょとんとした表情を浮かべる若い世代。そんな出来事をきっかけに、ある投稿がX(旧Twitter)上で話題となっている。
投稿したのは、ユーザーの**X68PRO-HD(@CZ662C)**さん。添えられていたのは、誰もが見慣れたPCキーボードの写真と、次のようなコメントである。
「この前会社の若い子に『そこでリターンキー押して』って言ったら『?』って顔されたんだけど、これってリターンキーだよね?」

画像に写っているのは、「Enter」キー。見慣れた形だが、世代によってはこのキーを「リターンキー」と呼ぶのが自然だった。しかし、今やその呼称が通じないというのだ。
リターンキーとEnterキーは同じもの?
結論から言えば、**「リターンキー」=「Enterキー」**である。ただし、使われる環境や世代によって呼称が異なる。

AppleのMacシリーズでは、今でも「return」と刻印されたキーが採用されている。初期のMacやワープロ専用機、またタイプライターにルーツを持つ人たちの間では、「リターンキー」という呼び方が一般的だった。特に1990年代のMacintoshユーザーにとっては、こちらが標準だったと言える。

一方、Windowsの普及以降、キーボードの表記は「Enter」が主流となり、現在の若年層には「リターンキー」という言葉自体があまり馴染みがない可能性が高い。現に、X68PRO-HD(@CZ662C)さんの体験は、まさにその象徴と言える。
「“?”って顔された」
「いやいやこれリターンキーでしょ…って思った」
そんな投稿に、共感の声や驚きの声が多数寄せられている。
なぜ「リターン」と呼ばれていたのか

そもそも「リターンキー」とは、タイプライターの「キャリッジ・リターン(Carriage Return)」という動作に由来する。紙に文字を打つたびに、行末でヘッドを行の先頭に戻すという動作を行うのが「キャリッジリターン」であり、それを行うレバーやキーの名称が「リターンキー」だった。
コンピュータのキーボードにおいても、初期の頃はこの名称が踏襲され、「return」キーとして配置されていた。その後、コンピュータのインターフェースが進化し、入力の確定やコマンドの実行という意味が強まるにつれて、「Enter(入力する・確定する)」という名称が定着していった。
つまり、「リターンキー」とは、物理的にヘッドを戻す動作を表した時代の名残であり、「Enterキー」は、論理的に「入力完了」を意味する現代的な呼称なのである。
今なおAppleのキーボードに「return」の表記が残っているのは、そうした歴史的背景を尊重してのことだろう。
言葉の変化は時代の流れ
X68PRO-HD(@CZ662C)さんの投稿は、単なるキーボードの呼称にとどまらず、“世代間ギャップ”というテーマを鋭く浮かび上がらせている。
コメント欄には、共感の声が多数寄せられている。
「え、リターンキーってもう死語なの?」
「ワープロ時代はリターンだったなあ」
「Mac派は今でもリターンって言うよ」
「今の子にはEnterしか通じないのか…」
一方で、若いユーザーからは、
「Enterのことをリターンって呼ぶの、初めて知った」
「returnってプログラミングでしか見ないかも」
「Enterキーでしょ、それ」
といった声も見られる。
このやりとりから見えてくるのは、「通じない」ことが誰かのせいではなく、単純に時代や文脈が変わっただけなのだ。かつては当たり前だった言葉も、使われなくなれば自然と忘れられていく。「ポケベルやフロッピーディスク、カセットテープ」と同じように、言葉には“世代寿命”があるのだ。
そして、そうした言葉をふとした瞬間に使ってしまったとき、周囲の反応から「時代が変わったのだな」と気づく──それがまた、面白い瞬間でもある。
この前会社の若い子に
— X68PRO-HD (@CZ662C) August 3, 2025
「そこでリターンキー押して」
って言ったら
「?」
って顔されて通じなかったんだけど、これってリターンキーだよね? pic.twitter.com/lpRFZKzOwF
※サムネイル画像(Image:「X68PRO-HD(@CZ662C)」さん提供)
記事提供元:スマホライフPLUS
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