【2025夏の甲子園】今年の夏はこの選手&チームに注目! 高校球史に残る投手陣、悲願の初出場校、帰ってきたお騒がせ監督.....
8月5日開幕する第107回全国高校野球選手権大会
8月5日に開幕する夏の高校野球。読めば、大会がさらに面白くなるネタを豊富に詰め込んでお届けします!
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■注目の優勝候補校は?8月5日に第107回全国高校野球選手権大会が甲子園球場で開幕する。年々暑さが厳しくなっている日本において高校野球のあり方も変わってきた。灼熱のグラウンドでは脱水症状になる選手が続出。選手の健康を守るため、運営サイドも手を尽くしている。
今夏は開会式を夕方に開催するなど、大会序盤は「午前の部」と「夕方の部」の2部制を本格的に実施。高校球児がプレーしやすい環境を模索中だ。
これだけ暑いと、もはやひとりの絶対的エースで勝ち上がることは不可能と言っていい。それを加味すると、今夏の優勝候補は横浜(神奈川)と健大高崎(群馬)という関東を代表する2校となるだろう。共に強力な投手陣を擁する。
織田翔希(横浜/神奈川) しなやかな投球フォームから最速152キロの快速球を投げ込む
甲子園春夏連覇を狙う横浜は2年生ながら早くも来年のドラフト1位候補に挙がる織田翔希が必見だ。身長185cm、体重75kgとスリムな体で、しなやかな投球フォームから最速152キロの快速球を投げ込む。カーブ、チェンジアップなどの変化球は春よりも威力を増しており、順調に成長している。
キリッと精悍なマスクもスター性が漂う。〝平成の怪物〟といわれた偉大な横浜の先輩・松坂大輔(元レッドソックスほか)を上回る活躍を見せるかもしれない。
奥村頼人(横浜/神奈川) 神奈川大会では3本塁打と打撃で気を吐いた。投手としても期待される
チームの浮沈のカギを握るのは、エース番号を背負う左腕の奥村頼人だろう。今夏の神奈川大会では3本塁打と打撃で気を吐いた一方、投手としては不安定な内容だった。
小学生時に野球の練習で帰宅が遅くなり、母親から「ウチの子じゃない」と叱責されたことに腹を立て「新しいお母さんを探しに行く」と外出。約30kmも歩いて移動し、ニュースで公開捜索が報じられる寸前のところだった〝家出事件〟を起こしたエピソードも。負けん気が強いだけに、大舞台で予想もつかない大爆発を見せる可能性もありそうだ。
石垣元気(健大高崎/群馬) 常時150キロ前後を誇るスピードキング。万全の状態で大会に臨む
投手層の厚さなら健大高崎が大会ナンバーワンだろう。常時150キロ前後のスピードキング・石垣元気は今大会の目玉候補。今夏の群馬大会はわずか5イニングしか投げておらず、万全の状態で大舞台に臨める。今大会のパフォーマンス次第でドラフト1位指名も視野に入ってくる。
北海道出身のため、春先の肌寒い時期でもタンクトップ姿で練習して指導者を慌てさせるなど、寒さには強い。その一方で夏の関西地方の暑さに早く順応できるかがカギになりそうだ。
さらに、昨年春に石垣との二枚看板でセンバツ制覇に導いた左腕・佐藤龍月がトミー・ジョン手術から復帰する明るい材料もある。甲子園での実績もある実戦派左腕・下重賢慎との3本柱は高校球史に残る陣容と言っていい。
春夏連続出場組の智弁和歌山、東洋大姫路(兵庫)、西日本短大付(福岡)、沖縄尚学もチームバランスに優れている。
智弁和歌山は宮口龍斗、渡邉颯人というハイレベルな両右腕を擁して、春のセンバツは準優勝に輝いた。主力打者は金属バットを持っているが、脇役で小柄な大谷魁亜と黒川梨大郎が木製バットを使用するという変わった打線。その木製バットは重量1200g超という極重のバット。重みを利用し、単打を狙う戦略だという。
東洋大姫路は攻守にスキがなく、関西勢らしい試合巧者のムードが漂う。今春に右肘の故障で戦列を離れた本来のエース・阪下 漣が復活できれば、快進撃が期待できる。
西日本短大付は日本ハム・新庄剛志監督の母校。西村慎太郎監督は新庄監督と高校の同級生だった。新庄監督もSNSを通じて母校への応援メッセージをつづり、甲子園まで応援に行くことを示唆。「こっち(プロ)の世界に2人くらい入って来そうな予感がするな!!」とドラフト面でも興味深い発信をしている。
末吉良丞(沖縄尚学) 最速150キロを誇る2年生左腕。沖縄大会の防御率はなんと0.31!
