打率、打点、ホームランでトップ争い中! 阪神3番・森下、4番・佐藤輝はなんでこんなに調子がええんや!?
打率トップ争いに絡む、3番・森下(左)とホームラン、打点でトップの4番・佐藤輝(右)
セ・リーグ打率トップ争いの森下。打点、ホームランでトップの佐藤輝。阪神の3番、4番はなぜ今年こんなに好調なのか? 虎番記者にその理由を分析してもらった!
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■サトテル今年こそ(も?)頼むで!好調の阪神を支えているのが3番・森下翔太、4番・佐藤輝明のふたり。森下は5月に4試合連続ホームランを放つなどセ・リーグの打率トップ争いに絡み、佐藤は打点、ホームランでセ・リーグ1位になっている(5月20日現在)。
もともと注目を集めていたふたりだが、ここまで覚醒した理由はなんなのか!?
長年、全国紙で阪神を追いかける担当記者に話を聞いた。まずは、佐藤から。
「よく言われるのがバッティングの変化で、例えば、フルスイングしていたのをミート重視の軽打に。センターから左方向への打球を意識している、などの話もありますが、それが結実しているのは、佐藤本人の精神的な変化が一番の理由だと思います。それは昨年の契約更改のときから始まっていました」
という〝鍵〟の契約更改のエピソードを続けてくれた。
「まず『今年も最初に甲子園のラッキーゾーンを復活させてくださいと直訴しました(笑)』と言って、集まった記者を笑わせていました。毎年恒例で、まあ佐藤の契約更改会見のつかみみたいなもんです。
そんな和やかなやりとりが続く中、ある記者がメジャー挑戦の話題を振ると、それまで和やかだった表情が一変。急に真剣な顔に変わって『球団にはメジャーに挑戦したいです。とハッキリ伝えました』と。
その後、メジャーの話を続けると本人のテンションもどんどん上がっていって『このコ(佐藤)は心底メジャーに行きたいと思ってるんやな』というのが伝わってきました」
以来、態度も目に見えて変わってきたという。
「自分の気持ちを球団に伝えることで本人も覚悟ができたというか、退路を断って本気になれたというか。昨年までとは取り組む姿勢が変わっています。例えば、これまで練習や移動などの時間に最後に来るのが佐藤で、時に遅刻することもあったんですが、そういうことが一切なくなりました」
また、今シーズン前にメジャーと練習試合ができたことも大きかったようだ。
「とにかく試合前練習から、メジャーの選手の動きを凝視していました。佐藤はメジャーの選手のようにあまり大きくステップをしないバッティングフォームに近づけようとしていたんですが、バッティング練習を直に見て、いろいろ参考になったはずです」
そして、あの日本人選手の影響も。
「大谷翔平を参考にしているのは明らかです。キャンプでクリケットバットを使ったり、バッティングフォームも大谷ほどノーステップではないんですが、よりステップを小さくしたフォームに近づけています。
結果、大谷と同じように大きな打球の飛ぶ方向がセンターより左になってきているんだと思います。とにかく、腹をくくって自分をその目標に向かって追い込む姿勢が見られます」
さらに、監督の交代も大きかったという。
「岡田(彰布)前監督は、えこひいきととらえられかねないという理由で表立って選手と直接接触することは避けていました。
対して、今季から指揮を執る藤川(球児)監督は対話重視。この変化は、佐藤はもちろん森下にも好影響となったようです。佐藤は雑誌のインタビューで『叩かれて伸びるタイプなんているんですかね』と語っているほどです。
両監督のどちらがいい悪いという話ではなく、佐藤には今の対話派と言われている藤川監督のほうが合っていると言えます。まあ佐藤も森下も現代っ子ですから。昭和の薫りのする岡田監督とは感覚的に合わないところがあったのかもしれませんね」
監督の鼓舞も佐藤に合っているようで、こんな話も。
「藤川監督が就任して間もなく、佐藤と中野拓夢のふたりに『背中で見せてチームを引っ張ってくれ』とリーダーとしての自覚を促すような話をしています。この手のげきに佐藤は敏感に反応するコなんで、ランニングで先頭の組を走るなどやる気を前面に出していました。監督の言葉に燃えたのは間違いないです」
メジャーへの熱い思い、そして新監督との相性が佐藤を好調に導いているようだ。
■自分を曲げない男、森下続いて、森下の好調の要因を記者が続ける。
「森下は流されず、自分を持っている選手。佐藤はあれこれ考えたりする時期があるんですが、森下は悩むにしても確固たる意思があった上で悩んでいるような感じで、そういう意味ではまったくブレない男ですね。
昨シーズン半ば、岡田前監督は不振にあえぐ森下にグラウンドで1時間にわたり直接指導を行ないましたが、ガラリとバッティングフォームを変えることはなかったです。自らの野球人生をかけて自分のバッティングをつくり上げるという大目標があるようです」
こだわりが感じられるこんなエピソードも。
「よく森下は『毎日、同じバッティングフォームでは打たない』と口にしています。いくらその日の試合で打てたとしても、よりレベルを上げるために修正や調整をしていくということ。とにかくいろいろと毎日考えながら野球をやっている選手ですね」
こう聞くと、こだわりが強く頑固なように思えるが、性格はかなり明るいようだ。
「佐藤も森下も明るい今どきのコなんですが、ひと際人懐っこいのが森下。試合前でも相手チームの選手が森下のところにやって来ては、いじったりいじられたりしています。
中央大学の先輩の巨人・阿部(慎之助)監督がインタビューで『ほかのチームから欲しい選手は?』という無理な質問に『阪神の森下。見ていてかわいくて仕方ない』と言っていました。ライバルチームの監督でさえそんな気持ちになってしまうのもよくわかる、愛されキャラの選手です」
しかも、闘志もあり。
「以前、サヨナラヒットを打ったピッチャーに今度は打ち取られて敗戦。そしたら、そのピッチャーが森下を挑発するようなことを言ったようで、それに森下が激怒。今にもマウンドに走っていきそうでした。最近の阪神の選手でこんなに闘争心を持った選手はいないぞと感心しましたね」
メジャーに挑戦すると公言して自らを追い込み、気持ちを変えることで成果が表れてきた佐藤。一方、森下は一貫して野球への姿勢を変えないことで、目指す理想のバッティングに近づいてきた。アプローチの違うふたりが噛み合えば、阪神の優勝も見えてきそうだ。
取材・文/ボールルーム 写真/共同通信社
記事提供元:週プレNEWS
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