〝♪有楽町で買いましょう〟 JR有楽町エキチカに新しい商業空間「ルミネストリート」誕生【コラム】

高架の鉄道線路を境界線に西側はビジネス街、東側は老舗の多い商業ゾーンという二つの顔を持つ東京都心駅、それがJR有楽町駅です。駅近隣スポットを検索すると、東京交通会館、日比谷公園、東京国際フォーラムなどがヒットします。銀座も徒歩圏です。
そんな有楽町駅に2025年6月25日、新しいエキチカ(駅チカ)商業空間が誕生しました。「LUMINE STREET(ルミネストリート)」。ネーミング通り、JR東日本グループの駅ビル運営会社・ルミネが駅南側の細長い高架下を再開発しました。
テニスコートほぼ3つ分のスペース(約634平方メートル)にテナント8店舗。規模は大きくありませんが、隣接地にはかつてファッション発信地だった有楽町西武を引き継いだ大型ファッション店「ルミネ有楽町」があって、〝駅とルミネ有楽町をつなぐストリート〟がルミネストリートです。
本コラムは新しいショッピングゾーンの紹介を、有楽町の新幹線フォトスポットなど〝鉄分トッピング〟でお届けします。
銀座に一番近い改札口
JR有楽町駅には3か所の改札口があります。北側(東京駅寄り)から京橋口、中央口、銀座(日比谷)口。
銀座口は東側が銀座口、西側が日比谷口で、東西両側に出られます。銀座口は名称そのまま、銀座に近いのですが、目の前に東京国際フォーラムがある京橋口、同じく東京交通会館の中央口に比べると少々地味な存在かもしれません。
ルミネストリートがお目見えしたのは銀座口の南側。東海道新幹線、東海道線、京浜東北線、山手線(駅の所属は東海道線です)の鉄道4線の高架下です。

キャッチフレーズは「おいしい寄り道」
開業前日、6月24日の内覧会でのルミネの説明によると、有楽町では2010年末に閉店した有楽町西武の撤退後に、ルミネ有楽町が2011年10月オープンしたことで、一定の事業基盤ができました。
ルミネストリートの商業スペース、これまで屋根がなく十分な商環境といえませんでしたが、JR東日本首都圏本部とルミネは約1年をかけて屋内型ショッピングゾーンを整備。スペースも従来の約1.3倍に拡張して、「おいしい寄り道」がキャッチフレーズの商業施設を誕生させました。
有楽町駅利用客は大きく2タイプに分かれます。一つは駅近隣のオフィスで働くビジネスマン・ウーマン。もう一つはルミネ有楽町や銀座での買い物客、劇場などの観劇客。ルミネストリートは双方がターゲット。日常性と特別感の両方を満たす商業ゾーンに仕立てました。
改札外のルミネストリートはエキチカを名乗りますが、実際は銀座口改札に隣接。話題豊富なエキナカショップと変わりません。
まちの名は「織田有楽斎」から
ショップ紹介の前に、有楽町駅のミニヒストリー。汽笛一声で開業した新橋駅は、客貨分離して旅客線を東京駅に延伸。有楽町駅は1910年6月に開業しました。東京駅開業は1914年12月で、有楽町駅は4年先行していました。
有楽町の地名は江戸初期の大名・織田有楽斎の邸宅からというのはよく知られた話。駅開業時、東側は江戸城の外堀、西側は日比谷の原で、閑散とした寂しい駅でした。
その後周辺開発が進み、東京宝塚劇場や映画館の有楽座などが相次いで開業。朝日新聞、読売新聞も本社を構え、駅やまちはにぎわいを増しました。
戦後は近隣の数寄屋橋が「君の名は」(1952年の名作ラジオドラマ。もちろん2016年の大ヒットアニメとは同名別作品です)で、今風にいえば聖地巡礼のメッカになりました。
1957年にはフランク永井さん歌う「有楽町で逢いましょう」が大ヒット。「あなたと私の合言葉『有楽町で逢いましょう』」のフレーズは、駅名を全国区に押し上げました。
新幹線が目の前をいく
有楽町の鉄道スポット。知られるのは新幹線が目の前を走る東京交通会館3階屋上庭園「有楽町コリーヌ」。入場自由。最高時速285キロの新幹線も、ここは東京駅を発車したばかりです。

JR東海は2025年6月、N700S増備を発表しましたが、有楽町コリーヌでウォッチングした限りでは、まだまだ主力はN700Aの印象を受けました。
さらに駅から一足伸ばすと、模型鉄のスポットに到着します。
1カ所は銀座天賞堂。本業は宝飾・時計店ですが、もう一つの顔が名門鉄道模型メーカー。天賞堂のSLやELは大人のファンを満足させます。
続く模型鉄スポットは、駅西側の有楽町電気ビル地下1階のカツミ有楽町店。現在、日本の鉄道模型の中心は線路幅9ミリのNゲージですが、天賞堂、カツミはともに大型のHOゲージが主力。精巧な模型は見るだけでも目の保養になります。
サーバーから注がれるコーヒー
ラストはルミネストリートのショップ3選。日本生まれのドーナツ専門店「ジャックインザドーナツ」は、世界のスイーツをイメージしたドーナツを取りそろえます。リーズナブルな価格帯も売りです。
「アコメヤトウキョウ」は、店名の「ア」を「オ」に変えると何の店かすぐ分かります。お米とお供(おかず)のセレクトショップで、「令和の米騒動」とはもちろん無関係。店内に精米機があって、購入した玄米を精米してくれます。

オーストラリア発のコーヒーショップが「シングルオー」。コップを受け取ってレバーを押せば10秒でおいしいコーヒーが飲めます。発想は……もちろんビアサーバーです。

一つネタばらしすれば、「ジャックインザドーナツ」はJR立川駅エキナカの「エキュート立川」、アコメヤはルミネの駅ビル「新宿NEWoMan(ニューマン)」の人気店。ルミネは、駅ビルやエキナカの四番バッターをトレード(クローン?)で迎え入れたというわけです。
記事:上里夏生
記事提供元:鉄道チャンネル
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