沖縄尚学は最速150キロを誇る2年生左腕の末吉良丞が本格派になりつつある。今夏の沖縄大会は防御率0.31と、まともに打たれる気配すらなかった。厚みのある肉体だが、剛速球よりも投球術が光る。馬力のある宮城大弥(オリックス)とイメージするとわかりやすいだろう。
ほかにも豪華投手陣を擁する仙台育英(宮城)や神村学園(鹿児島)、スタメン9人中3人が木製バットを使いこなす花巻東(岩手)も優勝争いに絡む可能性がある。
■2年生選手が活躍の予感!
菰田陽生(山梨学院) 身長194cm、体重100kgの巨躯で投打共に高いポテンシャルを秘めた二刀流
今大会の大きな特徴は2年生に有望選手が多いこと。前出の織田や末吉と共に来年の主役になりうるのが、山梨学院の菰田陽生だ。身長194cm、体重100kgとスケール満点の体躯で投打の両方で青天井の才能を秘める。
本人は「大谷翔平さん(ドジャース)みたいに世界でも二刀流で活躍したい」と強い二刀流志向。吉田洸二監督は「日本プロ野球界の宝になる」と資質を絶賛する。
なお、菰田の兄・朝陽は上武大の2年生で再来年のドラフト候補。弟よりも身長が20cmほど低く、50m走のタイムは5秒65と学生球界屈指のスピードスターだ。陽生は「鬼ごっこをしても絶対に追いつけないので、よく泣いてたっす」と明かしている。
横浜の池田聖摩も楽しみな2年生だ。池田は熊本県出身で中学時代は陸上競技でも活躍。ジャベリックスロー、走り幅跳び、三段跳びの3競技で県大会王者に輝いている。
特にやり投げに近い競技のジャベリックスローでは72m55cmと熊本県の歴代最高記録を樹立した。陸上競技で養った身体能力は走攻守に存分に生かされている。来年は遊撃手として、プロスカウト垂涎の存在になるだろう。
■話題性豊富な初出場校初出場校はパンチの利いたチームがそろっている。未来富山は通信制の学校で、全校生徒24人のうち野球部員が23人。創部8年目にして甲子園初出場を遂げた。
江藤 蓮(未来富山) 高校日本代表候補。スカウトも熱心に追いかけるほど高い資質を秘めている
とはいえ、実力は面白い。エース左腕の江藤 蓮はスカウトも熱心に追いかけるほど高い資質を秘めている。今年4月に招集された高校日本代表候補強化合宿でも、甲子園で活躍した左投手が江藤とキャッチボールをした際に「えぐっ!」と口々に悲鳴を上げた。
本人が「ボールを潰すイメージで投げている」と語る好球質のストレートを甲子園でも披露できれば、ドラフト上位候補に浮上するかもしれない。
江藤は長野県出身だが、「野球に打ち込みたいから」という理由で未来富山に進学した。午前中はプリントなどの課題をこなし、午後から練習に取り組む。賛否分かれるスタイルだろうが、未来富山の躍進によって富山県の高校野球のレベルが上がるきっかけになるかもしれない。
悲劇を乗り越えて、出場をつかんだのは聖隷クリストファー(静岡)。2021年秋の東海大会で準優勝と好成績を残し、翌春のセンバツ出場が確実視されていた。
ところが、選考の末に落選となり、物議を醸した。2020年夏も静岡の独自大会を制したが、同年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国大会が中止に。こうした悲運の歴史を経て、甲子園への重い扉をこじ開けた。
高部 陸(聖隷クリストファー/静岡) 強烈なバックスピンがかかった快速球は一見の価値あり
大黒柱は2年生左腕の高部 陸だ。強烈なバックスピンがかかり、捕手のミットを突き上げる快速球は一見の価値あり。その投球スタイルは前田悠伍(ソフトバンク)を彷彿とさせる。マスクも甘く、甲子園でも実力を発揮できれば、一躍スター選手になるだろう。
