【刀削麺まぜそば】豊富な具材のせ放題! 池袋中華街の刀削麺ランチの満足感が想像を超えていた:パリッコ『今週のハマりメシ』第188回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
夏の気配が近づきだすと食べたくなるもののひとつに、冷やし刀削麺がある。
残念ながら閉店してしまったが、以前地元の練馬区石神井公園に「長安ぴかいち」という西安料理の名店があり、そこの刀削麺が絶品で、特に夏季に登場する冷たいなすの刀削麺が大好きだった。西川口に本店があるということは知っていたので、そのうち食べに行きたいなと思っていたものの、今調べてみるとそちらも閉店してしまっているようだ。あの味はもう食べられないのか......と、腰の重い自分を反省するばかり。
ふとそんなことを思い出したのは、池袋駅北側の中華街エリアを、ランチができる店を探しながら歩いていたから。
「刀削麺倶楽部」
未訪の店がいくらでもあって楽しい街並みのなかに、ずばり「刀削麺倶楽部」という店を見つけた。店頭のメニューを見てみると、お、「涼担担面(冷しタンタン麺)」がある。まさに体が求めていた料理。しかも、通常だと税込1188円なのが、ランチタイムの今は980円らしい。これしかないな。
刀削麺専門店
ところが店に入ると、意思の弱い僕の気持ちはいきなりぐらついた。テーブル上のメニュー表には、麺類だけでなく本格的な料理も豊富に揃っているのだ。聞き慣れない「ズーランヤンルー」ってどういうものだろうと調べてみたら、ラム肉のクミン炒め的な料理らしい。いかにも西安料理らしくて魅力的だ。
夜に来てあれこれ頼むのも楽しそう
が、そんな僕の視界にさっきから入っていて気になりすぎるのが、調理場の近くにあるビュッフェ的エリア。どうやら、刀削麺メニューのなかのひとつ、まぜそばを頼むと、そこに好きなだけのせて、自分だけのオリジナルを作っていいらしい。冷たい麺が食べたかったはずなのに、もはやそれしか目に入らなくなってしまった。
というわけで、「混ぜそば」(980円)を普通盛り(ちなみに大盛りも無料)、辛さ普通で注文。それから、トッピングでありながらつまみにもなりそうな「醤油煮玉子」(88円)と、こんな日にぴったりのランチドリンク「レモンサワー」(350円)も。
「レモンサワー」
よく晴れた池袋の街並みを眺めながら飲む昼下がりのレモンサワー。言わずもがな最高。ひと口目をぐびっとやったところで、早々に麺もやってきた。
「混ぜそば」と「醤油煮玉子」
この上に自分でトッピングしてゆくスタイルゆえ、究極にシンプルなひと皿。どんぶりのなかは、ゆでたての麺と煮玉子のみだ。さて、具材をとりにいってみよう。
フリーおかずエリア
大きなフタを開けるとこれが想像以上。4つの保温容器に魅力的な料理たちがたっぷり用意されている。トマトと玉子炒め、麻婆豆腐、豚肉とザーサイ炒め、豚肉とピーマン炒め、だろうか。まぜそばの具の域を超えて、ひとつひとつが立派な料理だ。さらにその横には漬けものが3種類。
漬けものもうまそう
当然のことながら、よくばりな僕は7+3のすべてを味わってみたい。結果、丼上がものすごいことになってしまった。もちろんさらに具材をマシマシにすることだってできるし、具材の追加が禁止とも書かれておらず、ただ好きなだけ食べていいとだけ伝えられていることを考えると、これで1000円しないのは驚異的。想像をはるかに超えてお得なランチだ。
全種盛り刀削麺
甘いトマトととろとろの玉子、本格的なしびれ感のある麻婆豆腐、豚とザーサイの旨味の相乗効果がすごい炒めもの、ぱっと見青椒肉絲っぽいけど、大切りのピーマンの食べごたえが嬉しい炒めもの、どこを食べても味が違っておもしろいぞ、この料理。
さらに驚くべきことに、その下には刀削麺まで入っているのだ。バカなので、自分で見えなくした時点で忘れていた。
刀削麺との再会
独特のぴろぴろ感と、ちょっと武蔵野うどんっぽい強めの歯ごたえと、それでいてもちもちした食感と、きちんと香る小麦の味。やっぱり刀削麺ってうまいな。
4つの料理が少しずつ混ざり合うことでどんどん味が変わっていくし、そこに卓上の自家製ラー油や漬けものでアクセントを加えていくのも楽しい。特に良かったのが黒酢で、酸味とまろやかさがものすごくこの麺と合う。あぁ、なんて充実感のある一杯なんだ。
ラストスパート
かなり辛めなキャベツ漬けをこれまた気に入り、最後に小皿にもうひと盛りだけもらってきて、麺とよく混ぜる。キャベツのしゃきしゃきと麺の独特食感のハーモニーを堪能しつつ食べきって、大満足でごちそうさまでした。
これだから池袋の中華街はおもしろい。
取材・文・撮影/パリッコ
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。