「カーテンコールの灯」監督コンビのメッセージ動画とインタビュー公開
「セイント・フランシス」のケリー・オサリヴァン(主演・脚本)とアレックス・トンプソン(監督)が共同でメガホンを執り、バラバラになりかけた親子3人が希望を探し求める姿を『ロミオとジュリエット』の物語に重ねて描いた「カーテンコールの灯」が、6月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で公開される。監督コンビのメッセージ動画とインタビューが到着した。
──お二人の作品は、深刻な主題を軽妙に描く点が特徴的です。本作にも共通する『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケネス・ロナーガンは「ユーモアとドラマは不可分」と語っていましたが、物語におけるユーモアをどのように考えていますか?
オサリヴァン ケネスは私のヒーローです。彼のコメディとドラマの織り交ぜ方は、私の人生観に最も合っていますね。人生は劇的な日と喜劇的な日にきっちり二分されるわけではないでしょう?深刻な瞬間にこそ、馬鹿げた出来事が起こったりするものです。ただ憂鬱で観客を罰するだけの映画は、観ていて辛く、感情が離れてしまう。笑いは気持ちをほぐし、人と人とのつながりを強く感じさせる力がある。心を開いて登場人物たちと一緒に笑ってつながりを感じれば、一緒に泣くことだってできるんです。
──トンプソンさんは、ケリーさんの脚本をどのように感じられますか?
トンプソン ケリーの脚本はとても大胆だと感じます。登場人物が本当の感情を抱くような状況に晒すことを恐れていません。本作では、ダンを今にも爆発しそうな状況に置き、多くを暗示させながら、彼が何を経験しているかを見せています。素晴らしい場面を生み出すには素晴らしい物語が不可欠で、どちらか一方だけでは成り立たない。彼女の脚本に携われるのは本当に幸福です。
──前作『セイント・フランシス』では中絶や生理など「恥」とされてきたことを軽妙に扱いました。本作のダンは感情を表に出すことを恥じています。誰にもジャッジされない空間で「恥」の受容を描くことに関心がありますか?
オサリヴァン 『セイント・フランシス』では、恥を物語に自然に織り込むよう心がけました。私にとって生涯の課題は、問題を自分ひとりで抱え込むという社会化と戦うことです。幸せであるべき、強くあるべき、すべてを管理すべき、そういった考えは人を制限し、孤立させてしまう。大丈夫なフリをしていると、自分の状況を分かち合うことができなくなります。誰もが弱さを抱えていますが、それを開示することで、自分が経験していることを共有し、他の人と結びつくことができる。自分の問題をさらけ出すことはとても恥ずかしいことですが、人々とのつながりを見つけるには、気まずさや恥ずかしさにも価値があるのです。私は、最もありのままの、傷つきやすい自分自身でいられることに強い関心を持っています。
──本作の主人公ダンにとって、演劇は、伝統的な男らしさによって抑制されてきた感情を曝け出せる機会となります。有害な男らしさを解体することにも意識がありましたか?
オサリヴァン 有害な男らしさは、誰にとっても悪影響があります。悲しみなど人間らしい感情が抑制されてしまうからです。おどけたり、踊ったり、涙を流したっていい。男性はストイックで悲しんではいけないという圧力がなく、別の生き方があることを説教臭くなく示したかったのです。演劇の世界は、誰もが感情を表現でき、愚か者に見られることを厭わない素晴らしい場所。ダンにとっては、そのような生き方も価値があると学ぶ場になっているのです。
──同じクルーと協働を重ねていますが、チームビルディングが果たす役割をどのように感じますか?
トンプソン それによって簡潔さと親密さが生まれ、最終的には小さな場面にも影響を与えると思います。気にかけている人たちに囲まれると、撮影過程がより好きになり、より多くの実験にもつながる。過去に協力した作品の話ができ、より深い信頼関係が生まれます。人間関係が発展していくのが好きで、ケリーと私は、スタッフや俳優たちと演劇特有のアンサンブル感覚を育むことを大切にしています。小学校の頃、何を勉強したかではなく、友だちと悪ふざけをしたり、馬鹿げた冒険したりするのが待ち遠しかった。私が追い求めているのはそれと同じ経験なのだと思います。
──前作のインタビューでオサリヴァンさんは「信仰よりも救いや希望を与えてくれるのは身近な人たち」と答えていました。まさに、本作においてもダンたちを癒すのは周囲の人々ですね。
オサリヴァン その通りです。人々が宗教の代わりになると思います。私にとって、他の人が宗教的な経験と呼ぶようなコミュニティとのつながりを最も強く感じたのは、演劇や映画を一緒に作る時でした。個を超えて大きな目標のために働くことで生まれるつながりが大好きです。本作を書き始めたのはパンデミックの真っ只中で、誰もが孤独で、自分のコミュニティから切り離されていた時でした。この脚本を書くことは、人々が一緒に協力し合う世界を再び想像することだったのです。
(※作品パンフレットにはインタビュー全文を掲載)
Story
郊外に暮らす建設作業員のダンは、家族に起きた悲劇から立ち直れず、仲が良かった妻や思春期の娘とすれ違う日々を送っていた。そうした中、見知らぬ女性に声をかけられ、アマチュア劇団の『ロミオとジュリエット』に参加することに。
芝居経験がなく乗り気でなかったダンだが、個性豊かな団員たちと過ごす中で居場所を見つけていく。そしてロミオ役に大抜擢されるが、自身の辛い経験が重なって次第に演じることが困難に。やがて家族や仲間の思いが詰まった舞台が幕を開ける──。
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配給:AMGエンタテインメント
記事提供元:キネマ旬報WEB
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