悲願成就という意味では、綾羽(滋賀)の名前も挙げないわけにはいかない。滋賀県内では名の通ったチームだが、春夏通じて甲子園には縁がなかった。
今回で夏の県予選決勝に進出すること4回目。準決勝で近江、決勝で滋賀学園と県内のトップ校を連破しての甲子園出場は価値がある。県内の勢力図が書き換えられる可能性は十分だ。
激戦区の埼玉からは叡明、愛知からは豊橋中央が初出場を決めた。
今年の埼玉は甲子園常連の浦和学院、花咲徳栄が早々に敗退する波乱の展開だった。ベスト8に進出した学校のうち、7校が夏の甲子園未出場というフレッシュな顔ぶれ。プロ注目選手を擁する山村学園、昌平と相次いで撃破した叡明が初出場を決めた。埼玉から夏の甲子園初出場校が生まれたのは、記念大会を除けば24年ぶりだ。
2008年に街開きをしたニュータウン・越谷レイクタウンに校舎があり、高校女子野球部マンガ『球詠』(芳文社)のモデル校でもある。
豊橋中央は〝私学四強〟の一角を占める愛工大名電、東邦を相次いで破っての快挙だった。愛知県は名古屋市など西側に強豪校が集中しており、豊橋市からの甲子園出場は実に74年ぶり。
エースの高橋大喜地と捕手の松井蓮太朗は小学生時代からバッテリーを組み、愛知豊橋ボーイズでは横浜の主将・阿部葉太とチームメイトだった。今や全国区のスターとなった阿部と甲子園での対決があるか注目だ。
■帰ってきたあのチーム久しぶりに甲子園に帰ってきたチームも話題性がある。
開星(島根)は8年ぶりの甲子園出場だが、指揮する野々村直通監督は14年ぶりの甲子園になる。かつてはその風貌から〝やくざ監督〟と呼ばれたこともあった個性派監督。
2010年春のセンバツでは21世紀枠で出場した学校に敗れた際、「末代までの恥」「死にたい。腹を切りたい」と発言して、大問題になった(ちなみに余談だが、後年に脱腸の手術を受け、期せずして腹を切ったことはあまり知られていない)。
2012年春に監督勇退後は画家や教育評論家として精力的に活動していたが、開星の不祥事や低迷を受けて2020年に電撃復帰。現在は松江市のギャラリーで客の求めに応じて似顔絵を描きつつ、選手の指導に当たっている。今夏の島根大会決勝では、松江南を26-2という歴史的スコアで破って、甲子園行きをド派手に決めた。
大阪大会決勝で大阪桐蔭を破る大金星を挙げた東大阪大柏原は14年ぶり2回目の甲子園出場になる。点を取られても取り返すことに由来する、〝かみつき打線〟というユニークなネーミングが印象的。同校OBのタレント・間 寛平が「〝かみつき打線〟ってネーミングもええ」と祝福コメントしたことで、急速に世間にも浸透しつつある。
なお、土井健大監督は元オリックスの捕手で、履正社に在学した高校時代は〝浪速のミニラ〟の異名を取った。1学年上に〝浪速のゴジラ〟こと岡田貴弘(T-岡田・元オリックス)がいたためだが、風変わりなネーミングに縁があるのかもしれない。
最長ブランクは35年ぶり2回目の出場となった青藍泰斗(栃木)。決勝で栃木の盟主・作新学院を4-3と破って甲子園行きを決めた。前回出場時の学校名は「葛生」。青藍泰斗としては初めての甲子園になる。
青藍泰斗の応援席には、いつもヒョウ柄の布をまとう〝葛生原人〟と呼ばれる中年男性がいる。約30年にわたって原人スタイルで応援を続けており、葛生原人にとっても初の甲子園になる。アルプススタンドにも原人が出現するのか、今から注目だ。甲子園は選手や監督だけでなく、見守る人間にとっても夢の舞台なのだ。
取材・文/菊地高弘 写真/時事通信社 アフロ
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