現実逃避、「血迷った」夜も乗り越えて 苦労人ルーキー・西澤歩未が史上初の快挙へ
<ニチレイレディス 初日◇20日◇袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コース(千葉県)◇6594ヤード・パー72>
6月なって、ようやく迎えたプロデビュー戦。ルーキーの西澤歩未にとって、「緊張よりも楽しみという気持ちが大きかった」と待ちわびた一日は、今後も忘れられない記念すべき第一歩になりそうだ。
今季開幕時のQTランクは91位。次々と昨年のプロテストに合格した同期たちが、レギュラーツアーの芝を踏むなか、雌伏の時を過ごしてきた。下部のステップ・アップ・ツアーには8試合に出場しているが、直近6試合は予選落ち。「ずっと調子が悪かったので、いつになったらよくなるのか」。同期の活躍よりも、自分のゴルフへの心配が勝る数カ月でもあった。
それがフタを開けると、レギュラーツアーの初日を首位と1打差の5アンダー・2位タイで終えた。「今週はショット、パターでいい修正ができた。楽しんでやっとプレーができる。いいスコアが出てうれしいです」。会場入りした17日(火)に、タッグを組む武田正輝キャディから、ラインの読み方を教えてもらったことで、一気にイメージも湧くように。「曲げたくない意識で手打ちになっていた。よかった時のようなコンパクトなスイングに戻しました」というショット面の気づきも、躍進の背景にある。
明愛・千怜の岩井姉妹らと同学年の2003年2月15日生まれ。プロテストは5回目の受験でようやく合格を果たした。茨城県の明秀学園日立高卒業後は、大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)で研修生として過ごし、プロになるため腕を磨いた。
この間は、他の受験者たちと同様、葛藤と戦う日々でもあった。「3度目のテスト(2022年)に2次予選で落ちた時にはもう(合格は)無理かなと思いました。1カ月近くクラブも握らず、キャディのバイトを入れまくって、気を紛らわせてました」。大洗GCで行われ合格した昨年の最終テストも、初日に「80」を叩き94位タイと出遅れ。その日の夜については「大洗で落ちたらダメだろって思って、ワーホリ(ワーキングホリデー)を探しました。オーストラリアとか。血迷っていましたね」と明かす。いまでは笑って振り返ることができるが、極限状態を乗り越えてつかんだデビュー戦でもある。
プロテスト合格者のデビューからの最短優勝は、20年の「NEC軽井沢72ゴルフ」を制した笹生優花の2試合目。デビュー戦Vとなれば、ツアー史上初のできごとになる。ただ、大きな目標は設定しない。「きょうはあまりスコアを考えずに1個、1個やったらよかった。明日も一つひとつ、きょうみたいに一所懸命できれば」。22歳のプロ生活は「いままでは何カ月かに1回の試合を目指して、それが終わったら、また次へ…という感じでしたけど、毎週試合がある環境は楽しいですね」と充実している。謙虚に着実に、地に足をつけゆっくりと“歩み”を進めていく。(文・間宮輝憲)
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