呂布カルマ「俺のラップが聴きたいのなら、音楽番組に呼んでほしい」
『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では担当編集者からの質問に答えた。
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★今週のひと言「『ラップをやってほしい』と番組で言われたときの心境」
今回は担当編集者からの質問に答えていく。
●番組などで「ラップをやってほしい」と言われたときの心境と対応は?
自分がテレビに呼んでもらえるようになる前から、ラッパーがバラエティなどでフリースタイルをやらされるなどお粗末な扱いを受けているのを同業者として苦々しく見ていた。
ラップというのはあくまで韻を踏みつつリズミカルにしゃべるように歌う歌唱法なのだけれど、フリースタイルであろうが、あくまでも歌詞なのだ。
スタジオで適当にお題を出され、お笑い芸人さんやアイドルに向けて適当に韻を踏みつつうまいことを言う芸ではない。残念ながらテレビでのラップの扱いは今もそんな感じだろう。
俺もテレビに呼ばれ始めた頃、ぶしつけにラップを振られることが何度かあった。ラッパーに得意なラップを振ることで一芸披露させてやろうという意図や、それが失礼だとすら感じていないのもわかるし、憧れていた芸人さんから振られたりしたら頑張って何度かはやってみたが、やはりなんの手応えもなかった。
たとえ「お~スゴイ」となろうが、笑いが生まれようが、俺が思うラップのリアクションはそれじゃない。その後は打ち合わせや台本の段階でフリースタイルを振るのはNGとさせてもらっている。俺のラップが聴きたいのなら、音楽番組に呼んでほしい。
●どんなときに曲が生まれるのでしょうか?
俺の曲作りは必ずトラックありき。先にリリックから書くことはない。20年ラップをやってると、というか10年を経過した時点ぐらいから殊更リリックで言いたいことはなくなった。何せラップのリリックは1曲当たりの情報量が多い。10年もやれば言いたいことは言い尽くしてしまう。
その頃からラップを書くモチベーションは、ストックしてあるトラックを早く曲として完成させなければという使命感のみだ。俺はトラックを自作せず完全に他人に委ねていて、聴いた中から気に入ったものを選びストックさせてもらう。
常に10曲以上はストックがあり、中には3年以上寝かせてしまっているものもある。当然俺にトラックを委ねたアーティストは曲の完成を今か今かと待っているはずだ。今や言いたいことのなくなった俺のペンをせかすのは、物言わぬストックからの無言のプレッシャーだ。
このコラムのように締め切りが目前に迫っている仕事のない夜、家族が寝静まった頃、見たいテレビも読みたい漫画もない夜、ひとしきりシコって雑念を取り除いた後、気分が乗れば作詞作業に入る。
当然ながら以上の条件を満たす夜はまれであり、そんな奇跡みたいな夜に生み出された奇跡みたいな曲によって俺の生活は成り立っている。
●今後の野望はなんですか?
ラッパーのくせにフリースタイルを振られてもロクにやらず、かといって精力的に制作しているのかといえば、客観的にヒマつぶし程度にしか見えない俺のラップ生活ではあるが、それは20年という時を経て今のスタイルになっているのであって、俺にも前のめりにこちらからフリースタイルを仕掛けたり、寝ても覚めてもリリックのことを考え、アルバイト中にレシートの裏にびっしりメモしたりしていた時期も当然あった。
いつの間にか現在の柳のようなスタイルに落ち着いたが、この先どうなるかわからない。年相応にラップとの距離感も変わってくる。俺が完全に飽きてしまう前に、胸を張って代表曲と呼べる、いわゆるヒット曲を生みたいと10年以上前から宣言している。俺が宣言したからには、遅かれ早かれそれはかなうだろう。
撮影/田中智久
記事提供元:週プレNEWS
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